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『経済産業省関係令和6年度補正予算案の概要』から中小企業施策をざっくり解説

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

11月29日、政府が2024年度(令和6年度)補正予算案を閣議決定しました。これに伴って、経産省が補正予算案の概要説明資料を公開しています。この資料には、今年度末から来年度にかけて、新たに国が行う中小企業施策が書かれています。主な中小企業施策について説明をします。

『経済産業省関係令和6年度補正予算案の概要』はこちら

今回の補正予算で行われる多くの中小企業施策の目的は「賃上げ環境の整備」である

今回の補正予算の主な特徴から説明しますが、行われる多くの中小企業施策の目的は「賃上げ環境の整備」です。「賃上げ環境の整備」の一環として、中小企業の生産性向上支援や成長投資支援が位置づけられています。

なぜ今賃上げが求められているかというのは、もう説明しなくても大丈夫ですよね。そしてこの補正予算案は「賃上げ環境を整備」するためにやるものなのです。したがって、これらの施策、特に補助金関係は、申請要件として賃上げが必須とされる可能性が、例年より高いことが想定されます。

中小企業生産性革命推進事業【3,400億円】(昨年度2,000億円)

これはいわゆる「ものづくり補助金」「小規模事業者持続化補助金」「IT導入補助金」「事業承継・引継ぎ補助金」のことです。予算規模が、前年の2,000億円から3,400億円へと大幅に増額になりました。

ただし補正予算案では「売上高 100 億円を目指す成長志向の中小企業・小規模事業者の成長投資をハード・ソフトの両面で支援する。 」という文言が、今年新たに追加となっています。予算が増額となった分は、売上高100 億円を目指す成長志向の中小企業に優先的に配分されるのではないかという気がします。

中堅・中小企業の賃上げに向けた省力化等の大規模成長投資補助金【1,400億円】(前年度:1,000億円)

今年実施された大規模成長投資補助金の継続です。今年は2度公募が行われましたが、かなり狭き門となったようです。事業計画書の体裁を細かく指定されており、おそらくは従業員1人あたり給与支給総額などの指標を応募者間で比較し、その数値による判断に重みがあると思われます。採択企業のデータを見ると、従業員1人あたり給与支給総額については、年率5%以上というものすごい上げ幅が必要な補助金です。額が大きいので(補助上限額50億円。ただし10億円以上の投資が必要)、いろんな意味で目を引いている補助金です。

予算額は1,400億円で、昨年の1,000億円より増額となっています。ただ昨年の経産省の資料には、複数年で3,000億円くらいの規模の施策にするという趣旨のことが言われているので、今年増額した分、来年は規模が縮小する可能性もあります。

中小企業省力化投資補助事業【1,400億円、国庫債務負担行為を含め3,000億円規模】(前年度1,000億円)

今年から始まった、カタログから汎用製品を選んで行う補助金です。いわば「省力化装置版のIT導入補助金」です。あらかじめ事務局が認定をした汎用製品が補助金の対象で、これも来年度に延長されます。

予算は、前年度1,000億円に対して、今年度は1,400億円です。ただし「国庫債務負担行為を含め3,000億円規模」とあります。国庫債務負担行為とは、めちゃくちゃカンタンに言うと、複数年使える予算のことです。昨年度は「中小企業等事業再構築基金の活用」をすることになっていたので、その残金などを含めて、総額で3,000億円ということなのだと思われます。

事業環境変化対応型支援事業【112億円】(前年度112億円)

この事業は、前年に引き続いて行われる事業です。前年はこの事業で、商工会議所などを窓口として、インボイス制度や物価高騰、円安などで困っている企業に対する経営相談会の実施をしました。また、デジタル化診断事業も、この事業の一貫として行われました。今年もほぼ同じことをするのではないかと思われます。予算額も前年と同じです。

中小企業活性化・事業承継総合支援事業【61億円】(前年度52億円)

この事業も、前年に引き続いて行われる事業です。前年はこの事業で、過剰債務を抱えた企業を対象に、中小企業活性化協議会を窓口とした相談や、再生計画策定支援が行われました。また、後継者不在の中小企業に対して、事業承継・引継ぎ支援センターで、事業承継の診断や、M&Aのマッチング支援などもおこなっていました。今年もほぼ同じことをするのではないかと思われますが、こちらの予算額も少し増えています。

中小企業取引対策事業【8.3億円】(前年度8.3億円)

この事業も、前年に引き続いて行われる事業です。端的にいうと、中小企業が大企業などと仕事をするときに、お金のことや契約のことで不公平なことがないように、周知をしたり、実態調査をしたりする事業です。大企業が中小企業に正当な報酬を支払うことが、賃上げにも欠かせないということで、この事業は予算額が前年と変わっていません。

100億企業育成ファンド出資事業【100億円】(新規?)

名称だけ見ると今年度からの新しい事業のようです。内容としては、中小企業のM&A(合併・買収)や新事業展開等を目的とした中小機構の投資ファンド事業のようですので、昨年あった「中小グループ化・事業再構築支援ファンド出資事業【120億円】」が看板をすげ替えたものではないか……という気もします。(昨年までの名称に「事業再構築支援」と入っていたので、それを避けるために名称変更したのではないかと個人的には思います)

もし中小グループ化・事業再構築支援ファンド出資事業の看板をすげ替えただけであれば、予算規模は120億円から100億円に減少です。

地域経済の成長につながる対内直接投資促進及び海外展開支援事業 【100億円】(前年度53億円)

昨年度も行われた施策ですが、今年度は施策名の枕詞として「地域経済の成長につながる」と付け加えられました。

対内直接投資促進とは、例えば、海外企業が日本に進出して事務所や工場を作るようなことを言います。また海外展開は、その反対に、日本企業が海外にモノを輸出したり、事務所や工場を作ることを言います。こうした取り組みを支援するための事業です。基本的にはJETROを通じた相談や、展示会出展などの支援だと思われます。「地域経済の成長につながる」とわざわざ入れて、しかも予算が倍増しているので、地方企業支援に重点を置いて、施策も拡充するのだと思います。

その他

なお、昨年の補正予算であった以下の3つの予算は、今回の補正予算案には見当たりませんでした。

  • 日本政策金融公庫等による資金繰り支援【629億円】
  • 中小企業信用補完制度関連補助事業【71億円】
  • 産業サイバーセキュリティ対策の強化に向けた環境整備事業【5.1億円】

また事業再構築補助金のことと思われる記述もありませんでしたので、事業再構築補助金は第12回公募をもって終了するのだと思われます。

  • B!

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