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デミング博士「マネジメントのための14原則」再訪(11)

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

デミング博士「マネジメントのための14原則」を読み直しています。ただ読むだけではなく、2020年代の現代の考え方や最近の経営理論と比べてみたりもしたいと思います。第11原則です。

デミング博士「マネジメントのための14原則」の第11原則

⑪(a)工場における出来高の標準(生産ノルマ)を廃止し、正しいリーダーシップで置き換えよ。

⑪(b)目標管理型のマネジメントを止めよ。数字によるマネジメントも定量的ゴールもなしだ。リーダーシップで置き換えよ。

これも「数値目標は作って当たり前」だと思っている経営者にしてみれば、受け入れがたい言葉でしょうね。

ただデミング博士は、数値目標を立てても仕事が良くならないどころか、かえって問題を増やすと言っています。マネジメントが手段を示さずに設定した内部の数値目標は、一種の茶番だと、かなり強い言葉で批判してます。

あまり語られることのない「数値目標」のデメリット

確かに、数値目標の設定は当たり前すぎて、そのデメリットが語られることはほとんどありません。

デミング博士は、数値目標のデメリットを、例を使って説明しています。

2人の現場作業者に、製品を1時間100台作るという目標が与えられました。この「1時間100台」という数字は、この会社全体の平均生産台数です。従業員のうち一人はベテランで、1時間に120台生産できます。しかし数値目標が100台であれば、100台しか作りませんよね。

一方、もう一人は新人で、1時間に80台しか生産できません。その人は目標達成できないと落ち込んで、もしかしたら上司から叱られる可能性があって、働く人のプライドがずたずたになる恐れがある、とデミング博士は言います。

なおデミング博士は「数値目標をやめろ」と言っていますが「数字を一切使うな」とは言っていません。博士は統計的管理の専門家ですから、数字を扱わないはずはないですよね。デミング博士によると、数字は、生産性や品質向上を妨げる要因を分析することなどに使うべき、と言っています。

MBOではなくOKRという目標管理

こうしたデメリットを和らげるような数値目標の運用方法も実はあるんですよ。それはOKRという手法です。OKRは、インテルやGoogleといった世界的企業が採用して、大きな成果を生み出したと言われています。日本ではメルカリが導入していることで有名ですね。

例えばOKRでは「最高の製品品質を実現する」という目標を掲げます。OKRでは目標は数値ではなく定性的な目標で、しかも容易には達成できないような高い理想の目標を立てます。

そして、その成果指標として工程内不良率とか顧客クレーム件数とか品質トレーニングの参加率といった数値の指標を定めます。

OKRのポイントとしては、上司や部下、チーム内で話し合って目標を決めることです。これにより、上から目標を押し付けるのではなく、全員の納得が得られるようにします。

また、成果指標は6割から7割程度を目指して取り組みます。つまり100%達成を求めないということですね。それでいいの?と思うかもしれませんが、OKRでは、数値ではなく、目標の達成にどれだけ貢献したかというプロセスが一般的には評価されます。指標はあくまでも指標です。これによって、目標が未達になるという考え自体をなくしているわけですね。

さらに人事評価には結び付けないのがOKRのお約束です。これによって余計なプレッシャーをかけないようにしてます。

また定期的に目標と成果指標を見直し、状況に応じて柔軟に対応することで、常に最適な状態を保つようにします。

このようなOKRを導入することで、高い目標を目指すようになり、やる気の低下を防ぎ、前向きに挑戦する姿勢が生まれます。そして、プレッシャーが少なくなるので、ルール違反や不正行為のリスクも減少するということですね。この手法は、心理的安全性を考慮に入れた目標管理の仕組みと言って良いと思います。

ただ、デミング博士が存命で、OKRのことを知ったらどう思うでしょうかね。OKRは定性的な目標を目指すのが一般的ですが、第9原則で「スローガンを打ち出すな」と言っていますし、OKRにも否定的になったかもしれませんね。

  • B!

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