ものづくり経営革新等支援機関

コンサルタントに対する批判の裏側にあるものに着目する

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どの会社でもそうですが、コンサルタントが企業に入って何かの活動を始めるとなると、反対する従業員が必ず出ます。「コンサルなんて入れなくても我々はじゅうぶんにやっている」「コンサルなんかに何ができるものか」「俺たちの給料は上がらないのに、外部のコンサルに金を払うとはどういうことだ」という言葉がよく聞かれますかね。

それらの言葉を額面通りに受け取っては、支援の本質を見誤ってしまうと僕は思っています。

僕を会議で批判する総務課長

僕がとてもよく憶えているエピソードをひとつ紹介したいと思います。ある企業で5S活動を始めた当初のことです。どうやって5S活動を進めるのか、幹部の集まる会議で話し合っていた時のことです。その会社の総務課長が突然、私の説明を遮って語気を強めてこう言いました。

「5S活動なんて、うちの会社ではやっても無意味です!」

皆さん、あぜんとした表情をしています。総務課長は僕に対して

「今村さんがどれだけ偉いかどうかは知りませんけどね、あなたの言っていることは全く理解できない!」

とおっしゃいます。

僕は「会議の後に二人で話をしましょうか」と言い、とりあえずその場を収めました。

ところが、二人で話をすると……

会議が終わった後、総務課長と二人で話をしました。すると総務課長はこう言うのです。

「さっきの会議ではあんなことを言いましたけど、今村さんには何の恨みもないんですよ」

総務課長は続けます。

「私だって本当は会社を変えたいと思っています。でもうちの会社は、経営者も口だけです。従業員もいつも愚痴ばかりです。そのような意識が変わらなければ、何をやってもダメです」

と言って、批判の矛先を経営者と従業員に向けました。僕はというと、口を挟まず、ただ黙って総務課長の話を聞きます。批判が一通り終わると、総務課長はこういいます。

「でも、私は5S活動はやりますよ。もともと5Sをやりましょうと言い出したのは私なのですから」

と言い、頑張る決意表明をして晴れやかな顔になって、会議室を後にしました。

その後の総務課長は確かに活動に協力的になりました。ご自身も思い入れをもって活動をした結果、その年度の最後に実施した「5S成果コンテスト」では、総務課が1位を獲得しました。コンテストの準備に、総務課長は2カ月も前から部下と一緒に取り組んでいたのでした。

コンサルを批判しているというよりも、言いやすい人に対して言っているだけ

とても不思議な光景に思えるかもしれませんが、実はよくあることなんです。この総務課長のような人たちは、コンサルタントである僕を批判しているのではないのです。本当は経営者や上司、部下に対して腹に一物を持っているのですが、それを表すと自分の立場が悪くなったり、居心地が悪くなったりします。ですので、言いやすい人――この場合はコンサルタントである僕――を使って、間接的に自分の意見を公に表明しているのです。

僕も最初のころは、こういう言動に戸惑い、言葉で言い返そうとしていました。しかし黙って聞くだけでその人はかなりの確率でこちらの味方になります。その人にとっては、社内に自分の意見を聞いてくれる人がいなくて不満なのですから、外部の人間であっても、自分の意見を聞いてくれる人に信頼を置くようになるのです。

こういう発言からその組織の実態が見えてくる

もっと突っ込んで言うと、このような発言から組織の実態が見えてきます。この総務課長は経営者と部下を批判していましたが、経営者と部下にも言い分はありました(割愛しますが)。はっきりと言えることは、経営者は経営者なりに、総務課長は総務課長なりに、部下は部下なりに、三者とも会社をよくしたいという思いがあるのですが、それがその三者ですれ違っているのです。つまり、自社の課題に対して、層を超えて真摯に話し合う場がない、という組織の実態があります。話し合えない(自分の意見をわかってもらえない)から、言いやすい外部の人間(=コンサルタントである僕)に不満が表出しているんですね。

ですから、課題解決の方向性として見えてくるのは、単なる5S活動ではなく。互いが話し合い、協力せざるを得ない仕組みを作るというところに支援の発想が及ぶわけですね。

誰も批判されるのは好きではありません。しかしこの批判の裏側に何があるのかを見定めなければ、表面的な支援に終始するのではないかと思います。

  • B!

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