おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
環境法令解説シリーズ、前回に引き続き、消防法における危険物について話をします。危険物全般の話から、指定数量と倍数の説明を中心いお話します。
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消防法における危険物とはなにか
消防法では、火災発生の危険性が大きいものや、火災拡大の危険性が大きいもの、消火の困難性が高いものなどが、危険物として定められています。危険物は固体か液体なんですが、その性質に応じて、6つのグループにわけられています。
この中で最も裾野が広いというか、いろんな業界で使われているのは、第4類と呼ばれるものでしょう。第4類は引火性液体なんですが、具体的な物質としてはガソリンとか灯油とか、有機溶剤とかですね。製造業だけでなく、運送業やサービス業などでもよく使われる危険物、それが第4類ですね。
危険物第4類 引火性液体について
この第4類をさらに詳しく見ていきたいと思いますが、第4類はその性質や引火点などに応じて、7つのグループにわけられています。
上のもの、つまり引火点が低いものほど火災のリスクが高いもの、つまりヤバいものだと考えるとわかりやすいでしょう。第4類の中では特殊引火物が一番ヤバい、ということですね。そして、ヤバいものをたくさん貯蔵すると、火災の危険性が増しますよね?ですので法律では、ヤバいものをあんまりたくさん貯蔵しないよう、量を規制しているんですね。それが指定数量と呼ばれるものです。
特殊引火物だったら、基本的には50リットルしか貯蔵してはダメよ、と規制されているんですね。ただし引火点が高く、火災のリスクの低い第4石油類などでは、基本的には6,000リットルまで貯蔵ができます。こうした法規制を守ることが、火災の未然防止策になる、というわけですね。
指定数量とそれに応じた手続き・貯蔵方法について
さきほどみた「指定数量」というのが。法で規制をしている危険物の量なんですが、これを超えて貯蔵しては行けないのか?というと、そうでもありません。一つの工場、作業場などで、指定数量以上の危険物を貯蔵することはできるんですが、所轄の消防署から許可をもらわないといけないんですよね。
また、指定数量以上を貯蔵するとなると、火災のリスクが高まりますから、法で定められた技術上の基準を満たした場所に貯蔵をしないといけません。ちょっと一言ではその技術上の基準を説明できないんですが、結構厳しい基準なんですね。こうした基準を守ることも、火災の未然防止策となるわけです。
ただ、指定数量を超えて無限に危険物を貯蔵できるわけではありません。消防署から許可をもらった量までしか貯蔵できません。この量は、「指定数量の倍数」という聞き慣れない単位で管理をします。指定数量の倍数については後で説明をします。
一方、指定数量未満であれば、好き勝手に貯蔵できるのか、というと、そうでもありません。指定数量の1/5以上で指定数量未満の量の危険物を貯蔵する場合は、少量危険物として、市町村条例の規制を受けるケースが一般的です。消防署の許可まではいらないんですが、消防署に届出をする必要があります。そして少量危険物であっても、条例で定められた技術上の基準を満たした貯蔵所に貯蔵をしないといけません。
そして最後ですが、指定数量の1/5未満の場合は、特に届出も許可を得ることも不要です。貯蔵場所も特に技術上の基準の定めはなく、冷暗所などに保管するというのが基本でしょう。
指定数量の倍数の計算方法
最後に、指定数量の倍数を求めるやり方を簡単に説明します。これは簡単な割り算と足し算です。危険物の実際の貯蔵量を、法で定められた指定数量で割ったものが、指定数量の倍数です。具体例を使って説明するとすぐわかると思います。
うちの会社ではガソリン400リットルを貯蔵しているんです、という場合ですが、ガソリンは危険物第4類の分類の中では、第1石油類非水溶性というグループです。第1石油類非水溶性というグループの指定数量は200Lでしたので、400リットル÷200リットル=2、ということで、指定数量の倍数は2倍になります。このケースだと、消防の許可がいるというパターンですね。
ただし現実には、いろんな種類の危険物がたくさんあるよ、というケースが多いはずです。そのような場合はどうすればいいでしょうか。これが2つ目の例ですが、特殊引火物であるジエチルエーテル30Lと、第1石油類水溶性のアセトン200Lを貯蔵している会社があるとします。
まずはジエチルエーテルの倍数を計算します。30リットルの貯蔵量に対して、特殊引火物の指定数量が50Lですから、30÷50=0.6倍となります。
一方、アセトンの貯蔵量200Lに対して、第1石油類水溶性の指定数量が400Lです。これの計算は、200÷400=0.5倍となります。
最後に、それぞれのグループの倍数を足してあげます。特殊引火物の倍数が0.6、第1石油類水溶性の倍数が0.5ですから、0.6と0.5をたして1.1倍となります。これだと指定数量を超えますので、消防の許可が必要になるというわけです。
この指定数量は、会社単位での貯蔵量として計算するのか、それとも建屋単位なのか、保管場所単位なのかと疑問ですが、これは実は結構複雑な取扱基準が定められています。屋内に貯蔵する場合は、基本的には建屋ごとで、建物全体を同一の場所として指定数量の倍数の計算をします。ただ、いろんなパターンがあって、同じ建物の中でも耐火構造の有無などによって変わりますので、詳しくは消防署に問い合わせたほうがよいでしょう。