おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
今年のものづくり補助金結果分析もこれで最終回です。1次公募と2次公募の採択率の違いについて考察をしてみたいと思います。
2次公募が行われた過去6年のデータを比較
ものづくり補助金は過去7年にわたり事業が行われてきましたが、そのうち6年は2次公募が行われました。2次公募が行われなかったのは、H28年度補正だけですね。
2次公募が行われた年の、1次公募と2次公募の採択率の違いを比較してみましょう。
1次申請者数 | 2次申請者数 | 1次採択者数 | 2次採択者数 | 1次採択率 | 2次採択率 | |
H24年度 | 12,045 | 11,926 | 4,904 | 5,612 | 41% | 47% |
H25年度 | 22,415 | 14,502 | 9,613 | 4,818 | 43% | 33% |
H26年度 | 17,128 | 13,350 | 7,253 | 5,881 | 42% | 44% |
H27年度 | 24,011 | 2,618 | 7,729 | 219 | 32% | 8% |
H29年度 | 17,275 | 6,355 | 9,518 | 2,471 | 55% | 39% |
H30年度 | 14,927 | 5,876 | 7,468 | 2,063 | 50% | 35% |
合計 | 107,801 | 54,627 | 46,485 | 21,064 | 43% | 39% |
これだけを見ると、H24年度とH26年度は、2次公募の採択率のほうが高い結果になっていますね。ところが直近3年分(H27年度以降)の結果を見ると、2次公募のほうが採択率は低めです。トータルで見ても、1次採択率が43%であるのに対し、2次採択率は39%です。
これは推測ですが、まだこの補助金施策が始まった当初は、認知度がそれほどでもなかったので、2次公募でもそれなりの採択率になった(1次公募で予算を近年ほどに消化しなかった)けれども、施策としての認知度が高まった昨今では、1次公募での消費される割合が高くなったのかもしれません。もしくは基金形式から予算の単年度主義となり、2次公募での事業実施期間が短くなると事務局の負担も大きくなるので、意図的に1次公募の割合を高めているなどということも可能性としてはゼロではないでしょう(邪推ですが)。
気になる平成27年度補正での2次公募採択率の低さ
気になるのは、平成27年度補正での2次公募採択率の低さです。わずか8%ですね。
この年の2次公募は例外と見たほうがよいでしょう。もともと1次公募の時点で、2次公募は実施する予定がありませんでした。ところが、予算が思いの外余ったからなのかどうかはわかりませんが、ゲリラ的に2次公募が行われました。事業実施期間もかなり短いものでした。企業側も2次公募があることを想定していなかったこと、事業実施期間も短かったこと、そして(おそらく)予算の余り額がそれほどなかったことなどの要因が組み合わさって、このような採択率となったのでしょう。
後にも先にも、一桁台の採択率だったのはこの公募だけですので、これは外れ値とみなしたほうがよいでしょう。
1次公募と2次公募の採択率は、統計的に差があるといえるか?
問題なのは、この1次公募と2次公募の採択率が、総採択率(これまで全ての公募の採択数を全ての申請数で割ったもの)の比べて、誤差の範囲なのかどうなのかということです。これを調べるために、二項分布を用いた検定を行いました。
正直に言って、統計についてはド素人ですので、計算に間違いがあれば、どうぞご指摘ください?
【前提条件】
- 帰無仮説を「2次申請者が採択される確率(2次の採択率)は、総採択数/総申込数に等しい」とする
- これの有意水準が1%(p値が0.01以下)であれば、2次採択率と総採択数/総申込数は有意な差がある(帰無仮説が棄却)とする
- 1次申請者と2次申請者には申請内容のレベルに差がないと仮定
- これまでの公募における総採択数/総申込数は41.3%である。(74,038÷179,086)
- 二項分布の確率は、ExcelのBINOM.DIST関数で求める
これを素に検定を行った結果、次のような結果になりました。(僕の計算が正しければ)
1次採択率 | 2次採択率 | 1次確率(p値) | 2次確率(p値) | |
H24年度 | 41% | 47% | 0.0028 | 0.0000 |
H25年度 | 43% | 33% | 0.0000 | 0.0000 |
H26年度 | 42% | 44% | 0.0002 | 0.0000 |
H27年度 | 32% | 8% | 0.0000 | 0.0000 |
H29年度 | 55% | 39% | 0.0000 | 0.0000 |
H30年度 | 50% | 35% | 0.0000 | 0.0000 |
合計 | 43% | 39% | 0.0000 | 0.0000 |
2次公募の二項分布の確率は、全てが0.01を下回っており、帰無仮説が棄却されました。つまり、2次公募と総採択率は有意な差があるということです。2次公募の採択率が低いのは誤差ではなく、明確な差がある可能性が極めて高いということですね(多分です)。
ところが、1次公募の分布の確率も0.01を下回っており、1次公募も総採択率とは有意な差があるということになります。これはどう解釈すればいいんでしょうかね……。結果だけを見ると「1次公募採択率が総採択率よりも高いのは誤差ではない」という解釈もできそうなので、これをもって1次の採択率と2次の採択率に統計的には差があるといえる、ということでいいんでしょうかね……。
統計についてお詳しい方、どうか僕の拙い分析に対してツッコんでください。そして、分析結果に対する考察をお聞かせください。。。