おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
4月26日、岸田首相は記者会見において、原油価格や物価の高騰に対する経済対策について発表しました。首相が言及した経済対策のうち、中小企業支援について解説をします。
このたびの経済対策における中小企業政策にあてる予算は1兆3,000億円
令和3年度補正予算における中小企業関係が3兆8,594億円であったことを考えると、約4割程度の規模です。
対策の内訳は、石油元売りへの補助金拡充など原油高に1兆5000億円、原材料や食料などの安定供給に5000億円を支出する。中小企業と生活困窮者支援はそれぞれ1兆3000億円で(後略)
首相会見で中小企業支援はどう言及されたか?
YouTubeの首相官邸公式チャンネル「岸田内閣総理大臣記者会見-令和4年4月26日」の22:05ごろから、中小企業支援について言及しています。該当部分を文字起こしします。
第3の柱は中小企業支援です。引き続きエネルギーコスト、原材料費、労務費等の上昇分を適切に価格に転嫁できるように、取引の適正化を進めます。公共調達や補助金を受ける優遇措置を設け、賃上げを推進します。政府系金融機関によるセーフティネット貸付の金利をさらに引き下げるとともに、実質無利子無担保融資を9月末まで延長し、資金繰りに万全をします。また事業再構築補助金に特別枠を創設し、原油価格や物価高騰の中で新規事業に挑戦する企業を後押ししてまいります。
首相会見によると、中小企業支援のポイントは下記の5つのようです。
- エネルギーコスト、原材料費、労務費等の上昇分を適切に価格に転嫁できるように、取引の適正化
- 公共調達や補助金を受ける優遇措置を設け、賃上げを推進します
- 政府系金融機関によるセーフティネット貸付の金利をさらに引き下げる
- 実質無利子無担保融資を9月末まで延長
- 事業再構築補助金に特別枠を創設
取引の適正化
首相のいう「取引適正化」とは具体的にはどういう支援でしょうか。ここからは当社の推測になりますが、令和3年度補正・令和4年度当初中小企業・小規模事業者関係予算などから推察すると、下請Gメン(中小企業庁の取引調査員のこと)などの体制強化や、よろず支援拠点・中小企業支援機関による経営相談体制の強化などを行うのではないかと思います。
予算規模としては、大きくても数十億円程度ではないかと思われます。
公共調達や補助金を受ける優遇措置を設けて賃上げを推進
まず、賃上げを表明した企業を政府調達で優遇するもようです。ただしこれは昨年末の時点で決まっていることですので(詳しくは下記のリンクを参照)、既定路線と言えそうです。
補助金で賃上げを推進するというのも既定路線でしょう。ものづくり補助金では2年前から賃上げが必須となっていますし、2022年度の事業再構築補助金でも大規模賃金引き上げ枠や最低賃金枠といった、賃上げ企業を優遇する措置がすでに設けられています。
今回の経済対策や補正予算が、これらの既定路線にどう関連してくるかはわかりませんが、例えば補助金の予算を増額し、賃上げをする企業の採択数をさらに増やすなどといった措置が考えられるでしょう。
政府系金融機関によるセーフティネット貸付の金利引き下げ
セーフティネット貸付とは、社会的、経済的環境の変化などにより、一時的に業況の悪化をきたしている中小企業に対する融資制度です。政策金融公庫では下記のような事業を行っています。
政策金融公庫のセーフティネット貸付では、すでに下記の取組を行っています。
原油価格上昇をはじめとした原材料・エネルギーコスト増の影響又はウクライナ情勢の変化の影響を受けており、かつ、最近における売上高総利益率又は売上高営業利益率が前期に比し5%以上減少しているものは、特別利率R。
なお4月21日の日本経済新聞によると、今回の経済対策や補正予算によって、特別利率をさらに引き下げるなどの措置が検討されているようです。(有料会員限定記事)
実質無利子無担保融資を9月末まで延長
政府系金融機関による実質無利子・無担保融資は、今年6月末までの予定でしたが、これを9月末まで延長するようです。おそらく下記のような条件になるのではないかと思われます。また、予算の大半をこの資金繰り支援に充てるではないかと思われます。
事業再構築補助金に特別枠を創設
事業再構築補助金に特別枠を創設することについては、4月16日にすでに報じられています。
岸田文雄首相は16日、新型コロナウイルス禍を受けて業態転換に取り組む中小企業を支援する「事業再構築補助金」について、「物価高騰の中で新規の事業に挑戦する企業を後押しする特別の枠をつくる」と述べ、拡充する考えを示した。
視察先の新潟市で記者団に語った。首相は「地方の中小企業、スタートアップを後押しし、地方から全国に成長の勢いをボトムアップで押し上げてもらうよう、政府としても応援したい」と語った。(4月16日 時事通信『事業再構築補助金を拡充 「地方の起業後押し」―岸田首相』より引用)
2022年度補正予算として経済対策を行う方向性です。予算は衆参両院での審議と可決を経て成立することになりますので、特別枠の公募も現在公募中の6次公募で行われる可能性は低いでしょう。どんなに早くとも7次公募以降になるのではないかと思われます。