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【ISO内部監査レベルアップ講座】"測定機器の校正"を内部監査する(1)

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村です。

今回から、ISO内部監査レベルアップ講座として、ISO9001やISO14001の内部監査を効果的にやるためのポイントを解説したいと思います。初回の今回は"測定機器の校正"の内部監査です。

動画でも解説しています(無料・登録不要)

なぜ測定機器を校正しないといけないのか

まずそもそも論ですけれども、なぜ測定機器を校正しないといけないのでしょうか。

主な理由は2つありますね。

  1. 正しい値が測定できないと、クレーム・事故・リコールになるから
  2. 測定機器は長く使っていると、ズレが生じるから

測定機器がずれる原因は様々ですが、落としたりぶつけたりして狂うこともあるでしょうし、使う環境によって熱膨張による誤差が生じる可能性もあります。そんな理由でずれたものでモノを測ると、寸法とか配合がおかしなものがお客さんのところに行ってしまいます。そうなるとクレームですめばまだしも、最悪の場合、事故が置きたり、リコールになったりするかもしれませんよね。こうしたことのないように、校正をしないといけないということですね。

国家計量標準に対するトレーサビリティとは

このように「校正」とは、「正しい測定」をするために、測定機器がズレているかどうかを把握し、必要ならば調整をすることなんですが、「正しい測定」というのは一体何のことでしょうか。

「正しい測定」をひとことでいうと、国が管理している国家計量標準に対して正しい値を測る、ということなんですね。

どういうことかというと、まず企業の現場などで使う測定機器があります。ノギスを例にしましょう。このノギスで正しい測定ができるかどうかは、ふつうはブロックゲージを使って判断しますよね。ここまではよく知られていますよね。

でも、そのブロックゲージも多少は熱膨張しますので、本当にこのブロックゲージが正しい長さなのか?というのは、どうやって把握をすると思います?ブロックゲージの正しさは、ヘリウムネオンレーザ装置というもので把握するんですね。

じゃあそのヘリウムネオンレーザ装置の正確性はどうやって把握をするのか、というと、これは国家計量標準である光周波数コム装置というもので把握をしているらしいです。光周波数コム装置は、産総研(産業技術総合研究所)が持っているんだそうですね。

このように、現場で使う測定機器を校正するには標準器を使うんですが、その標準器の校正のために、さらに上位の標準器を使います。このつながりは、最終的には国家計量標準にたどり着くんですが、このようにつながっている状態を、国家計量標準に対してトレーサブル(追跡可能)であると言います。そして、トレーサブルな状態であることが、「正しい測定」ができる状態である、というわけなんですね。

トレーサビリティ3点セットについて

では、例えばお客さんから「御社の測定機器は、本当に正しい測定ができるんですか?証拠を見せてください」と言われたら、どういう証拠を提示しないといけないでしょうか。それが今からお話をするトレーサビリティの3点セットと呼ばれるものです。

3点セットの最初の書類は、校正証明書と呼ばれるものです。校正証明書とは、校正機関が発行をする書類であり、測定機器をちゃんと校正しましたよという証拠書類ですね。

校正証明書は、JCSSなどのロゴ付きの証明書と、ロゴのない証明書に分けられます。JCSSというは、国(独立行政法人のNITEナイトというところ)が計量法に基づいて、校正機関を登録(認定)する制度のこと。JCSSの認定を受けた校正機関は、技術力・能力があるという国のお墨付きがあるんですよ。そうした認定をうけた校正機関は、校正証明書にJCSSのロゴを付けて発行することができるんですね。

つまりJCSSのロゴのついた校正証明書は、国に認められたちゃんとした機関が、校正をしましたよという証拠でもあるわけです。だからロゴがついているほうが、トレーサビリティの信頼性が高い校正証明書と言えます。ただし、ロゴがついていない校正証明書はダメという意味ではありません。測定機器によってはロゴ付きの校正証明証が出せないものもあるし、コストもかかるし、発行までの時間もかかるのが一般的です。

じゃあロゴがない証明書の場合はどうすればトレーサビリティが証明できるかというと、それは他の書類とセットで、国家計量標準に対してトレーサブルであることを証明することができます。セットで証明するための書類には、基準器検査成績書・上位標準器校正証明書や、トレーサビリティ体系図があります。

基準器検査成績書や上位標準器校正証明書とは、例えばノギスを校正する際に使った校正機関側の標準器・基準器(ブロックゲージ)が、国家計量標準に対してトレーサブルであることを証明するための書類です。

3点セットの最後、トレーサビリティ体系図というのは、校正に使った機器が、どのようなつながりでピラミッドの一番上の国家計量標準までつながっているかという関係性を示した図のことです。

国家計量標準につながることを証明するには

この3点セットの書類を使って、国家計量標準につながることを証明するわけですが、どういう書類のどういう組み合わせだったら国家計量標準につながることを証明できるかというのが、おおまかには3つのパターンがあります。

まず最初のパターン①ですが、これはJCSSなどのロゴつきの校正証明書が1枚あれば、国家計量標準にトレーサブルであることを証明できます。JCSSのロゴ付きの証明書はいわばお墨付きなので、これだけでOKということなんですね。

続いて、パターン②です。これはJCSSなどのロゴのない校正証明書と、基準器検査成績書や上位標準器校正証明証の組み合わせで証明するというパターンです。ロゴがない校正証明書単独では、国家計量標準にトレーサブルであることを証明できません。しかし、その校正に使った標準器、例えばノギスの校正につかったブロックゲージが国家計量標準にトレーサブルであることがわかれば、ロゴのない校正証明書でもOKという考えです。

そしてパターン③です。ロゴのない校正証明書と、トレーサビリティ体系図という組み合わせですね。これでもある程度は、国家計量標準にトレーサブルであることを判断できますが、完璧とはいえません。完璧じゃないからダメなのかというと、必ずしもダメとはいえません。皆さん方の取引先が「これでもいいよ」といえば、それでOKかもしれません。厳しい取引先は「いや、これでは国家計量標準にトレーサブルであることが判断できないので、パターン①か②にしてくれ」と言ってくる可能性もゼロではないでしょう。

このあたりは、いろんなパターンがあるので、一概に「これじゃなきゃダメ」とはいえないところがあります。書類の名称も、校正機関によってさまざまですし、本当にいろんなパターンがあるので、あくまでもこちらの表は、基本的な考え方として見て頂ければと思います。

  • B!

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