おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
人はしばしば、他人のアドバイスを無視することがあります。ときには、自分の命に関する助言でさえも無視をすることがあります。どうして人は他人の助言を聞かないのでしょうか?心理学的な実験の結果も踏まえながら考察をしてみたいと思います。
理由その1:助言を受け入れることは、低い立場に立たされるような気がするから
ある心理学の研究で被験者に対して、他人に対して影響力を発揮していた場面を思い浮かべるように指示を出しました。そう指示された人たちは、誰か他の人のアドバイスを聞こうという意欲が大幅に減退することがわかったそうです。つまり「自分は強くて誰かの上に立つ人間だ」という意識があると、他人のアドバイスを聞かなくなる、ということですね。
研究者の一人であるFrancesca Ginoは「我々は他人に対しては自分のよい良い印象を与え、知識と能力のある人間であることを示したいという欲求があります。誰かのアドバイスを受けるということは、自分たちが助言者よりも低い立場に立たされるような気になるので、助言を容易に受け入れないのでしょう」と解説しています。
確かにアドバイスというのは一般的には、「目上の人から目下の人へ」というイメージがありますね。アドバイスを受けるというのは、一種の権力関係を明確にするということでもあるのかもしれません。
*Gino, Tost, Larrick (2011)
理由その2:不快な気分だから
他の心理学の研究でわかったことです。被験者を2つのグループにわけての実験です。一つのグループの人々に対しては、実験前に、男性が虐められている映像を見せ、怒りを感じるように促されました。そしてもう一つのグループでは、男性が同僚から予期せぬ贈り物を受け取る映像を見せ、感謝の気持ちを抱くように促されました。感謝の気持ちを抱くように促されたグループの人たちは、他人からのアドバイスを受け入れる可能性が、そうでないグループの人(怒りを感じるように促されたグループ)に比べて3倍も高買ったそうです。
自分が不快な気分のときには他人のアドバイスは受け入れがたいという可能性があるのかもしれません。ただし、他の研究によると、不安を強く感じている人は、たとえそのアドバイスが悪いものであっても、アドバイスに大きく依存してしまうということもわかっているようです。アドバイスを受けるかどうかは、かなり自分の感情に左右されるのかもしれません。
理由その3:助言する人との間に信頼がないから
別の心理学実験によると、協力関係にある人からのアドバイスは受け入れられやすいことがわかっているそうです。協力することはお互いに信頼を育み、それがさらに協力を育みます。それがポジティブな感情を高め、自然と他人の意見を尊重することを促していくのでしょう。
ということは、アドバイスを聞かないのは、その人との信頼関係がないからだということもできるでしょう。協力関係にないといってもいいのかもしれません。
コンサルであるということやなにかの資格を持っているということはアドバイスを受け入れてもらう基盤にはならない
さて、ここからは僕の仕事の現場における実感の話をしたいと思います。僕もコンサルティングの仕事でいろいろな会社に行きますけど、僕が何の考慮もなくアドバイスをしても、基本的には誰も聞いてくれません。僕がコンサルであるということや、国家資格を持っているということは、クライアントの従業員の人にとっては「アドバイスを聞こう」という気持ちにさせるものではないんですよね。
その会社の現場のことに関しては、彼らの知識や経験のほうが僕のよりも優れているんですよ。彼らもそれがわかっているので、わざわざアドバイスを聞いて「低い立場」を受け入れるような真似はしないんですね。忙しいのに、コンサルと称する誰かがズカズカと現場に入ってきて不快なのかもしれませんので、なおさらアドバイスなんて聞きっこありません。
じゃあどうするかというと、アドバイスを聞いてもらうためには信頼関係の構築が必要なんです。アドバイスをビュンビュン投げつけるのではなくて、まずは彼らの話をちゃんと聞く。彼らの問題意識を知る。そして彼らが抱える問題を解決するための協力関係を築くことが必要なんですよね。それをだいたい3ヶ月~半年くらいやるようになって、ようやく彼らは僕のアドバイスを聞いてくれるようになるのです。
まずは信頼関係の構築。それがなければアドバイスは受け入れられない。アドバイスはやたらめったにしない、というのが今の僕の方針です?