おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO45001:2018各箇条解説、今回は箇条4.1「組織及びその状況の理解」について、2回にわたって解説をします。今回は課題の例を中心に解説します。
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【ISO45001:2018 4.1】労働安全衛生に関する外部・内部の課題とはなにか(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 ISO45001:2018各箇条解説、今回は箇条4.1「組織及びその状況の理解」について、2回にわたって解説をします。今回は箇条4.1 ...
ISO45001:2018における 外部の課題とその例
課題の例は、規格の附属書に書いています。しかし附属書の記述もわかりにくいので、もうちょっとわかりやすくした例も説明しましょう。
まずは外部の課題です。
- 国際、国内、地方又は近隣地域を問わず、文化、社会、政治、法律、金融、技術、経済及び自然の環境、並びに市場競争
- 新たな競合企業、請負者、下請負者、供給者、提携先及び提供者の導入、新技術、新法、並びに新しい職業の登場
- 製品についての新知識及びその安全衛生への影響
- 組織への影響力をもつ産業又はセクターに関係するキードライバー及び傾向
- 外部の利害関係者との関係、並びに外部の利害関係者の認識及び価値観
- 上記のいずれかに関わる変化
外部の課題の1番目は、「国際、国内、地方又は近隣地域を問わず、文化、社会、政治、法律……」などと難しいことが書いていますが、例えば、国内の社会的な課題として「今年の夏は暑すぎて、作業中に熱中症で亡くなる人が出ているみたいですね」みたいな話題が該当します。この課題をもとにして、現場での熱中症に関するリスクや危険源が洗い出されて、熱中症対策が講じられることにつながっていきます。
ISO45001:2018における 内部の課題とその例
続いて内部の課題についても見てみましょう。
- ガバナンス、組織構造、役割及び説明責任
- 方針、目標及びそれらを達成するために定める戦略
- 資源、知識及び力量の観点から理解される能力(例えば、資金、時間、人的資源、プロセス、システム、技術)
- 情報システム、情報の流れ及び意思決定プロセス(公式及び非公式)
- 新しい製品、素材、サービス、ツール、ソフトウェア、施設及び設備の導入
- 働く人との関係、並びに働く人の認識及び価値観
- 組織の文化
- 組織が採用する標準、指針及びモデル
- 例えば、外部委託した活動を含む、契約関係の形式及び範囲
- 労働時間に関する取決め
- 労働条件
- 上記のいずれかに関わる変化
わかりやすいところを一つ見てみましょう。内部の課題は5番目がわかりやすそうです。
「新しい製品、素材、サービス、ツール、ソフトウェア、施設及び設備の導入」とあります。これは例えば、「うちの会社では今度、新しい仕事を受けるんだけど、アーク溶接が必要なんだよね」みたいな話題が該当します。アーク溶接はいろいろと健康に影響を与える溶接作業なので、この課題をもとにして、リスクとか危険源を洗い出して、特化則のような法律もおさえて、そして、安全な作業方法を確立していくということにつながっていきます。
そもそもISOにおける「課題」とは何なのか
ところで「課題」という言葉は、自分たちで解決をしないといけないものや、悪さ加減があるものというイメージがあるかもしれませんが、ISOとしてはそうしたものに限定していません。
ISOにおける「課題」というのは、社内で話し合われる話題やテーマのようなもので、よいことや悪いことも、中立的なこともいろいろ含んでいると考えるのがよいでしょう。
組織の目的・OHSMSの意図した成果に影響を与える課題とは
そしてこうした課題も挙げていくと無数にあるんですが、規格には「組織の目的に関連し、かつ、その労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果を達成する組織の能力に影響を与える」ものだけでいいよ、と書かれています。
組織の目的とは、組織が目指している方向性など(例えば経営理念や経営ビジョンなど)のことです。そして労働安全衛生マネジメントシステムの意図した成果とは、ひらたくいうと、労働事故を減らしたり、働きやすい環境を作ったり、法律を守ったりすることです。要は自社の労働安全衛生のレベルを高めていく活動とあまり関係のないことは、わざわざ挙げなくてもよいということですね。
例えば私はコンサルティングという仕事をしていて、今後もコンサル以外の仕事をするつもりはないんですが、ふつうコンサルの仕事では、有機溶剤による中毒になったり、機械に手を挟まれたりするようなことはありません。なので、あまり自社に関係のないことはわざわざ課題としてあげなくてもよい、ということですね。