おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
私たちは何気なく「これ、高品質だね」という言葉を使います。しかし私たちが「高品質」という言葉を使う時、時折「高機能」という言葉と混同して使うことがあります。「高機能」と「高品質」はどう違うのでしょうか?なぜこの言葉の使い分けに気をつけないといけないのでしょうか。
そもそも「品質」とはなにか
当然のように使っている「品質」ですが、実はJISで定義が決められています。品質とは(JIS Q 9000:2015での定義)「対象に本来備わっている特性の集まりが,要求事項を満たす程度」と定義されています。
なかなか難しい言い回しですね。僕なりに簡単に言い換えると的に「お客様が望むものを、どの程度満たしているかの程度」であるといえます。わかりやすいように、ラーメンを例にとって考えてみましょう。ラーメンに対するお客様の望むものといえば、例えば「美味しいラーメンがたべたい」というものがあるでしょう。お客様によっては「ボリュームあるものがいい」とか「小さい子連れなので、キッズメニューがあってほしい」というような要望があるかもしれません。
一方「特性」とは何でしょうか。ラーメンであれば、トッピングやスープ、麺、器、量、スープの温度など色々あるでしょう。特性を広くとると、価格もここに含まれるでしょうし、注文から提供までのスピードも広義の「品質」と言えるかもしれません。これらの特性が、どの程度お客様の要望を満たしているかどうかという具合で、品質が「よい」「悪い」と語られます。
品質の基準はあくまでも「顧客の要求事項」
ここで気をつけなければいけないのは、品質の基準というのはあくまでも顧客の要求事項にある、ということです。お客様の求めているものをどの程度満たしているかということですから、反対に、お客様の求めていないことをどれだけ追求しても、これは「品質」の向上には結びつきません。例えばラーメン屋でマグロの解体ショーをやったとしても、ラーメンを食べに来ているお客様の中でマグロの解体ショーを要求する人はいないでしょうから、これは「品質」の追求にはならないわけですね。
「高機能」とは、個々の特性に備わっているものの働きが優れていること
顧客が求めている以上のことを満たすことも、必ずしも高品質とは言えません。例えば家族連れがショッピングセンターのフードコートで食べるラーメンについて、トッピングには薩摩黒豚のチャーシュー、スープは比内地鶏のガラからとり、国産小麦と玉子から作った手打ち麺で、信楽焼の器に盛り付けられたラーメンを2,000円で提供することも、高品質とは言い切れません。個々の特性は最高の素材や製法を使っているんですけどね。このように、個々の特性に備わっている働きが優れていることは「高機能」とは言えるでしょう。ただし、機能が高いということと、品質が高いということは、必ずしも一致するものではありません。しかし往々にして、こういうケースで私たちは「高品質なラーメンだね」と口に出すことがあります。
スマートフォンなどで例えてみましょう。スマートフォンのカメラの画素数は、現在では一般的には700万~1,200万画素程度ですが、中には2,000万画素のものもあります。この時、2,000万画素のスマホは、一般的なスマホよりも、カメラの画素数の点では「高機能」ですが、これが「高品質」かどうかはわかりません。そのスマートフォンを買いたいと思っている標準的なユーザー層が「他のスマホと同等レベルの写真が撮れればよい」という要望を持っていれば、2,000万画素は「高機能」かもしれませんが、これは「過剰品質」です。一方「スマホの常識を超えるような写真をスマホで撮りたい」というニーズを持ったユーザーならば、2,000万画素は「高機能」かつ「高品質」と言えるかもしれません。まあもっともスマホ写真の出来栄えは、画素数だけでは測れないので(本来備わっている特性の集まりとは言えないので)、これだけで「高品質」と言い切るのも心もとないですけどね。1,200万画素だったとしても、センサーサイズが大きくて写真の出来栄えが良好であり、「いい写真が撮りたい」という顧客の要求を満足できれば、画素数の点では「高機能」とはいえませんが、写真全体でみると(特性の集まりとしてみると)このスマホカメラは「高品質」となるでしょう。
言葉選びには気をつけたい
「高品質」と「高機能」は違うという話をしましたが、こういう言葉選びには気をつけたいところです。実際に「高機能」という意味で「高品質」という言葉を使っているケースは散見されます。
例えばですが、取引先の大企業の品質管理部門の人と話す場合や、コンサルタントが製造業を支援するときなども注意が必要ですね。相手側がQCサークルをやっているような企業だと、こういう定義はしっかりと教育を受けている可能性があります。そういう企業の人と話をするときに、高機能と高品質を混同して使ってしまうと「ああ、この人は基本がわからないんだ」と思われてしまいかねませんからね。
また補助金の申請書を作成するときなども同様の理由で注意が必要ですね。こういう定義を認識している審査員が読むと、「ああ、この人は品質と機能の違いがわかっていないな」というネガティブな感想を持たれてしまう可能性がありますからね。