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ビジョンが会社を良くするという幻想 =「ビジョナリー・カンパニー」を批判する(3)

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

多くの人は、ビジョンがしっかりしている会社ほど安定し、成長すると考えがちですが、それは本当に正しいのでしょうか?「ビジョンが会社を良くする」という一般的な考え方に潜む誤解について、3回にわたって掘り下げてみましょう。

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企業の成功の主たる要因「運」を掴むにも、ビジョンは役に立つ

前回は、企業の成功には「運」が重要というカーネマンの話しをしましたが、運に任せるだけで何もしないでいいわけではありませんよね。

では、企業が運を掴むためには、具体的にどうすればいいのでしょうか?

まず、ビジネスチャンスを常に探求する姿勢が大切です。現場の声が迅速に経営層に報告される仕組みを作ることで、潜在的なチャンスを逃さないようにすることができるでしょう。

また、運が向いてきたときに、そのチャンスを掴むためには、変化を起こす決意と意思決定が必要です。運を活かすためには、リスクを取って新しい方向に進む勇気が経営者には求められるでしょう。

また、変化を組織全体で実現するためには、従業員との強い信頼関係が不可欠です。信頼関係があれば、組織は一丸となって変化に対応できるようになります。

さらに、多様な業界や異なる背景を持つ人々とのネットワークを作っておくことも重要です。異なる視点やアイデアを取り入れることで、予期せぬチャンスが生まれることがあります。そして、新しいアイデアや技術を試す文化を育てることも、運を掴むための大切な要素と言えるでしょう。

こうした中でも特に、従業員との信頼関係の形成や、新しいアイデアや技術を試す文化を作る上では、ビジョンが役立つ局面もあるでしょう。したがってビジョンは、成功の主たる要因とは言えませんが、成功のチャンスを高めるための環境づくりにおいては、大いに役立つものだと考えられます。

ビジョンにまつわるリスク

なんやかんやいっても、ビジョンは企業にポジティブな効果を与えるんだというお話しをしきましたが、一方で、ビジョンを設定し、組織に浸透させることにはリスクも伴うことを忘れてはいけません。

まず、ビジョンがあいまいであったり、抽象的すぎる場合、従業員がそれを異なる方向に解釈してしまうことがあります。

例えば「お客様第一」というビジョンに対して、ある部門は「お客様のために、新しい技術や製品を導入し続けよう」を解釈するかもしれませんが、別の部門は「今の製品を安定的に維持しよう」と解釈するかもしれません。この解釈の違いによって、組織内に対立が生じる可能性があります。

さらに、ビジョンが高尚すぎたり、現実的に実現不可能だと感じられる場合、従業員はそのビジョンに対して無力感や不満を抱くことがあります。例えば、「世界中の人々を幸せにする」という理念が掲げられた場合、一部の従業員は「その実現に向けて頑張ろう」と意欲を持つかもしれませんが、他の従業員は「そんなのは無理だ」と感じ、組織内に不満が広がることがあります。

このようなことが起こると、やはり組織内に対立が生まれて、組織が分断される危険性さえあります。ビジョンは組織をまとめ、導く力を持つ一方で、その設定や浸透の仕方次第で、逆に組織を分裂させる要因にもなり得るのです。

このように、ビジョンにはリスクがあることも認識して、その内容や伝え方に十分な注意を払う必要がありそうです。

結局「経営ビジョン」とは何なのか?

「ビジョンが会社を良くするという幻想」というテーマで、3回にわたってお話をしてきましたがいかがだったでしょうか。

経営において複雑で難しい現実に直面したときに、それを理解しやすく、扱いやすい形に単純化しようとする傾向が、経営者というか人間の心にはあると思います。この心の傾向が「経営ビジョン」を重要なものだと、過度に認識してきた可能性があります。

こうした心の傾向は、確かに現実をわかりやすく整理し、戦略を立てる上で役立つ面もありますが、過度な単純化はリスクを伴います。特に「経営ビジョンを明確にして浸透することこそ成功の鍵だ」という一つの要素に過剰に依存することは、経営の多様な側面を見落とす危険があるので、注意をしたいところですね。

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