おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
5S活動は単なる「お片付け」ですが、そのお片付けがなかなか計画通りにはいかないものです。そのような時、わざと途中で打ち切って、やり残しを作ることで、最後までやり遂げるよう仕向けるテクニックがあります。矛盾しているようにも思えますが、どんなテクニックでしょう?
モノを一気に捨てようとしない。「あかふだを貼る」ところでいったん止める
5Sの一番最初のSは「整理」のSです。整理とは「いるものといらないものを区別して、いらないものを捨てる」という定義ですね。
「捨てることくらいすぐできるだろう」と思われがちですが、この「捨てる」というのはとても難しい作業です。いる・いらないの判断は人によって違うのですり合わせが必要ですし、いらないものを運び出すための人手も必要です。ですので、一気にものを捨てようとすると、その作業量が莫大であることに途中で気づいて挫折をしてしまいます。で、「空いているときにやろう」となりがちなのですが、これだけの作業量のものを「空いているときにやろう」といって、実際にやり遂げられた例を僕は知りません。そうして5Sは挫折していくのです。
ではどうするか?ということですが、作業を小分けにして、途中で無理やりに打ち切ってしまうという方法があります。例えば
みたいに宣言するのです。
ちなみに「あかふだ」とは、整理のテクニックの一つである「あかふだ作戦」で使うものです。いらないものの目印として赤い札や赤いテープを貼ることです。後で捨てるための目印にします。
その後の作業も小分けにして、一気に終わらせようとしない
その後の作業も一気に終わらせようとはしません。あかふだを貼った後はどうするかというと
- 1カ月くらいあかふだを貼ったままにしておく
- あかふだを貼ったけれども、やはり捨てないでおこうと思うものがあれば、その1カ月の間であかふだをはがして現場復帰させる(そこでまた止める)
- しばらくして、建物の裏手あたりに、あかふだを貼ったものをみんなで搬出をする(そこでまた止める)
- 後日廃棄物運搬業者を呼んで、トラック等に積み込む
といった作業を、小分けにして実行します。これは、本来業務で忙しい手をできるだけ止めないでやるためという理由もありますが、実はツァイガルニク効果を狙っているという理由もあります。
ツァイガルニク効果とは
Wikipediaによると、ツァイガルニク効果は次のように説明されています。
ツァイガルニク効果(ツァイガルニクこうか、Zeigarnik effect)は、人は達成できなかった事柄や中断している事柄のほうを、達成できた事柄よりもよく覚えているという現象。ツァイガルニック効果、ゼイガルニク効果、ゼイガルニック効果とも表記する。
人間の心理とは不思議なもので、達成したものよりも、未完成なものや中断中のものをよく覚えているのだそうです。途中で止めてしまうと気になってしまうんでしょうね。皆さんは例えば子供の頃に「勉強に行き詰って部屋の掃除をし始めると、部屋の掃除を完璧に終わらせないと気が済まないようになる」ということはありませんでしたか?これもツァイガルニク効果の一つです。
これを5Sでも応用したのが上記の小分けテクニックです。一気に捨てようとするとしんどくて挫折しがちですが、小分けにして未完成で中断した状態を何度も作ると、途中で止めたということが記憶に強く残ります。そうすると、早く終わらせないと気が済まないという動機付けとなり、捨てるという作業がはかどるようになります。
5Sくらいすぐできるだろうと思い、一気呵成にやりたくなる気持ちは確かにあると思います。しかし人の心理を巧みに使いながら、忙しい本業の負担にならないようなテクニックもあるのです?