おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
事業再構築補助金の審査項目は全部で13あります。一つずつ解説をします。今回は再構築点④について解説します。
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事業再構築補助金審査項目 再構築点④
先端的なデジタル技術の活用、新しいビジネスモデルの構築等を通じて、地域のイノベーションに貢献し得る事業か
この審査項目を読むと、デジタル技術や新しいビジネスモデルの構築を「通じて」と書いています。デジタル技術や新しいビジネスモデルの構築はあくまでも手段であり、目指すべきものは「イノベーション」であると読むのが自然でしょう。
「先端的なデジタル技術の活用」の意味
経済産業省は、デジタル化による企業の変革に力を入れています。いわゆる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」というものを支援しようという取り組みです。2020年5月には「情報処理の促進に関する法律の一部を改正する法律」を施行するなどして、企業のデジタル化を支援する基盤を整えようとしています。経産省が企業のデジタル化に力を入れている背景には、少子高齢化の進展による人手不足への対応、日本の産業競争力の強化(生産性向上)、SDGsの達成やグリーンイノベーションの実現、災害・感染症対策等の課題に対応しないといけないという危機感のようなものを持っているからですね。
ちなみにデジタル化による生産性向上というテーマは、僕が診断士の受験生であったころ(2006年頃)の中小企業白書にも載っていたくらいですから、経産省にとっては長年の宿願といってもいいでしょう。
補助金の審査項目に話を戻すと、こうした「デジタルトランスフォーメーション(DX)」に値するような取り組みを積極的に評価しようという意味なのだと思います。ところでこの「先端的なデジタル技術の活用」というのは、事業再構築補助金審査項目のなかで政策点①の中でも使われているキーワードです。経産省がDXに力を入れていることがここからもわかります。(愚痴ですが、同じキーワードが再構築点と政策点の両方に使われているというのは、審査項目として重複ではないかという気がします。どちらか一つに統一するなどスッキリした審査項目にしてほしいものです)
ここでいう先端的なデジタル技術とは何のことでしょうか。審査項目には明示はされていませんが、AI、5Gといった技術(自動運転、スマートファクトリー、ロボット、遠隔医療、XR、ブレイン・マシン・インターフェース等)や、センシング技術(価値を創出するリアルデータを、高精度かつ自動的に大量取得できる技術。IoTの基盤)、ドローン技術、生体認証技術などがあるのではないかと個人的には考えます。審査項目に書かれているのは「先端的」な技術ですから、普及した技術を用いた取り組み(例えばECサイト構築など)が評価されるかというと微妙ではないかと思います。
「新しいビジネスモデルの構築等を通じて」の意味
狭義としては、この補助金では新しい取り組みの結果として、事業転換や業種転換を果たすことを視野にいれています。したがって「新しいビジネスモデルの構築等」というのは自社にとって事業転換や業種転換に至るような、今までの自社にとって全く異なるビジネスモデル(収益の上げ方)を作り上げることという意味と解釈できます。
もう少し広義に理解をすると、価格競争型のビジネスモデルからの脱却、いわゆる「系列」からの脱却、国際的な競争力を持つ企業(いわゆるGAFA)と対抗できるようなモデル構築というような内容も含んでいるかもしれません。経産省がグローバルで活躍をするスタートアップ企業を支援する取り組みのポータルサイト"J-Startup"には、次のような一文があります。
日本では約1万社のスタートアップが日々新しい挑戦をしています。しかし、グローバルに活躍する企業はまだ一部。世界で戦い、勝てるスタートアップ企業を生み出し革新的な技術やビジネスモデルで世界に新しい価値を提供する。それが経済産業省が推進するスタートアップ企業の育成支援プログラム「J-Startup」です。
こういうことを実現したいので、補助金の審査でも、それに見合った取り組みを評価するという狙いがあるのではないかと思います。(ここまで書いていて思いましたが、この審査項目④の内容は、半分くらいは政策面での審査項目といっても差し支えないのかもしれません)
「地域のイノベーションに貢献し得る事業」の意味
そして最後のフレーズ「地域のイノベーションに貢献し得る事業か」が、この審査項目の本丸です。この審査項目を通しで読むと、デジタル技術や新しいビジネスモデルの構築はあくまでも手段であり、目指すべきものは「イノベーション」であると解釈できるからです。
経産省的にはイノベーションとは「革新」のことであり、①新製品の製造、②新サービスの開発、③新たな製造方法の開発、④新たなサービス提供方法の開発のことを指します(経営革新計画やものづくり補助金で求められている観点です)。事業再構築補助金では、ほとんどの指針類型で①か②が求められていますし、③または④は「業態転換」の必須要件にもなっています。したがって事業再構築補助金も実質的には(経産省的な意味での)経営革新を求めるものといっていいでしょう。主幹部門が中小企業庁の「技術・経営革新課」であることからも、それが伺えます。
ここで気になるのが「地域の」という言葉がついていることです。結論を先に言うと、「地域において、他社ではあまりやっていないような取り組み」が評価をされるのではないかと考えます。例えば神戸では初めてとか、自社の商圏内では初とか、そうしたものが求められているのではないかと想像できます。なおこの「地域」は、「業種」と読み替えてもよいのではないかと当社では考えます。自社が活動をしている業種においては初めての取り組みである。といった具合です。
当社の解釈としては、この審査項目は、ものづくり補助金における革新性と同じものを求めていると考えます。下記の記事を参考に読んでいただければいいのですが、ものづくり補助金における革新性も、自社になく、他社でも一般的ではない取り組みで、『地域の先進事例』や、『業種内での先進事例』にあたるかどうかなど『相対的』な視点から革新性を示すことが求められています。
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「ものづくり補助金」審査上最大の論点"革新性"とは何か
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 まもなく平成29年度ものづくり・商業・サービス経営力向上支援事業(ものづくり補助金)の公募が開始されます。ものづくり補助金で採択される ...
つまり俯瞰的に見ると、今までに製造や提供していない新製品・新サービスを開発し、それを新市場に投入し、しかも自社になく、他社でも一般的ではない先進事例に相当するような何かを、この補助金では求めているわけです。相応の内容でなければ評価は難しいと当社では考えます。