おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO9001の規格を読むと、いろんなところに「変更」という言葉が出てきます。こうした「変更」は、どのように理解するべきでしょうか。そして「変更」をどのように内部監査すべきでしょうか。今回は、「品質マネジメントシステム変更」について解説します。
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【内部監査レベルアップ講座】"品質マネジメントシステムの変更"と"変更"を内部監査する(1)
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品質マネジメントシステム変更の要求事項
では、ISO9001の規格内で「品質マネジメントシステムの変更」に関連する要求事項を見ていきましょう。
このテーマについて明確に言及している箇条は4つあります。5.3では、仕事のやり方を大きく変更する際には、誰が何をやるか、何をやってよいのかを明確にし、問題が発生しないようにすることが求められています。また、6.3では、やり方を大きく変えるときは計画的に行い、問題が発生しないようにすることが言われています。9.3.3では、トップマネジメントが判断を下す際には、やり方をどう変えるか、どのような処置を取るかを決める必要があります。そして、10.2では、必要な場合には、やり方を大きく変えるように求められています。
これだけだと、まだ具体的に何をするのかイメージしずらいかもしれませんが、規格が明確に求めているのはこれだけなんですよね。規格は基本的に、「品質マネジメントシステムの大きな変更を行う際には、適切にやりなさい」と言っているだけです。具体的な手順などは、規格では詳細には触れていません。せいぜい、計画的にやろうとしているか、その計画は誰が何をやることになっているか、そしてトップが関与しているか、くらいしか規格からは読み取れません。これでは、品質マネジメントシステムの変更に関する内部監査を具体的にイメージするのは難しいですよね。ですので、品質マネジメントシステムの変更についての具体的な例を挙げながら、内部監査を行う方法についても説明していきたいと思います。
品質マネジメントシステム変更例(新工場建設の場合)
ISO9001の品質マネジメントシステムの変更に関して、新工場建設という例で考えてみましょう。先に述べたように、品質マネジメントシステムの変更は複数の作業や業務…つまりプロセスに関わる変更ですが、具体的には4.1、4.2、5.3、6.1、6.3、9.1、9.2、9.3、10.1、10.2、そして箇条7や8のいくつかのプロセスが関係します。また、組織固有のプロセスも影響を受けるでしょう。
順を追って説明しますが、まず4.2の「利害関係者のニーズ・期待把握プロセス」で、取引先からの増産要請を把握します。次に4.1の「課題把握プロセス」では、増産要請に応えるために現在の生産能力が不足していることを把握します。こうしたニーズや課題の変化は、9.3の「マネジメントレビュープロセス」で、経営者に報告します。この報告に基いて、経営者は新工場建設を決断しました。すると次は、6.1の「リスク・機会決定プロセス」で、新工場建設に伴うリスクや機会を洗い出します。例えば「従業員が通勤しにくくなって、辞めてしまうリスク」が特定されました。続いて6.3の「変更の計画プロセス」では、こうしたリスクを考慮した新工場建設計画を立てます。計画では、リスクへの取組策が落とし込まれますが、例えば「従業員への説明の場を設ける」とか「転居手当、住宅手当などの支給」といった対策を計画します。
同時に、5.3の「役割・責任・権限割当プロセス」では、新工場建設計画について、誰が何をやるかという責任と権限を割り当てます。続いて9.1の「監視・測定・分析・評価プロセス」と9.2の「内部監査プロセス」で、計画の進捗や妥当性を確認します。そして10.1の「改善一般プロセス」と10.2の「不適合及び是正処置」では、計画の進行に問題があれば改善を行います。
こうした流れで、新工場建設のPDCAが回されるわけですね。
品質マネジメントシステム変更の内部監査例(新工場建設の場合)
そして、この一連の活動をどう内部監査するか、ということですが、例えば箇条6.1で、網羅的に工場建設に関するリスクと機会が挙げられているかを確認したり、6.3で新工場建設計画が明確になっているか、計画における責任や権限が明らかになっているかなどを確認します。もちろん、6.1で挙げたリスクと機会が新工場建設計画に反映されているかどうかも、確認が必要ですね。
また、9.1では新工場建設計画の進捗が監視され、問題があった際には適切に改善や是正が行われているかを確認します。また7.1では新工場での設備や測定機器の導入計画やメンテナンスの計画が立てられているか、新工場で働く人の異動や採用についての計画が立てられているか、8.1で新工場の工程設計が計画されているか、8.4では移転先での購買先・外注先の新規選定の計画があるか、8.5では、適切な大きさの倉庫や一時保管場所なども設計図面に盛り込まれているかなども確認できそうです。
品質マネジメントシステムの変更を内部監査するポイントとして重要なのは、新工場建設計画の中身が良いか悪いかを判断するのではなく、今話したような一連の動きが、”完全に整っている状態”、つまり漏れなく、しかも滞りなく動いているかどうかを確認することになります。ただ、今見てもらったように、品質マネジメントシステムの変更を内部監査する場合、かなり大規模で複数のプロセスにまたがる、かなり複雑な監査になると思われます。これをうまく内部監査するのは大変です。監査員も、経営サイドにいる人で、規格のことはもちろん、実務についても熟知している人が監査をする必要があるでしょう。