おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
プロセスアプローチはISO9001においても非常に重要な考え方です。この考え方はトップマネジメントのリーダーシップのもと、組織に採用し、利用することが求められているくらいのものです。しかしプロアセスアプローチは規格だけを読むと難解ですので、噛み砕いて説明します。
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JISQ9000:2015にみるプロアセスアプローチの定義
プロセスアプローチの正式な定義は、"用語集"でもあるJISQ9000にも書かれています。
活動を、首尾一貫したシステムとして機能する相互に関連するプロセスであると理解し、マネジメントすること
でもなんだかよくわからない説明ですよね。私なりにもうちょっと別の言い方をすると、仕事・業務・作業全体として「不良品を受け入れず、作らず、次工程に送らない」という原則のこと。仕事は適当でも検査を厚くして不良を流出させなければいいやという考えではなく、そもそも不良を作らないように、個々の仕事・業務・作業をしっかりと管理することとでもいいましょうか。
まだちょっとわかりにくいですか?では例を使いながら、もう少し噛み砕いて説明をしたいと思います。
「手打ちうどんづくり」があります。これを例にプロセスアプローチを説明
突然ですけど、私の趣味の一つに「手打ちうどんづくり」があります。これを例にプロセスアプローチを説明しますと、うどんを手打ちで作るというプロセス(つまり業務や作業)は下記の図のような感じでつながっています。
まずは材料を買ってこないといけませんし、道具の準備も必要です。そして水や塩と小麦粉をまぜて、こねて、しばらく寝かして、伸ばして切る、そしてゆでるというプロセスを経て、食べられるうどんになります。端折りましたが、この他にうどんのだしを作るというプロセスもありますし、薬味や具を切る、調理するというプロセスもあるでしょう。もっと詳細にいうと、寝かしている間にだしや薬味、具の用意もできますので、一直線のプロセスではなく、並行作業などもある、入り組んだプロセスであることが一般的だと思います。うどんひとつを作るにしても、こうしたプロセスの順番があり、どれか一つが欠けても、よいうどんはできないわけです。
今度はこのプロセスのうち、「こねる」というプロセスに着目してみましょう。こるねプロセスの前工程は「まぜる」という工程です。まぜるという工程では、水や塩と小麦粉をまぜる作業をするのですが、このプロセスでできあがったものは、ぼそぼそとした小麦粉のダマです。この、前工程(前のプロセス)でできた、ぼそぼそとしたダマを元にして作業をするわけです。このときに、こねるというプロセスから視ると、前工程の成果物であるボソボソしたダマが「インプット」と呼ばれるものになります。このインプットを元にして、こねるという作業をします。
こねる作業にも道具がいります。写真ではボールを使っていますが、まな板かもしれないし、大きなテーブルかもしれません。自分がやるときはなんの道具を使うのかを明確にしないといけませんし、汚れたボールで作業をするとうどんも台無しになってしまうので、その道具の手入れも必要です。こねる人も誰でもいいわけではありません。こねるのには力がいりますから、力がある人じゃないとダメでしょう。私には小学生の娘がいますが、小学生の娘には大変な作業なので、娘がこねるプロセスをやりたいときには、せめて大人の私がサポートしないといけないでしょう。
万全とこねるのもダメです。こねるのにもコツがあり、製粉会社のホームページを見ると、よいこね方のポイントが書かれています。生地に体重をかけながら20~30回押して、生地が平たくなったら、三つ折りにします。折り目の反対側を上にして、さらに押し、平たくなったらまた三つ折りにします。この作業を2、3回繰り返すと、生地がかなり固くなり、表面のひび割れが減ってなめらかになるそうです。そういう手順も守らないといけません。
そしてどのくらいまでやればOKかという、評価の基準もはっきりさせないといけませんね。製粉会社のホームページに書いてあった、こねる回数も指標になるでしょうし、ひび割れがなくなっているかどうか、表面がなめらかになっているかどうかという仕上がりの状態も指標になるでしょう。こうした評価の指標をクリアしたものは、丸くまとまった生地となり、次のプロセスである「ねかす」という工程に送られるわけです。この時、こねるというプロセスから見ると、丸くまとまった生地というプロセスの成果物は、「アウトプット」と呼ばれるものになります。
「こねる」というプロセスについてのみ説明をしましたが、こういった一つひとつの作業をしっかりやって、よく仕上がったものを次のプロセスに送るという仕事のやり方を、一連のプロセス全体でやらないといけないんですね。それがプロセスアプローチと呼ばれるものです。反対にいうと、それぞれのプロセスでの仕事は適当にやって、最後の検査だけしっかりやって、ダメな仕上がりのものは捨てるというようなうやり方はダメですよ、ということでもあります。ダメな仕上がりのものは、作業をやり直す必要があるでしょうし、場合によっては廃棄しないといけないかもしれません。大きなムダになりますよね。いくら検査でできの悪いものを弾いたとしても、仕事のやり方としては合理的だとは言えません。そういうことはやっちゃダメだよ、というのが、プロセスアプローチであるとも言えます。
製造業ではよく知られた言葉として「品質は工程で作り込む」という言葉がありますが、そういう仕事をしてくださいね、ということですね。
実務におけるプロセスアプローチの採用
では「我社ではちゃんとプロセスアプローチに取り組んでいます」ということを、どう立証すればよいでしょう。これは一つのアイデアであり、これじゃないとダメというわけではないのですが、よく知られたやり方としてはQC工程表を作り、それをもとに教育し、管理するという方法があります。
QC工程表では、工程ごとに誰が、どんな物的資源を使い、どのように品質を管理するのかを一覧ししてわかるようにしています。こういうのがあれば、少なくともプロセスを明確にしているということや、プロセスの順序、相互作用、運用や管理のための基準や方法を定めているということが、客観的にはわかると思います。もちろんこれは文書化しないといけないという要求事項はありませんので、口頭で説明できる場合は口頭でも構わないでしょう。
冒頭にも言いましたが、プロセスアプローチは、トップマネジメントが関与しないといけないことでもあります。箇条5.1では明確に、トップマネジメントがプロセスアプローチの利用を促進することが求められていますので、こうした取組を現場だけ、もしくはどこかの単独のプロセスだけで導入していてもダメですし、QC工程表を作るだけでもダメです。全社的に導入し、教育し、実際に管理されなければならないですし、トップマネジメントがちゃんと「プロセスアプローチについてこういう展開の方法をとっています」と説明ができないとまずいでしょう。