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デミング博士「マネジメントのための14原則」再訪(4)

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

デミング博士「マネジメントのための14原則」を読み直しています。ただ読むだけではなく、2020年代の現代の考え方や最近の経営理論と比べてみたりもしたいと思います。今回は第4原則です。(まだあと10もある!)

デミング博士「マネジメントのための14原則」の第4原則

④一番安い値段を付けた者が勝つという商習慣を終わらせよ。値段ではなく、トータルコストの最小化を狙え。「品目ごとにシングルサプライヤー」を目指して進め。サプライヤーとの間に誠実と信頼を旨とする長期的な関係を構築せよ。

一見すると、価格のことやらサプライヤーとの関係のことやら、いろんな観点がごちゃまぜになっているように思えますが、デミング先生の言いたいテーマはシンプルです。それは「製品の選定においては、価格だけでなく品質を考慮したトータルコストが重要だ」ということですね。

これはぼくが聞いた話ですが、ある時、海外製のある金型は、日本の中小企業が作った金型に比べて1/5程度の価格でした。顧客は、その安い海外製の金型に乗り換える素振りを見せて、値引き交渉をしてきました。

1/5も安いとなると、大幅なコスト削減に見えますが、いろいろ調べたところ、その金型の耐久性は日本製の1/10以下であることがわかりました。耐久性が低いので、使用期間が短くなったり頻繁な修理や部品交換が必要となったりして、最終的なランニングコストは高くつくことがわかりました。

このように品質が劣る製品を選ぶと、初期コストが低くても、トータルで見ると多額の追加コストが発生する可能性があります。だから品質を考慮したトータルコストの視点が重要だ、というのです。(端的に言うと「安物買いの銭失いに注意しろ」ということですね)

これは、自社が顧客に対して値付けをする面でも重要な話ですが、自社がサプライヤーからなにかを調達するという面でも重要な話なので、購買管理者に向けたメッセージとして第4原則にまとめて記述されています。

購買の管理者は、購入時のコストからトータルコストの最小化へ焦点を変える

ぼくの営業経験の中でも、一度このような事例がありました。直接やり取りをしている相手方担当者とは見積もり金額も合意できてるのに、最後に購買部門から一律10%の値下げをお願いされたのです😅

値下げの根拠はなんですか?と訊いたら、「うちはどちらさんにも一律で値下げをお願いしているんです」みたいなことを自信満々に言うんですよね。何の根拠もない値下げ要求なら、こちらもあらかじめ見積もりに10%上乗せしときますが、それでもいいんですか?と訊くと「それでいいです」って言われたんですよね。もうむちゃくちゃですよねえ。(結構名のある大手企業です。根拠のない個人的な印象ですが、中小企業よりも大手にそういうスタンスの企業が多いように思います)

おそらく購買の人も、その上の人から「10%値引き交渉をしろ」とかなんとか言われているんだと思います。デミング先生は、そういう人を「責められるべきは、もはや時代遅れの前例踏襲をいまだ堅持するマネジメントである」と喝破しています。

つまり購買の管理者は、購入時のコストからトータルコストの最小化へ焦点を変え、トータルコストを測れるようにもっと勉強しろ、と言っているわけです。

サプライヤーは1社に絞り、長期的関係を築くべき

そしてデミング博士は「サプライヤーは1社に絞り、長期的関係を築くべき」と言っています。理由の一つは、複数社購買の場合は調達品には必ず違いが生じるので、その違いによるミスやロスが起きるからという、変化点管理のことについて述べています。(なお、サプライヤーは1社でも、製造拠点が複数あると、やはり同じようなロット間のばらつきが起こるとも言ってます)

これは1990年代くらいまでの日本が、大手企業と中小企業が密接なすり合わせをしながら、技術開発や改善をしてきたことが念頭にあっての発言です。実際にそういう事例も第4原則の説明の中に書いています。でも最近の日本の大手企業は、中小企業に対しても「一律10%の値引き」を要求するような企業が散見されて、どこで路線が変わったのかなあと思うことがありますね。(グローバル化と、短期的な成果が求められるようになってきた2000年代以降だと思いますけど)

フォークの定理と2020年代の不確実性

第4原則を読んでぼくが思い浮かべたのは「フォークの定理」です。フォークの定理を簡単に言うと、繰り返しのゲームややり取りの中で「みんなが協力し続けると、全員が得をする」という考え方です。例えば、友達と一緒に遊んでいるとき、みんなが順番を守って遊び道具を使うと、みんなが楽しく遊べますよね。でも、もし誰かが順番を守らないと、他の友達が怒ってしまい、もう遊びたくないと言ってしまうかもしれません。

フォークの定理では、「一度でもルールを破ると、その後みんなが協力しなくなるので、最終的には損をすることになる」ということを教えています。だから、みんながルールを守って協力し続けることが大事だよ、という教えです。

「サプライヤー1社との長期的な関係が重要」というのも、このフォークの定理で説明できるんじゃないかという気がします。サプライヤー1社との長期的な関係を築くことで、調達側の企業は安定した供給や高品質な製品を得ることができます。サプライヤーも安定した取引先を持つことで、ビジネスを安定させることができます。このような信頼関係に基づく協力は、互いに「相手が信頼できる」という期待のもとで成り立ちます。

一方、もし企業が短期的な利益を追求して、中国製品への乗り換えをほのめかしたり、過剰な値引きを要求したりすると、サプライヤーの信頼を失う可能性があります。これにより、サプライヤーが品質を下げたり、協力を拒否したりすることになり、長期的には双方が損をする結果となりますよね。

ただ、サプライヤー1社購買は、この不確実性の高い2020年代にはリスクもあります。まず挙げられるのは自然災害や国際紛争、感染症などによる供給リスクが高いことですね。そのため、現実的には複数のサプライヤーを活用し、リスクを分散せざるを得ないでしょう。デミング博士が存命だったことよりも、市場はもっとグローバル化して、複雑・不透明になっていますからね。

ただしそれでも、主要なサプライヤーとの信頼関係を維持しつつ、他のサプライヤーをバックアップとして確保するような方法が望ましいんでしょうね。

  • B!

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