おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
内部監査レベルアップ講座、「営業部門を内部監査する」というテーマでお届けします。初回の今回は、まずはISO9001の規格要求事項として営業部門に関係が深いところを概説します。
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営業部門は「品質管理」とは関係がない?
ほとんどのISO9001の認証取得企業では、営業部門も適用範囲に含まれていると思います。しかし製造部門や開発部門のように品質に直結する部門ではないためか、営業部門をISOの中でどう扱えばよいのか戸惑っている企業も多いように思われます。
実際、ぼくが知っている会社のなかに「営業部門には品質は関係ないので、品質目標は立てていません」という会社がありました。
確かに一般的な営業部門ではものづくりはしませんが、決して「品質管理とは関係ない」とは言えません。「品質がよい」というのは、顧客の要求通りのモノである、ということと同義です。「顧客の要求」をまっさきに聞いてくるのは営業の役目でもありますから、品質に関わる最初の段階で責任を負っているのが営業です。
営業プロセスとは(ISO9001:2015 4.4)
営業……と一口にいっても様々です。ぼくも社会人になって、営業として何度も転職していますけれども、どの会社にいっても営業の役割は違うんですよね。会社の数だけ営業があるといっても過言ではないと思います。
有形のモノを扱う小売業と、目に見えないモノを扱うサービス業では、営業の方法は全く違います。一品一様のモノを販売する営業と、規格品を販売する営業も違うでしょうし、ルートセールスなのか、提案型営業なのかによっても違いますし、顧客が法人なのか個人なのかによっても違います。一般的に認知されている商材を扱うのと、そうではない商材を扱うのとでも営業のやり方は全く違いますよね。
ここに、ぼくが思いつく限りの営業に関するプロセスを挙げましたが、これらのプロセスも全ての企業の営業さんに関係するとは限りません。金額の低い商材を扱う小売店だと与信プロセスは必要ないでしょうし、サービス業だと在庫管理プロセスも必要ありません。現金商売だと見積や請求、売掛管理も不要ですよね。
このように、業種や業態、会社によって営業プロセスは大きく異なりますが、まずは営業としてどんなプロセスがあるのかを明確にしておく必要がありますね。ISO9001の規格要求事項でいうと、箇条4.4.1で要求されていることです。そしてこれらの決められたプロセス通りに仕事をしているかどうか、というのも、内部監査で着目すべき点です。
営業部門の品質目標(ISO9001:2015 6.2)
そして営業の内部監査のポイントで重要なのが、品質目標の監査です。
全てとはいいませんが、かなり多くの企業で、営業プロセスの品質目標として「売上高」を指標にしているケースがあります。これが絶対に悪いとはいいません。
たしかにお客さんに満足してもらわなければ売上は増えませんから、売上高は顧客満足を測る代用指標と言えなくもありません。しかし売上高は通常、市場の動向やお客さんの懐事情など、わが社ではどうしようもできない要因で変動します。
自分たちの努力で統制が困難な指標を品質目標にする、というのはあまりよい方法とはいえません。これは営業プロセスに限りませんが、統制困難な目標になっていないかどうかは、目標の内部監査の着眼点といえます。
では、統制可能な目標にはどういうものがあるかというと、営業プロセスで例えると、「営業起因の苦情・クレームの削減」というものが例として挙げられるでしょう。苦情やクレームが発生するかどうかは、売上高と比べても、外的要因で左右されにくいといえます。わが社だけのプロセスの見直しや力量の向上でカバーできますからね。
その他、既存のプロセスを大きく改善させるような取り組み……例えば顧客管理のプロセスや受注管理のプロセスをデジタル化するなどの取り組みを品質目標にしても良いと思います。プロセスを改善したりデジタル化すれば、営業上の事務仕事でのうっかりミスの可能性も減るでしょうから、結果的には営業起因の苦情・クレームの未然防止などにつながりますね。
内部監査でこうした指摘をしても、なかなか受け入れられないかもしれません。というのも、そもそも社長が「営業の目標といえば売上しかないだろ」みたいな感じだと、営業担当者としても目標を見直そうという気にはなりませんよね。内部監査の結果はマネジメントレビューにインプットすることになっていますから、そうした目標のほうが合理的ではないかということをマネジメントレレビューで討議をしたり、または外部審査員に指摘をしてもらうように仕向けるなどの政治的な工作も必要かもしれません。
営業に最も関わりが深いISO9001:2015 8.2
ISO9001において、規格要求事項として営業プロセスと密接に関係しているのは、箇条8.2でしょう。
ISO9001における箇条8「運用」は、全体的いうと、製品やサービスの作り込みの部分ですが、その中でも箇条8.2は、作り込みに着手する前の段階、もっと具体的にいうと、お客さんのニーズを明確にする段階のことですね。
箇条8.2は、細かく4つの項目から成り立っています。箇条8.2.1は、顧客とのコミュニケーションのことであり、端的にいうと、お客さんのニーズを掴むためにこんなコミュニケーション・商談をしましょうねと言っている部分です。
お客さんとコミュニケーションをするなかで、お客さんから「こんなものがほしい」とか「こうしてほしい」というニーズが見つかると思いますが、そのニーズをはっきりさせましょうと言っているのが箇条8.2.2です。
お客さんから「こんなものがほしい」とか「こうしてほしい」というニーズが出てきたら、次にやるのは「そのニーズに応えることが我が社でできるか?」という確認ですが、その確認としてこういうことをしましょうね、といっているのが箇条8.2.3です。という感じで、箇条8.2.1から8.2.3は、営業の流れにそっているともいえるでしょう。
8.2.4はちょっと毛色が違うのですが、お客さんのニーズが変わったときには、変更されたニーズを社内で周知して、ちゃんと対応してね、といっている部分です。