ものづくり経営革新等支援機関

2020年実施ものづくり補助金(一般型)一次締切採択結果を分析する(①全体的分析)

https://imamura-net.com

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

4月28日に、2020年実施ものづくり補助金(一般型)一次締切の採択結果が発表となりました。今回から制度が大幅にリニューアルされたものづくり補助金ですが、過去の公募との違いがどうだったでしょうか。また、今後の対策として見えることはあるでしょうか。採択結果を分析します。

過去最高の採択率を記録

なんでも採択率がすごく高かったんだって?
そうなんだ。2,287件の申請に対して1,429件の採択で、採択率は62.5%。これは過去8年にわたり17回の公募があったけど、過去最高の採択率だったよ。

ダントツだね!初の60%台突破!もう、もの補助も楽勝補助金の仲間入りなんじゃないの?
楽勝補助金と決めつけるのは総計かな。なんでこういう採択率なのかというのを、ちゃんと数字で押さえておかなきゃね。

公募期間1日あたりの応募数も過去最低レベル

じゃあ、なんでこんな高採択率になったの?
まっさきに言えるのは、申請数が相対的に少なかったということだね。分母となる申請が少なかったので採択率があがったという仮説は、まずまず信憑性がありそうだと言えるよ。
申請数が少ないっていう証拠は?
下記の表を見てよ。応募総数を公募期間日数で割った「公募期間1日あたりの応募数」のデータだけど、過去8年間17回の公募の中で、ワースト2位の少なさだね。

公募期間1日あたりの応募数が109件ですね。ワーストは平成27年度補正での2次公募のようだね(56件/日)。
うん。平成27年度補正の2次公募は例外だと考えていいと思うよ。もともと平成27年度は、1次公募しかしないと公募要領の中で宣言されていたんだ。ところが予算が余ったからか、急きょゲリラ的に2次公募が行われたんだよ。しかも「100件程度しか採択しません」という告知のほか、事業実施期間が採択発表日から72日しかないという異例の短さだったんだ。
そうなんだ。まあ今年の1次締切は事業実施期間も10ヶ月は確保されているし、件数制限もないから、たしかに単純に比較することはできなさそうだね。
これまで17回の公募の平均だと1日あたり263件だし、昨年(平成30年度補正)の1次公募1次締切が1日あたり222件だからね。例年の5分の2程度のペースと言ってもいいと思うね。

なぜ今年は例年の半分以下のペースなのか?

じゃあ疑問なのは、なんで今年は例年の5分の2程度のペースだったの?ということだね。
そうだね。事業実施期間が長くなって使い勝手が向上したにも関わらず低調だった理由には、次のことが考えられるよ。

考えられる低調の理由

  • そもそも2019年以降、景気後退により設備投資を控えるようになってきたため(消費増税の影響。もちろんコロナウイルス感染症の影響も含む)
  • ものづくり補助金が通年公募となったので、早い公募に無理して応募する必要がなくなったため
  • 賃上げ要件が重くのしかかっているため
コロナウイルス感染症の影響は大きいんじゃない?
うーん、どうだろうね。1次締切があった3月下旬は、まだ緊急事態宣言も出ていなかったので、それほどコロナの影響はないんじゃないかな。むしろ2次締切以降のほうが、コロナの影響を色濃く受けていそうだよね。
そっか。じゃあ1次締切の傾向としては、通年公募だから慌てなくていいやと思う人が増えたのと、賃上げ要件が重くのしかかっているというあたりが影響としては強いかな。
そう思うね。もしかしたら1次締切の採択者の中にも、この1ヶ月でコロナの影響を強く受けて、採択されたけど辞退するところもあるだろうね。2次締切以降は、これにさらにコロナの影響が加味されるだろうから、申請の低調に拍車がかかるんじゃないかな。

予算はどの程度消化されたか

今回の1次公募の採択で、どの程度の予算が消化されたんだろうね
良い質問だね。過去の公募のデータを見ると、採択企業1社あたりの予算ってだいたい800万円程度なんだよ(1社あたりの交付額ではない)。ちょっと過去のデータを見てみようか。

じゃあ、1社あたり800万円と仮定すると、今回の1次公募の採択が1,429件だから……
114.3億円だね。
全体の予算っていくらだっけ?
3,600億円だけど、小規模事業者持続化補助金とIT導入補助金も足してこの予算だからね。
昨年度(平成30年度補正)での配分ってどうなんだっけ?
1,100億円のうち、ものづくり補助金が800億円かな。およそ7割強がものづくり補助金と仮定することはできるかもね。
じゃあ、3,600億円の7割がもの補助の予算と仮定すると、総枠が2,520億円ね。そのうち114.3億円が消費したと考えると……
消化率は4.5%程度だね。
たった4.5%なんだ!?
そうだね。まあ1次締切は公募期間が3週間程度しかなかったので、それもあって申請が少ないっていうのもあるだろうけどね。ただ、このペースが続くと、いま明らかになっている5次締切までに予算を消化しきることは難しいかもね。
募集が5次締切以降にも延長となる可能性はある?
このペースでいくとなると、ありうることだろうね。
そういえば補助率がアップになる特別枠があったんじゃない?あれがあると、予算が早く尽きるってことは考えられない?
特別枠って別予算だから、この3,600億円には影響はないはずだね。(令和2年度補正)

今後の公募がどうなるかは、2次締切の結果を見るべき

なるほどね……じゃあ、予算は余る可能性もあるんだね。
可能性はあるとは思うけど、もうちょっとデータがないと断言は難しいね。特に緊急事態宣言を受けた後に申請がどうなったかという傾向を考慮に入れたいので、2次締切の結果を見て判断したいね。
この度の1次締切の分析としては、都道府県別や個人事業主の割合なども明らかにしていきますので、期待してね。
  • B!

最近の人気記事

1

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 国際標準化機構(ISO)は、現行のISO9001:2015(品質マネジメントシステム規格I)を改訂する準備を進めているようです。現在の ...

2

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 2024年2月、ISO(国際標準化機構)は、マネジメントシステム規格に「気候変動への配慮」を盛り込む形で規格の一部を改定しました。今回 ...

3

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 5Sの考え方がISO9001や14001の運用に役立つことがあります。その逆もあって、ISOの仕組みが5S活動に役立つこともあるんです ...