おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO45001:2018各箇条解説シリーズ、今回は箇条6.1.1「リスク及び機会への取り組み」ついて説明します。この箇条は、職場をより安全にし、事故を防ぐための核心であると言えます。初回は「リスク」と「機会」について解説します。
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箇条6.1.1の位置づけ
まずは箇条6.1.1の位置づけを見てみましょう。
箇条4では、会社が置かれている状況を考えて、労働安全衛生マネジメントシステム(つまり「会社が安全で健康的な場所になるための全体的なルール」)を作って運用することを求めていましたね。
箇条5では、そのマネジメントシステムを円滑に回していくために、会社のトップがやるべきことを定めていました。
箇条6「計画」では、会社を安全で健康的な場所にするために問題になりそうなことをあらかじめ洗い出して対策をしたり、目標を作ったりすることを求めています。
そして今日解説する箇条6.1.1では、安全で健康的な職場をつくるために、どんなリスクや機会があるかを見つけて、それにうまく対応する方法を考えることが求められています。
ISO45001:2018におけるリスクと機会とは何か
リスクと機会については、山登りに例えると分かりやすいです。
山登りでは、頂上を目指しますが、途中で蛇や熊に出会うかもしれません。このように、起きたら困るなという悪い出来事のことを「リスク」といいます。(「リスク」という言葉は、正確にはもっといろんな意味がありますが、今日はさしあたってこの定義で学んでみてください)。
一方で、山道には山小屋があって、途中で休憩できるかもしれません。このように「起きたらラッキーなのに」というよい出来事のことを「機会」といいます。
山登りでは、リスクに対しては、熊よけの鈴を持つなどして対策をします。リスクのせいで頂上までいけなかった、ということがないようにする、ということですね。また、機会に対しては、地図を持って行って場所を確認するなどして、山小屋に確実にたどり着けるよう準備をしますよね。
このリスクと機会に対する考え方は、労働安全衛生マネジメントシステムでも同じように当てはまります。
例えば、会社で「安全で健康的な会社になる」という目的に向かう時、「この作業は危険だ」というリスクや「新技術で安全性を向上できるかも」という機会があります。箇条6.1.1では、こうしたリスクと機会を見つけて、事前に対策を立てることが求められています。これにより、会社は「安全で健康的な会社になる」という目的に確実に近づくことができます。
ISO45001で求められるリスク管理
ISO45001では、リスクをどのように扱うのでしょうか。
まずリスクの特定として、どんなリスクがあるかを洗い出します。次にリスク算定では、それぞれのリスクがどのくらいの大きさなのかを測ります。続いてリスク評価では、算定結果に基づいて、どのリスクを優先的に対応するかを決めます。リスク対策の選択では、優先度の高いリスクに対して、どう対応するかを決めます。そしてその通りに対策を実施し、リスクにうまく対応できたかどうか、見直しの必要性がないかを検討します。
こうした流れでリスクを扱うことがISO45001では求められていますが、今日のテーマである箇条6.1.1は、リスク特定から評価までの全体的なやり方について定めています。このようにリスク管理の基本となる部分を網羅していることから、箇条6.1.1は、ISO45001の核心と言ってもよいでしょう。
次回は箇条6.1.1の規格要求事項を解説します。