おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
デミング博士「マネジメントのための14原則」を読み直しています。ただ読むだけではなく、2020年代の現代の考え方や最近の経営理論と比べてみたりもしたいと思います。第12原則です。
デミング博士「マネジメントのための14原則」の第12原則
⑫(a)現場で働く人々からワークマンシップの誇りを奪っている障害物を取り除け。監督者の責任は、数字だけのマネジメントから品質を良くすることへと変わらなければならない。
⑫(b)マネジメントの階層にいる人々と技術者からワークマンシップの誇りを奪っている障害物を取り除け。これは特に、年次評価、人事考課、目標管理の廃止を意味する。
デミング博士の説明によると、(a)は現場の人、(b)は経営層、管理者層、事務職、技術職のことですね。いわゆるブルーカラーとホワイトカラーでしょうか。
そして「障害物を取り除け」と言っていますが、ここでいう障害物とはどういうものでしょうか。デミング博士は以下のような点を例に挙げています。
- 良品と不良品の定義が明確でない(昨日は良品だったものが今日は不良だと言われる)
- 雇用が安定しない
- 機械や計測機器が故障しているなど、良品が生産できない状態なのに、マネジメントのや管理者に話を聞いてもらえない
- 機械の予防保全もしない
- 高くてもよい機材や材料を使ったほうが生産性がいいのに、安いからという理由で粗悪な機材や材料をあてがわれる(目先の小金を惜しんで大金を失う愚か者、と言っています)
- 管理者が現場のことをわかろうとしない
- 前工程(もしくは調達先)から不良品が送られてくるのになんの対処もしない
- (ノルマ達成などを)煽られすぎる
これらは、第10原則でも言われていた「システム上の問題」(仕事が正常に行われることを阻害する問題)です。こうした問題があるからシステムが不安定となり、継続的に不良が作られてしまいます。そしてこうしたシステム上の問題点は、「人の問題」であり、マネジメントがそれに向かい合うことを避けているからだとデミング博士は言います。
変革型リーダーシップは「人の問題」を解決する
ちょうどデミング博士がこのマネジメント14原則をまとめたころ(1980年代中盤)ですが、バーナード・M・バスが「変革型リーダーシップ」というものを提唱しました。変革型リーダーシップとは、リーダー(指導者)がみんなと一緒に大きな変化を起こすためにがんばるようなことです。このリーダーは、メンバーが自分の仕事を大切に思えるように助けて、メンバーがもっと良い仕事をできるように、何かを「変えていく」人です。
このタイプのリーダーは、以下のようなことをすると言われています。
- メンバーをやる気にさせる
- リーダー自身がメンバーのよいお手本になる
- メンバーの新しいアイデアを大事にする
- メンバーをしっかり見る(何を得意としているか、どんなことに困っているかをよく見て、手助けをする)
変革型リーダーシップとは、要は、現場に寄り添うようなリーダーシップのこと、とさしあたって解釈しても良いと思います。
デミング博士が指摘する「人の問題」とは、現場で働く人々が自分の仕事に誇りを持てなくなる状況や、仕事をする上での障害が取り除かれていない状態のことを指しています。これらの問題が起きる原因の一つとして、リーダーが現場に寄り添っていないことが挙げられます。
現場に寄り添うリーダーシップがあると、リーダーは現場の課題を理解し、働く人々が直面する問題に対処するための支援を行います。これにより、従業員は自分の仕事に対して誇りを持ちやすくなり、モチベーションが向上します。結果として、品質の向上や生産性の向上が期待でき、「人の問題」は解決に向かうでしょう。
逆に、リーダーシップが現場に寄り添っていない場合、現場の声が無視され、必要な改善が行われないことで、「人の問題」が悪化する可能性があります。
したがって、現場に寄り添うリーダーシップ(変革型リーダーシップ)があれば、「人の問題」は大きく改善される可能性があります。現場の声を聞き、従業員の成長を促進することで「人の問題」が解決され、組織全体のパフォーマンスを向上させることができるのです。