おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
経営者は、自社が抱えている問題について、どうすれば改善するか?というアドバイスをコンサルタントに求めることがあります。しかしアドバイスというものはかんたんなようで、細心の注意を払わなければなりません。僕の失敗談を共有したいと思います。
「できるだけ社員に考えさせてほしい」というA社において
顧問契約をして毎月訪問していたA社では、社長の意向として「今村さんがアドバイスをできるだけせずに、社員に考えさせてほしい」というものがありました。これは経営者からよく求められる要望です。僕が答えを出して会社が良くなったとしても、その会社の実力として蓄積はされませんからね。
その会社では、管理者たちと僕が一緒になって、毎月目標に対する進捗確認をしていました。進捗が思わしくないときは、どうすればいいかを会議の場で検討するのですが、僕は社長の意向にしたがって、極力口を出さないようにしていました。しかし、解決が難しい問題に直面していたということもあり、なかなかこれといった対策が出てこないのです。
時間は刻一刻と過ぎていきます。僕も時間が気になったこともあり、アドバイスしないようにと思いながらも、「こういう考え方はできませんかね?」と考えるための切り口を提示しました。しかし答えを急ごうとしていたこともあり、かなり誘導尋問的というか、「質問という形式をとった実質的な指示」だったと言ってもよいでしょう。
なんとか対策は決まり、僕はA社をあとにしました。しかし「ちょっと強引に誘導しすぎたかなあ」という反省が残りました。
「答えが聞きたい」というB社の社長に対して
A社への訪問の翌日、B社の社長とあって打ち合わせをする機会がありました。B社はA社とは全く別の会社です。このB社の社長はどちらかというと「どうすればいいですか?」とアドバイスを僕に求めてくるタイプの社長さんです。
しかし、前日にA社を支援した際の反省点として「ちょっと答えに誘導しすぎた」と思っていた僕は、その考えに引きづられてしまいました。具体的な方法について述べるのは適切ではないと思った僕は
「いやあ、それは御社で考える問題ですよ」
と突き放してしまいました。
するとB社の社長は、すこしムッとした表情になります。そりゃ当然ですよね。このように突き放されるのであれば、一体何のために僕に対して顧問料を払っているんだと思われても仕方がありません。B社の社長は大人ですので、そういうことを面と向かって僕に言うことはありませんが、その後の打ち合わせでB社の社長は、失望したような、半分なげやりになったような態度を見せました。
そもそもA社とB社はなんの関係もない。他社での反省点を別の他社の支援に安直に適用しない
そんなB社の社長の顔色を伺いながら僕は「ああ……失敗したな……」と思い、前日のA社の訪問後に輪をかけて失望してしまいました。
そもそもA社とB社はなんの関係もない別の会社なのです。A社の社長の要望(できるだけ考えさせてほしい)と、B社の社長の要望(アドバイスが欲しい)というのは、それぞれの会社の固有の要求事項なんですよね。それを「昨日はA社で失敗したから、今日はB社で気をつけよう」と安直に反省点を適用してしまったのだと思います。
もちろんコンサルティングの現場では、失敗は反省は避けられません。都度自分のふるまいを改善をして、よりよいコンサルティングに活かさなければならないのは当然のことです。しかし他社の支援のやりかたをそのまま別の他社に持ち込むことにはもっと注意しなければなりませんでした。これは、他社での経験が先入観となって、別の他社の現実を歪めて見てしまう可能性があるからです。先入観で判断することが行き過ぎると、その会社で起きている問題の本質を見誤ってしまうだけではなく、クライアントからは「この人はなにか的はずれなことを言っているようだ」「どうもウチの会社のことを正しく見てくれていないようだ」という形で信頼を失ってしまいますからね。
こういった「転移」のようなことは、コンサルティングの現場ではしょっちゅう起こります。僕も人間ですので、いまだに先入観を完璧に排除することはできません。先入観をするかもしれないという可能性に立った上で、慎重に対応をするしかないんですよね。