おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
今話題沸騰中のDeep Researchですが、どのくらいの実力なのかを試してみました。今回試したのはGoogle GeminiのDeep Researchです。ぼくが属する業界である「中小企業診断士」の市場を分析してもらいました。分析内容を一つ一つ検証していきます。(今日は2回目)
前回の記事はこちら
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Gemini Deep Researchを試してみた&実力を検証(1)
おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 今話題沸騰中のDeep Researchですが、どのくらいの実力なのかを試してみました。今回試したのはGoogle GeminiのDe ...
1-2. 中小企業診断士の市場規模・年収・年齢層・男女比
この項目についてDeep Researchの分析結果は以下のとおりです。
指標 値 市場規模 3万人以上 平均年収 501万円~800万円 年間売上の中央値 501万円~800万円 年間売上の平均値 約1,000万円 年収1,000万円以上の割合 34.0% 年齢層 30代・40代が中心 男女比 男性9割以上、女性1割程度 近年は、20代後半から30代前半の若年層の受験者も増加傾向にあります 。これは、従来型のビジネスモデルや雇用モデルが崩れ、既成の枠にとらわれない経営スタイルや業務スキームの構築が求められるようになり、斬新な発想やアイデアを持つ若い世代の力が求められているためと考えられます 。
この年収情報のデータは、直接的には伊藤塾という資格受験校のホームページを参照していますが、伊藤塾は一般社団法人中小企業診断協会による公開データを参照しています。元データのひとつと思われるのは以下の通りです。
結論としては、信憑性のあるデータをDeep Researchは参照していることがわかりますが、なぜ二次情報である受験校のサイトを参照したのか、なぜ一次情報である診断協会の公開したデータを参照しなかったのかは気になるところです。
1-3. 中小企業診断士を取り巻く外部環境の変化
この項目についてDeep Researchの分析結果は以下のとおりです。
中小企業の経営課題の変化: 中小企業は、人手不足、後継者不足、資金調達、デジタル化への対応、生産性向上など、多くの経営課題に直面しています 。
デジタル化の進展: コロナ禍を契機に、中小企業においてもデジタル化が加速しています 。業務効率化やデータ分析だけでなく、ビジネスモデルの変革や競争力強化を目的としたデジタル化も進んでいます 。
政府の支援政策: 中小企業の経営課題解決を支援するため、政府は様々な政策を実施しています。事業再構築補助金、ものづくり補助金、IT導入補助金など、補助金制度による支援 や、税制支援、金融支援なども行われています 。
具体的には、「新型コロナウイルス感染症特別貸付」や「新型コロナ対策資本性劣後ローン」などの金融支援策 、「経営力向上計画」に基づく税制支援や金融支援 、海外展開支援 などがあります。
この部分のソースはM&Aキャピタルパートナーズ(M&A仲介業者)とシーグリーン(人事評価システムプロバイダ)、中小企業庁です。このうち、参照されたシーグリーン社のホームページは、情報の出どころが書かれていません。何かを参考にしたものか、それとも当社の独自の見解か、判断がつかないものになっていますね。参照元となったシーグリーン社のホームページは、基本的には当たり障りのない一般論に終始してはいますが、ところどころで「個人や部門の成果が可視化されれば、組織内に良好な競争環境も生まれます。従業員間で切磋琢磨する風土も醸成され、組織全体のパフォーマンス向上も期待できます」などと、自社の製品(人事評価システム)の有効性を強調するような内容になっています。そうした点では、バイアスのかかった記事だと言えると思います。
ただ、Deep Reseachの分析結果では、「デジタル化の進展: コロナ禍を契機に、中小企業においてもデジタル化が加速しています 。業務効率化やデータ分析だけでなく、ビジネスモデルの変革や競争力強化を目的としたデジタル化も進んでいます 。」と、全体を総括したような内容に昇華をされてはいます。
1-4. 女性中小企業診断士の現状と課題
この項目についてDeep Researchの分析結果は以下のとおりです。
中小企業診断士は男性が9割以上を占めており、女性は1割程度と少ないのが現状です 。しかし、女性ならではの視点や経験を活かしたコンサルティングは、多くの企業から求められています 。特に、女性顧客が多い業界や、きめ細やかな対応が必要な分野では、女性の活躍が期待されています 。
これは診断協会のホームページと、士業求人サイトのホームページを参照しています。後者のホームページは情報の出どころを明記していませんが、書きっぷりから診断協会の公開データに基づいているのかな?という推察はできます。
ただ、診断協会サイトの元データは、診断士の全体データではなく、『平成30年度中小企業診断士第1次試験/第2次試験に関する「統計資料」』とされています。つまり受験生のデータであり、診断士全体のデータではないので、Deep Reseachのこの表現は極めて誤解を招くものと思われます(受験者≠合格者だし、ある単年度の構成比が全体を代表するわけではないので)。
まあ、業界の末席にいる人間としての実感は「ああ、やっぱり男性社会なんだな」という納得感はありますけどね。
1-5. 中小企業診断士の市場価値の低下
この項目についてDeep Researchの分析結果は以下のとおりです。
中小企業診断士は、以前は資格の希少価値が高く、市場価値も高かったのですが、近年は資格保有者が増加し、競争が激化しているため、市場価値が低下しつつあります 。
この結果の参照元は学研の資格情報サイトですね。このサイトも情報の出どころが書かれていません。何かを参考にしたものか、それとも当社の独自の見解か、判断がつかないものになっています。
分析結果の「以前は資格の希少価値が高く、市場価値も高かったのですが、近年は資格保有者が増加し、競争が激化しているため、市場価値が低下しつつあります 。」というのは、業界にいる人間としてはちょっと疑問ですね。はっきりいって、以前からこの資格は市場価値はほとんどありませんよ?公的支援の時に参考にされる程度で、この資格があるから仕事が得られた、などということはありません。(そもそも「以前」が何年前を指しているのかもわかりませんが)
診断士の約半数が企業内診断士ですし(診断協会の公開データ)、そもそも診断士ごとに得意分野が異なるので、競合している印象もないですね。まあ単年度の合格者数がここ20年くらいで倍以上に増えていますので(診断協会の公開データ)、数字だけ見れば競争が激化しているようには見えるかもしれませんけど。
これについてはちょっと分析が甘いかな、という気がします。