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うかつに助言をしてしまったがために、クライアントの信頼を失った話

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

コンサルの役割ってなんだと思いますか?クライアントに助言をすることは役割の一つだとは思いますが、助言が常に有効とは限りません。今日は僕がうかつに助言をしてしまったがために、クライアントの信頼を失った話です。

「今村さんが思いつくことくらい、こっちはとっくにやってますよ」

コンサルとして駆け出しのころの話だから、もう10年ほどまえのことかもしれません。当時僕は、ある製造業の目標管理活動を支援していました。全社年間目標の達成が危うくなってきたので、社長をはじめとする幹部と対策会議を開いた時のことです。

未達目標は、売上目標でした。いかにして売上を向上させるか、という話し合いの場だったのですが……。

今後は医療機器や航空宇宙分野がトレンドですので、そういうところにアプローチしてはどうでしょうか
3年ほど前に医療機器メーカーの〇〇という企業に営業にいって、××という理由で取引には至りませんでした。
では、炭素繊維強化プラスチックを使った加工に着手しては?今後伸びていくと言われています
昨年、親会社の開発部門の人と共同で、炭素繊維強化プラスチックの加工実験をやりましたよ。××という理由で、今の技術では加工が難しいとわかりました
じゃあ発想を変えて、商社と組んでみては?こちらの窓口は商社一本で、商社が営業してくれますよ
商社は利益率が低いから、〇年前に契約を打ち切ったんですよ。というか今村さん、思い付きで助言してません?(怒)
そ、そんなつもりじゃ……
こっちだって必死に経営してるんですから、いろいろ手は打ってきているんです。今村さんが思いつくことくらい、こっちはとっくにやってますよ(怒)
あわわわ……?

アイデアの9割は空振りに終わる

どうですか?いかにも上から目線で、現場の実情を知らないコンサルっぽいですよね?

これは根拠も何もない単なる僕の実感ですが、こういう感じ(≒思い付き)で出した助言の9割は空振りに終わると思って間違いありません。そして助言が的外れだと、クライアントに「この人、ホントに大丈夫?」と不信感を抱かせることになります。助言はコンサルの役割の一つではありますが、有効な助言をするというのは非常に難しいのです。

当時の僕には、助言の難しさがわかっていませんでした。何十ページにも及ぶ分厚い提案書を書いて「僕は戦略コンサルだ」などと息巻いても、その提案書はクライアントの引き出しの中に眠るのがオチなのです。それは、部外者のコンサルタントが思い付きで考えた机上の空論であるということはさることながら、そのアイデアを発出した経緯をコンサルタントとクライアントが共有していないので、納得感がないのですね。

有効な助言をするには、クライアントの助けがいる

「アイデアを発出した経緯をコンサルタントとクライアントが共有していない」とはどういうことでしょうか。例えば先の僕の例で言うと、「なぜ今村さんは急に医療機器やら航空宇宙やら言い出したのだろう?」という背景が共有できていない、ということです。

僕の発言の背景は「新聞やリサーチ資料などに書いてあったから儲かるに分野に違いない」なのですが、クライアントの実感としては「医療機器やら航空宇宙の仕事は思っているほど美味しくない」という認識を持っていました。

というのも、その企業が現在加工しているモノと比べると、医療機器やら航空宇宙分野の仕事は多品種少量すぎます。段取り替えが多くなり、設備の稼働率が下がる、という懸念を持っているのです。無論、それを何とかしてやり遂げるのが経営改革というものなのですが、今話しているテーマが「今年の売り上げ目標の達成のために何ができるか」なのにもかかわらずターゲット業種を変えるという壮大な話にまで飛躍してしまっているので、話がかみ合わないのです。そりゃ、クライアントに不信感を持たれてもしかたないことです?

ではどうすればいいのかということですが、コンサルタントの態度としては「訊きまくる」しかないでしょうね。これまでどんな売上向上のためにどんな取り組みをしてきたのか、その取り組みがうまくいかなかった原因は何か、うまくいかなかった原因への対策としてどういうことをしてきたか、この1年間でできそうなことはどの程度のことか、ということを訊きまくることでしか、アイデア発出のための基盤は共有できません。このプロセスを省き、いきなり助言から入ってしまうと、僕の失敗例のように、助言が空振りになるだけではなく、信頼まで失ってしまうのです。

極端に聞こえるかもしれませんが、顧客が思いつきもしないような有効な助言を外部のコンサルタントがすることは、ほぼ不可能だと思っています(よほど長年にわたって入り込んでいれば別でしょうが)。また、そういう助言をしても実行に移されることはないという意味で、助言する必要もないと思っています。解決の方向性はクライアントが持っているのです。大幅に経営の方向性を見直すようなアイデアも、解決のためのうち手がなくなったとクライアントが実感できなければ、その必要性は認識されないのだと思います。

  • B!

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