ものづくり経営革新等支援機関

SBIR制度の見直しは「ものづくり補助金」にも影響を及ぼすか

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

皆さんは「SBIR制度」ってご存知ですか?もともとは米国のスタートアップやベンチャー企業支援プログラムなのですが、日本でも導入されている省庁横断的な施策です。ものづくり補助金もSBIR制度における「特定補助金等」という位置づけなのですが、この日本版「SBIR制度」が見直しされようとしています。

SBIR制度とはなにか?

日本版SBIR制度は、中小企業者やこれから事業を立ち上げようとする人の、技術革新を支援する国のプログラムです。7省庁が参加しており、これらの研究開発に関する補助金・委託費等の中から、中小企業に交付できそうなもの(しかも技術革新につながるようなもの)を「特定補助金等」と指定する制度です。

で、この「特定補助金等」の採択をうけると、補助金がもらえるのはもちろんのこととして、日本政策金融公庫による低利融資が受けられたり、公共調達の入札が有利になるというメリットがあります。

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/sbir/2019/191107sbir.pdf

しかしSBIR制度の課題は山積

ところがですね、このSBIR制度には課題がたくさんあります。事実上、各省庁が足並みをそろえずに好き勝手に補助金をバラまくだけ、といった制度に成り下がっています(こんなことを言っていいのか?)。本場のアメリカでは事業化へのステップをきめ、それぞれ明確なマイルストーンを決め、政府機関がサポートをするという仕組みになっているようなんですけどね。

また、日本版SBIR制度は、中小企業の「改善」に対する補助金になっていて、本当の意味での(社会をひっくり返すような)技術革新の支援には至っていないという指摘もありますね。大学等の先端的な研究機関のイノベーションが対象になっていないんですよね。

そういう事情もあり、SBIR制度が見直されようとしています。「日本版SBIR制度の見直しに向けた検討会」が協議を重ね、「中小企業技術革新制度(日本版SBIR制度)の見直しの方向性」というレポートを11月に出しています。

制度見直しの方向性と「ものづくり補助金」

上記のような課題を解決するために、「日本版SBIR制度の見直しに向けた検討会」が今のところ打ち出しているのが下記の方向性です。僕も正直なところ理解がふじゅうぶんなところが多いのですが、ざっくりと言って、次のような方向性と理解すればいいのではないかと思います。

  • 国がちゃんと政策課題(こういう技術を開発してくださいというもの?)を明確に提示する。(アメリカのSBIRではそういう仕組になっているのだが、日本ではそうはなっていなかった。
  • 省庁がバラバラに施策を実行するとややこしいので、省庁統一プログラム(省庁横断的にプロセスを標準化した補助金施策?)を、現状の「特定補助金等」とは別に、新たに設ける

他にもいろいろあるんですが、全体的な印象としては、米国のSBIR制度により一層近づけるという内容だと僕個人として解釈しています。(しかしこれまで20年近くも何をやってきたのだか……)

 

https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/kenkyukai/sbir/2019/191107sbir.pdf

 

で、ものづくり補助金にどのような影響があるか、ということですね。「ものづくり補助金」はSBIR制度における「特定補助金等」に指定されています。このあたりの事情も、ものづくり補助金で「革新性」が重要視される背景になっているんですね。

もしかしたらものづくり補助金が、このSBIR制度改革の対象となる可能性が無きにしもあらずではないかと思います。特に今年(2020年)実施のものづくり補助金は、基金化されるなど、従来の制度とは大きく変わることが見込まれています。給与支給総額年率平均1.5%増や地域別最低賃金を30円上回る事業場内最低賃金の設定など、国の政策実現を意識した申請要件も新たに設定されそうです。

このような動きを考慮すると、「ものづくり補助金」の審査項目も大きく変わるかもしれません。省庁統一プログラムがどういうものなのかは具体的にはわかりませんが、他の省庁の補助金と足並みを揃えた審査項目や審査プロセス・体制などになる可能性もゼロとは言えないでしょう。(もちろん、何も変わらないという可能性もありえます)

より一層、イノベーションの実現が重視され、従来は(ぶっちゃけていうと)単なる製造工程の改善にとどまっていたような内容は採択がされなくなるかもしれません。どうなるのかはわかりませんが、わかることとしては、今、国の中小企業政策は大きな転換点に差し掛かりつつあり、その流れの中で、「ものづくり補助金」のような個別の施策の実施条件も変わる可能性がある、ということですね。

補助金制度は国の政策課題を達成するために行っているということは覚えておきたい

せっかく使い勝手のよい施策を勝手に変えるとはけしからん!と思う人もいるかもしれません。しかし国の補助金制度というのは、単に「頑張る中小企業を応援するために交付する」という性質のものではありません。国として実現したい目的・目標があり、それを実現するための手段として補助金交付という方法を選択しているのです。

したがって、今のやり方が、国として実現したい目的・目標を達成するための手段として妥当ではないと判断されれば、実施条件は変わる可能性は常にあります。

補助金を申請する企業も、僕のような支援者も、そのことは常に念頭においておき、本当にこの補助金に応募することが自社のためになるのか(国の目的・目標に、自社を無理にあわせようとしていないか)という視点は、忘れずにもっておきたいです。

  • B!

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