おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
8月30日、経産省は「令和7年度 税制改正に関する経済産業省要望のポイント」を公開しました。今後の中小企業税制の方向性がわかる資料ですので、主なところを読み解いていきたいと思います。
経産省資料はこちら
「令和7年度 税制改正に関する経済産業省要望のポイント」
中小企業経営強化税制の拡充
中小企業の成長を後押しし、中堅企業への成長ポテンシャルが高い売上高が100億円を超える中小企業(100億企業)の創出を推進するため、中小企業経営強化税制(即時償却又は税額控除(最大10%))を拡充し、100億企業を目指す中小企業に対する上乗せ措置の創設等を行う。
これはいわゆる「経営力向上計画」の認定を受けた企業に対する税制優遇措置の拡充のことだと思われます。これについては8月20日の時事通信の報道でも「中小企業経営強化税制は、認定を受けた経営力向上計画に基づいて中小企業が設備投資を行う際、投資額の10%の税額控除か、投資額全額を費用計上できる「即時償却」が適用される租税特別措置(租特)。経産省は同税制を拡充した上で、継続を求める方針だ。」と報じています。
具体的にどのように拡充されるのかはわかりませんが、「100億企業」を目指すとコミットした企業に対して、税額控除の割合などが引き上げられるのではないかと思います。
地域未来投資促進税制の拡充
地域経済を牽引する中堅・中核企業の成長促進を通じた強靱な産業基盤の構築に向けて、地域経済への波及効果が特に高く期待できる事業の促進を強化すべく、地域未来投資促進税制(通常は、特別償却(40%)又は税額控除(4%))を拡充し、意欲ある自治体が地域の特性を踏まえて戦略的に定める「重点促進分野(仮称)」における設備投資への優遇措置を創設する。
これはいわゆる「地域経済牽引事業計画」の認定を受けた企業に対する税制優遇措置の拡充のことだと思われます。これも具体的な拡充の内容まではわかりませんが、①特定の自治体における、②中堅企業が、③特定の分野における設備投資を行った場合に、特別償却や税額控除の割合が優遇されるのでしょう。
お役所の人たちは、こういう「選択と集中」が大好きですよね。
エンジェル税制の延長
スタートアップに対する資金供給を促す観点から、エンジェル税制について個人投資家による更なる利活用を拡大するため、再投資期間(現行1年)を複数年に延長する。
エンジェル税制とは、スタートアップへ投資を行った個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う制度で、株式の売買で得た利益を同じ年にスタートアップに再投資すると20億円まで非課税となる制度です。
現行制度で優遇措置を受けるには、株式譲渡益の発生した年にスタートアップへ投資をする必要がありました。この期間が短すぎるという課題があったので、複数年(例えば株式譲渡益の発生した翌年にスタートアップへ投資をするような場合)でも税制優遇措置の対象になるようにするのだと思われます。
事業承継税制の拡充
経営者の高齢化の進展等を鑑み、中小企業の事業承継を一層後押しし、生産性向上・成長への支援を強化する観点から、事業承継税制の特例措置について、役員就任要件の見直し等を行うとともに、本税制の適用期間における事業承継の取組等も踏まえ、円滑な事業承継の実施のために必要な措置について検討する。
現行の事業承継税制では、後継者が贈与の日まで引き続き3年以上役員(取締役・会計参与・監査役など)であることが要件になっています。これが緩和されるのではないかと思われます。また、現行では適用期限が2025年度末(2026年3月31日)までですが、これを延長するのだと思われます。
中小企業投資促進税制・中小企業軽減税率の延長
人手不足や物価高騰など引き続き厳しい経営環境において、中小企業における成長や規模拡大を促進するとともに、持続的な賃上げへの好循環を生み出すため、中小企業投資促進税制(特別償却30%又は税額控除(7%))を延長するとともに、中小企業軽減税率(所得800万円まで、法人税率を19%→15%に軽減)を延長する。
中小企業投資促進税制・中小企業軽減税率は、いずれも2024年度末(2025年3月31日)までが適用期限ですが、これを1年間延長するのだと思われます。
中小企業防災・減災投資促進税制の延長
令和6年能登半島地震をはじめ、自然災害が全国で多発する中、中小企業における防災・減災能力の強化が一層重要性を増していることを踏まえ、中小企業防災・減災投資促進税制(特別償却16%)延長する。
これはいわゆる「事業継続力強化計画/連携事業継続力強化計画」の認定を受けた企業に対する特別償却の制度のことです。これも期間を延長するのでしょう。
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の延長
赤字の中小企業であっても賃上げや前向きな投資を引き続き可能とするため、設備投資に伴うを固定資産税の軽減措置の延長等を行う。
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置の延長(所得税・法人税・個人住民税・法人住民税・事業税)のことだと思われます。これも毎年のことですね。中小企業は、取得価額30万円未満の減価償却資産は、全額損金算入できます。