おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
先日公表された2019年実施ものづくり補助金1次公募分析をします。今日は小規模型の採択率分析です。
小規模型の応募数と採択数は非公表
ものづくり補助金は過去7年間にわたり公募が行われています。平成25年度補正からは毎年「小規模型」という類型での募集が行われています。しかし、小規模型での採択率は、中小企業庁や全国中小企業団体中央会からは公表されていません。
小規模型の応募数と採択数から採択率を求めようと思うと、2つの方法があります。一つは日刊工業新聞の記事から、そしてもう一つは神奈川県の採択動向からです。
日刊工業新聞の記事で確認する
日刊工業新聞では近年、採択発表時に採択動向に関する記事を公表しています。その中で、小規模型の応募数と採択数に触れている記事があります。日刊工業新聞のサイトで記事検索をした結果、下記の3記事が見つかりました。
小規模型(同500万円)は3412件の申請に対し1619件を採択した。
(「ものづくり補助金、18年度補正7468件」日刊工業新聞 2019/6/28)
小規模型(補助上限500万円)は243件の申請に対し82件を採択した。
(「ものづくり補助金、18年度補正1次公募早期審査分332件 採択倍率3.3倍」日刊工業新聞 2019/3/22)
小規模型は4920件の申請に対し2107件を採択した。
(「ものづくり補助金1次採択、55%増9518件 来月2次公募」日刊工業新聞 2018/6/29)
このデータが正しいと仮定して話を進めますが、ここから採択率は次のように求められます。
今年(H30・2018年補正1次公募)の早期採択分をのぞき、一般型の採択率よりも小規模型の採択率のほうが低いですね。特にH29・2017年補正1次公募は、採択率に17.5ポイントもの差があり、(検定まではしていませんが)有意に差がありそうです。
一方、今年(H30・2018年補正1次公募)の早期採択分では小規模型の採択率が高くなっていますが、1次締切と2次締切を合算したH30・2018年度補正1次の総合結果としても、小規模型の採択率が低いです。(これは誤差の範囲かもしれません)
神奈川県の採択結果から推測する
もう一つの方法としては、神奈川県の採択結果から推測する方法があります。なぜ神奈川県かというと、神奈川県は他の都道府県と違い、申請者番号を類型ごとに細分化して割り当てているようだからです。これは推測にすぎませんが、当社が考える神奈川県の申請者番号命名規則を記します(違う解釈があれば遠慮なくご指摘ください)。
左から7桁目で、小規模型が判別できるのではないかと当社では考えています。また、一意の番号の最後の番号(H30年度補正1次公募であれば3014124084)を申請数と仮定します。つまり、神奈川県のH30年度1次公募における小規模型の申請数を84件とみなします。もしかしたら85件かもしれないし、86件かもしれないし、87件かもしれませんが、ここでは便宜上、87件だと仮定します。その上で、3014124を持つ採択企業数をカウントすると45件でした。
ここから考えられるのは、神奈川県の小規模型の採択率は、45÷86=52.3%と推定できます(計算の便宜上、早期採択分は除外しています)。一方、ものづくり技術一般・革新的サービスの申請数(仮定)464に対して採択数が236となり、採択率は50.9%でした。
同様の計算を平成29年度補正で行ったところ、神奈川県の小規模型申請数(仮定)133に対して採択数が73となり、採択数は54.9%(仮定)となります。一方、ものづくり技術一般・革新的サービスの申請数(仮定)481に対して採択数が293となり、採択率は60.9%でした。
全国的には小規模型のほうが採択率低めとみられるが、地域差・公募間差がある可能性も
上記の分析からいえる仮説ですが、全国的には小規模型のほうが採択率が低めであるという仮説が導かれるでしょう。しかしH30補正1次公募の神奈川県の結果(推定)も考慮すると、このような傾向は地域差や、公募間の差がある可能性も否定はできません。
ここからは個人的な主観となりますが、小規模型は小規模企業の申請も比較的多く(その証拠に、神奈川県の小規模型と思われる申請者番号には、法人番号のない個人事業主が多くみられた)、審査項目における体制面や財務面での評価が得られにくかった可能性があります。ですので、類型が小規模型だから有利とか不利とかなのではなく、小規模型の申請においては審査項目を満たせる申請が一般型よりも少なかったと推定するのが適切だと思われます。