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いま流行のChatGPTにISO9001:2015の監査をさせてみた

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

最近流行りのChatGPTですが、ISOの監査との親和性が高いのではないかと常々思っていました(ISOマネジメントシステムは基準が明確なので、それからの逸脱を判断しやすいから)。というわけで、事例を投げかけ、それがISOの規格要求事項に対して不適合かどうかをChatGPT判断させてみました。

そもそもChatGPTとは?

ChatGPTとは、一言でいうと「すごいAI」です。以下、ChatGPT自身に、ChatGPTの解説をしてもらいました。

ChatGPTは、OpenAIが開発した大規模言語モデルの一種で、GPT-3.5アーキテクチャに基づいています。ChatGPTは、人工知能を活用して、自然言語での会話や文章生成など、多様な言語処理タスクを実行することができます。ChatGPTは、学習に使用された大量のデータと、自己教師あり学習アルゴリズムによって、人間に匹敵するレベルの言語理解力を持っています。

この「すごいAI」が、無料で使えるんですよ。

今回の記事での試みは、GPT-3.5(最新世代の一つ前の世代)で試してみました。

まずは明確な不適合から

まずは明らかに不適合だと思われるものについて、問うてみました。

ISO9001:2015 箇条7.2 d)は「力量の証拠として、適切な文書化した情報を保持する」という要求事項です。「文書化した情報を保持していなかった」というケースなので、これは明確に不適合だと思いますが、ChatGTPは「適合しない可能性がある」と、ちょっと弱気な判断ですね。

微妙な変化球を投げてみる

続いてちょっと微妙な変化球を投げてみましょう。

「力量の証拠としての教育訓練記録がない」ということに対するChatGTPの回答が以上の通りです。「不適合とみなされる可能性がある」というのはその通りですね。「教育訓練記録」でなくても、力量の証明にはなりえますからね。たまたまかもしれませんが驚いたのは、ぼくの問いかけは「証拠(教育訓練記録)が見当たらなかった」と、「教育訓練記録」を名指ししたのに対し、ChatGPTは「証拠(教育訓練記録など)」として、教育訓練記録以外の記録も対象になりうることを示唆していました。

ということで、続いてはこういう球を投げてみました。

「熟練作業者はわざわざ教育訓練なんて受けません。どちらかというと教育訓練の講師を務めるような人たちです。そういう人たちは、教育訓練記録なんていらないんじゃないか?」というニュアンスを込めた問いに対して、ChatGPTは「不適合と言えます」と、いい切ってきました。どうもChatGPTは「教育訓練記録」の有無にこだわっている感じがします。もしかしたらぼくとのやり取りのなかで「教育訓練記録」を重視するように学習したのかもしれません。

ということで、ChatGTPちゃんにインプットしてあげることにしました。

「教育訓練がなくても、作業者が必要な力量を備えていることを示す適切な記録を作れ」ということです。まあ、そういう回答はありうるでしょうね。というわけで「社長が判断した」という情報を付け加えました。

すると「社長の判断が適切かどうか」と、社長を疑ってきました。ChatGTPが疑り深いのか、それとも「社長の判断だから大丈夫だろう」という人間(ぼく)の判断があいまいなのか。際どいところに入り込んできた感があります。そこでこういう情報を付記してみました。

相変わらず社長の判断を信用していない感がありますね。このときぼくも気づきましたが、従業員数の少ない中小企業だと社長が現場社員の力量を判断できるかもしれませんが、これが大企業の社長だとそうもいかないかもしれません。そういう観点で考えると、社長が言っているからOKだろうとは、たしかに一概には言えないかもしれませんね。(ぼくよりもAIのほうが、偏見がなく、より多くの可能性をもとに判断しているかもしれない)

しつこいようですが、「社長がいいと言っているんだから、それでいいやん」というのを念押ししてみました。

明確に「社長の判断でいいよ」とは口が裂けてもいいそうにないChatGPTです。正論を言っているな、というのはわかりますね。ぼくがいい加減なのでしょうけど、ChatGTPのこの回答を見て「頭が硬いなあ」と思ってしまいました。(おかしなことは言っていないですけど)

ChatGTPは日本の事情を考慮できるか

違った観点でも試してみましょう。ChatGTPは、もともとアメリカで生まれたものです。アメリカの事情に最適化されているのは想像がつきますが、日本の事情は考慮できるでしょうか。それを下記のような問いで確かめてみました。

JCSSというのは、計量法に基づく日本の校正事業者登録制度です。JCSSは、国(独立行政法人のNITE)が計量法に基づいて、校正機関を登録(認定)する制度のことです。そして校正証明書にJCSSのロゴを付けて発行したものは、トレーサビリティの信頼性が高い校正証明書として扱われます。だから日本では、JCSSロゴのついた校正証明書があれば、それ以外の校正記録(例えばトレーサビリティ体系図や基準器の校正証明書等)はなくても、国家計量標準までトレーサブルであることが証明できます。

JCSSという日本の制度のことを訊いたわけですが、ChatGTPの回答を見ると、そのあたりをちゃんと考慮しているように見えます。ただ、JCSSロゴの校正証明書だけじゃダメだよ、とChatGTPが言っているのは、おそらくは単なる証明情報だけではなく、校正時のデータ等までも情報として受け取っていることが必要ということを示唆しているように思います(普通はJCSSロゴの校正証明書を出す校正機関がそうした情報もくれると思いますけど)。正直、ChatGTPのこの回答をみて驚きました。日本の事情も考慮して回答できているやん、と。

結論:結構使えるけど問いの立て方が大事

ISO9001:2015の審査ができるかどうかという観点でいろいろ実験してみましたが、結論を言うと「ChatGPTでも結構できるんじゃない?」という印象を持ちました。

ただ、問いの立て方が大事だなあという印象も受けました。

例えば下記のような問いをしてみたのですが、「適合かどうか判断できません」と言われてしまいました。それはそうです。検査員についての力量の記録があったとしても、その記録が顧客要求を順守する上で必要な作業に求められる力量かどうかは、この問い方ではわかりませんからね(極端な話、製造現場の作業者の力量の記録は「Excelについての教育訓練記録しかない」ということもありうるわけですし)。記録はあってもその記録がどういうものなのかがわからないので、こういう玉虫色の回答も仕方ないことです。

ということは、AI(ChatGTP)に気の利いた回答をしてもらおうと思うと、それなりの情報を含めるのはもちろん、その情報の要点を端的に伝え、その上でやってほしいことを明確に指示する必要があります。これらの情報収集や情報要約自体をChatGTPでやるのは、難しいところかもしれませんね。

つまりAIが判断できるだけの程度の情報を集めて整理する必要がありますが、それを考えるのは人間だ、ということでしょう。したがって、ChatGTPからそれなりの回答を引き出すための基本的知識はやっぱり必要なんだろうなという気がします。

  • B!

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