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ISO9001:2015 5.3 役割や責任、権限を割り当てるのはトップの重要なお仕事

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

ISO9001:2015 各箇条解説シリーズ、今日は箇条5.3「組織の役割、責任及び権限」について解説します。なぜ役割や責任、権限というものを明確にしないといけないのか?という話も含んで、規格要求事項を解説したいと思います。

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箇条5.3の位置付け

最初に箇条5.3の位置付けです。箇条4を通じて、品質マネジメントシステムという、ISO9001で定められている管理の仕組みを作りました。この管理の仕組みを円滑にまわしていくために、箇条5.1でトップマネジメントが果たすべき責任を定めなさいと要求しています。そして箇条5.2では品質方針について定めなさいと要求事項が書かれています。今日のテーマである箇条5.3では、トップマネジメントが、社内の様々な役割に対して、責任と権限を割り当てて、社内に伝達し、理解されるように努めなさいと言っています。社内で誰が何をするかは、トップがちゃんと決めてよね、と言っているわけですね。

「役割」と「責任」「権限」とはなにか

そもそも「役割」と「責任」「権限」ってなんでしょうか。これはISO9001や用語集であるJISQ9000にも定義がありません。この3つはどういう意味の違いがあるんでしょうか。規格はもともと英語が原文なので、英単語におけるRoles(役割), Responsibilities(責任), Authorities(権限)の辞書的な意味を見てみましょう。

私なりに簡単に訳すと、役割とは「組織の中で期待されている機能、立場のこと」、責任とは「やるべきこと」、権限とは「他人に指示をしたり、何かを実行したりする権利のこと」といえましょう。

つまり、「役割」と「責任」「権限」を割り当てるということは、「この仕事や作業については、誰が、どんなことをやることになっていて、その仕事や作業をやるとげるために何をやってもよいのか」をはっきりさせるということですね。トップ一人では全ての仕事をきっちりやり遂げることはできません。かと言って、「あなたはこれをやってください」とか「あなたはこれの担当ですよ」ということをちゃんと言ってあげないと、人は動かないんですよ。何も言わずに勝手に仕事をやってくれる人というのは組織の中ではほぼいません。多くの人は「勝手にやったら怒られるんじゃないか」と思い、ブレーキを踏んでしまいますから、役割や責任、権限をトップがはっきりさせないと、ちゃんと人は動いてくれないんですよね。

「役割」と「責任」「権限」の具体例

例を使って説明をしましょう。ここにうどんを作るという一連のプロセスがあったとします。

うどんを作るには、材料の調達という工程から始まり、いろんな工程を経て、食べられるうどんが出来上がります。そのうち、こねるという工程に注目をしますと、前工程でできあがったぼそぼそとした小麦粉のダマを、ボールなどのなかでコネコネして、そして丸くまとまった生地を作って、次の工程に渡してあげるという仕事をやっています。この誰がこの仕事(つまり役割)をやるのか、その人は何をしなければならないのか(これが責任)、そしてこれをするためにはどんな力や権利があるのか(つまり権限)をはっきりさせるということですね。

例えばこの工程は、山田さんにやってもらおうと決めたら、山田さんの役割は「こねる工程のリーダー」という役割になります。山田さんはさらに、決められた物的資源(ボールなど)を使い、こねるだけの力を持った人に作業をさせ、作業の手順を守らせて、そしてうまくできたかどうかの評価をしければなりません。これが山田さんの責任です。山田さんは、この責任を果たすためには、ここからここまでは上司にお伺いを立てることなく自分の裁量でできるよ、その裁量の範囲内で山田さんの部下に指示もできるよ、という山田さんが自分で決めて動ける範囲が、山田さんの「権限」ですね。こうした役割・責任・権限をトップが割当て、ちゃんと社内、山田さんなどにに周知し、実行させなさいと、箇条5.3では言っているわけですね。

箇条5.3の規格要求事項

では箇条5.3の規格要求事項を見ていきましょう。箇条5.3では、トップはa)からe)までの事項について、責任と権限を割り当てなさいと言っています。

 トップマネジメントは、関連する役割に対して、責任及び権限が割り当てられ、組織内に伝達され、理解されることを確実にしなければならない。

トップマネジメントは、次の事項に対して、責任及び権限を割り当てなければならない。

a)品質マネジメントシステムが、この規格の要求事項に適合することを確実にする。
b)プロセスが、意図したアウトプットを生み出すことを確実にする。
c)品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び改善(10.1参照)の機会を特にトップマネジメントに報告する。
d)組織全体にわたって、顧客重視を促進することを確実にする。
e)品質マネジメントシステムへの変更を計画し、実施する場合には、品質マネジメントシステムを“完全に整っている状態”(integrity)に維持することを確実にする。

a)は規格が定める要件を満たすということですから、社内の品質に関わる全ての仕事や業務において、ISO9001が求めていることが守られるように責任と権限を割り当てなさいということです。ちゃんとISO9001について理解をしていて、それを自分の仕事に落とし込める人を各プロセスのリーダーとして選んで仕事をさせるということといってもよいでしょう。

b)は、さきほどのうどんづくりの山田さんの例でいうと、山田さんの「こねる」という工程で、ちゃんとアウトプット、丸くまとまった生地を作り上げられるように責任と権限を割り当てなさいということです(手順書を作ったり見直したりするという責任と権限でしょうかね)。

c)は、うまくいったかどうかをトップに報告すること、うまくいかなければその改善策をトップに報告して、指示をあおぐように責任と権限を割り当てなさいということです。

d)は箇条5.1.2の顧客重視の方針が守られるように責任と権限を割り当てなさいということです。

e)は、この品質マネジメントシステムが、漏れなく抜け落ちなく運用され、適切な状態を維持できるように責任と権限を割り当てなさいということです。

ご覧のように、ちゃんとできる人に役割と責任と権限を与えなさいということですので、これは後に説明をする箇条7.2の「力量」とも関係してくる部分ですね。

実務上での役割、責任、権限の明確化

実務上はどのように役割、責任、権限を明確にして伝達するかというと、職務分掌表や職務分担表のようなものを作り、この部署の人、この階層の人は、こんな仕事をすることになっているよということを明らかにしたものを作るというのが一つの方法でしょう。ISO9001の箇条5.3では文書化の要求はないので、口頭で割当をしても構いませんが、表のようなものがあったほうが、伝えやすく、理解もされやすく、言った言わないのトラブルも無いのではないかという気がします。下記の図は、厚生労働省のホームページに掲載されている職務分掌表のサンプルです。イメージとしてはこういう感じでしょうかね。

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