おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
お盆休み中はブログのネタもあまりないので、デミング博士「マネジメントのための14原則」をもう一度読み直してみたいと思います。ただ読むだけではなく、2020年代の現代の考え方と比べてみたりもしたいと思います。まずは第1原則について見ていきます。
デミング博士「マネジメントのための14原則」の第1原則
①より良い製品・サービスの実現に向けて、目的の一貫性を創出せよ。必ずや競争に伍していける存在となり、事業を継続し、雇用を守り、さらに雇用を拡大せんとする高い志を持て。
デミング博士によると、「一貫性ある目的を打ち立てる」とは、以下の責任を引き受けることだそうです。
製品やサービスにイノベーションを起こせ
要は「眼の前の日々の問題に取り組むだけでは競争に勝てなくなるので、新製品・新サービスを開発しろ」と行っているのですが、このために「長期的プランニングにリソースを割り当てよ」と言っています。リソースというのは一般論でいうと「ヒト・モノ・カネ」のことですね。こうしたものを新製品・新サービス開発のために用意して、そして使用者が満足する新製品・新サービスを作りなさい、と言っています。
入山(2019)によると、「戦略」と「イノベーション」は同義に捉えられ始めているというのが最近の経営学の傾向だそうですので、今風に言えばこれは「戦略を明確にする」と言ってもよいのかもしれません。
なお入山(2019)の定義を借りると、戦略とは、「企業を取り巻く環境(environment)を前提に、業績(performance)を向上させるための、経営資源(resources)を使った、企業の行動・アクション(action, initiative)のこと」です。
※入山 章栄. 世界標準の経営理論 (pp.846-847). ダイヤモンド社. Kindle 版.
研究と教育にリソースを割け
さらにデミング博士は「研究と教育にリソースを割け」と言っています。これは読めば理解はできますね。
研究とは、新しい技術や製品、サービスの開発に向けての探求を意味します。市場の変化や顧客のニーズに対応するためには、既存の製品やサービスを改善したり、新しいものを生み出すための研究が欠かせません。
教育は、企業内の人材が常に成長し、最新の知識やスキルを身につけることを指します。社員が新しい技術や方法論を習得することで、企業全体の能力が向上し、より良い製品やサービスを提供する基盤が整います。
これらにリソースを割くことで、企業は短期的な利益だけでなく、長期的な成長と競争力を確保し、結果として雇用の維持・拡大にもつながるという考え方です。要するに、未来の成功を見据えて、現在から準備を怠らないことの重要性を強調しているのです。
製品やサービスの「設計の改善」をどこまでも弛まず続けよ
「設計の改善」とは、製品やサービスの品質、機能、使いやすさ、コスト効率など、あらゆる側面を継続的に見直し、向上させることを指すのだと思われます。これには、新しい技術の導入や、顧客のフィードバックに基づいた改良、製造プロセスの最適化などが含まれることでしょう。
デミング博士が「弛まず続けよ」と言っているのは、改善のプロセスが一度で終わるものではなく、永続的なものであるべきだということです。技術革新や市場の変化は常に進行しているため、企業が競争に勝ち続けるためには、その変化に柔軟に対応し、絶えず製品やサービスの設計を改善していく姿勢が必要です。
結構当たり前のことを言っているが古臭い考えではないか
要は「顧客ニーズに基づいて継続的に改善を行い、顧客に受け入れられる新製品や新サービスを、手間ひまを惜しまずに作り上げろ」ということですので、ここまで読んだとき、ぼくは「なんだ、結構当たり前のことを言ってるな」と思ったのですが、皆さんはどうでしょうか。
確かに当たり前のことですが、決して2020年代のいまでも、この考えは古臭くなってはいないと思います。例えばテスラの時価総額は、GMの時価総額の10倍以上あります。しかし2024年1月~7月の米国での新車販売台数は、GMが約150万台に対して、テスラは34万台に過ぎません。ユーザーの持つ未来への期待感だけで、テスラはGMよりも遥かに高い時価総額を実現していますね。
このようにユーザーを魅了するイノベーションを引き起こすことは、依然として有効なんだと思います。(時価総額だけが企業の経営の良し悪しを測る指標ではないことは重々承知していますが)
人手不足でここまでやるのは無理じゃないか?
これが書かれた1990年代の米国ならまだしも、現在の人手不足の日本で、ここに書かれたすべてのことを完璧にこなすのは無理じゃないか?というのが、この第1原則を再訪したぼくの最初の感想でした。
まあデミング博士の原則は、基本的には理想的な状態を目指しているのだと思います。実際には経営者がリソースや時間の制約の中で優先順位をつけ、効率的に取り組むしかないでしょう。
または「設計の改善」や「教育の強化」など、すべての領域を一度に改善するのではなく、部分的にアプローチすることも有効です。例えば、特定の製品ラインや部署に焦点を当てて、改善を進めることから始めるならなんとかできなくもない、という感じでしょうか。