おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
うっかりミスに代表される「ヒューマンエラー」ですが、ヒューマンエラーの原因は個人の不注意などとして捉えられがちです。でも本当はもっと複雑であることがわかっています。ヒューマンエラーとは何で、そしてなぜ起きて、どう対策するかについて3回に分けて解説します。
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ヒューマンエラーとは何か?
ヒューマンエラーは、いろんな仕事で事故の原因としてよく聞く言葉です。「うっかりミス」と同じような意味合いで理解されることが多いと思いますが、ヒューマンエラーとは具体的に何を意味するのでしょうか?
1900年代の初めから、人がうっかりミスをすることや危ない行動をすることをヒューマンエラーと呼んでいたそうです。しかし本格的に研究されるようになったのは、1979年のスリーマイル島原発事故がきっかけと言われています。
この事故の後、たくさんの科学者が集まってヒューマンエラーについて話し合いました。そしてヒューマンエラーの研究については、おおきく「認知心理学派」と「共同認知システム学派」に分かれました。
認知心理学派の代表的な人は、ジェームズ・リーズン教授です。彼は人々の日常生活でのミスを研究し、『うっかりミス』(absent minded slips)という理論を作りました。リーズン教授は、エラーをいくつかの種類に分けました。(これについては後述します)
一方、共同認知システム学派は、イェンス・ラスムセン教授を中心に、ヒューマンエラーが起きる現場作業を研究しました。その結果、ヒューマンエラーは事故の原因ではなく、システムの中での他の問題の結果(つまり、ヒューマンエラーが事故や不具合を起こすのではなく、組織的な問題や人間関係などが原因となってヒューマンエラーが起き、その結果として事故や不具合が起きる)と考えました。
ジェームズ・リーズン教授によるヒューマンエラーの分類
認知心理学派のジェームズ・リーズン教授によって提唱されたヒューマンエラーの分類を見てみましょう。
ヒューマンエラーは大きく2つに分けられます。「うっかり型エラー」と「手抜き型エラー」です。
「うっかり型エラー」は、さらに「行動のエラー」と「思考のエラー」に分けられます。
行動のエラー
行動のエラーとは、慣れていることでも油断すると間違えてしまうことを言います。これにはスリップとラプスがあります。
スリップは、簡単なことをするときに間違ってしまうことです。例えば、車のライトを点けようとして間違ってワイパーを動かしてしまうことが挙げられます。このようなミスは、普段は問題なくできる動作でも、一瞬の気の緩みや注意不足で発生します。
一方、ラプスは記憶のミスで、ちょっとしたことを忘れてしまうことです。例えば、交差点を車で曲がるときにウインカーを出し忘れることです。これは、慣れた行動の中で発生しやすく、特に疲労やストレスによるものもあると考えられます。
思考のエラー
思考のエラーは、ちゃんと考えて行動したのに間違えてしまうことを言います。これにはルールベースのミスと知識ベースのミスがあります。
ルールベースのミスは、誤ったルールに従って間違えることです。例えば、火災報知器が鳴っているのに「どうせまた誤作動だろう」と思って避難しないことが挙げられます。これは、過去の経験や誤った判断が原因となります。
一方、知識ベースのミスは、古い知識や経験に頼って間違えることです。例えば、新しいスマホを買ったのに説明書を読まず、前のスマホと同じように使って壊してしまうことです。知識ベースのミスは、特に新しい状況に適応する際に発生しやすく、適切な情報やトレーニングが不足しているときに起こります。
手抜き型エラー
「手抜き型エラー」は、早くやりたいとか楽をしたいと思ってルールを守らないことを言います。これはさらにルーティン、状況的、例外的の3つのタイプに分けられます。
ルーティンは、ルールを守らないことが当たり前になっていることです。例えば、工場で安全装置を無視して作業することが日常化している状況です。このような環境では、違反行為が習慣化し、重大なリスクが見逃されがちです。
状況的とは、時間や道具がないのでルールが守れないことです。例えば、納品が遅れているので未検査で出荷してしまうようなことです。これは、現場のプレッシャーや不十分なリソースが原因です。
例外的とは、緊急事態に対応するためにルールを破ることです。例えば、火事が起きても生産が止まると困るので非常ベルを鳴らさないことです。これは、一時的な判断でルールを無視することがあり、長期的にはさらに大きな問題を引き起こす可能性があります。
次回は、こうしたヒューマンエラーの原因が何かを解説します。