1月22日、第196回通常国会が招集されました。本国会では、平成29年度補正予算が2月1日に、平成30年度当初予算が3月ごろに成立すると見込まれており、その後様々な中小企業支援策が施行される予定です。
国会召集にあたり、首相施政方針演説が行われました。
この中から、中小企業生産性向上にまつわる内容を見てみましょう。
キャリアアップ助成金について
中小・小規模事業者の生産性向上に関し、首相は冒頭で次のように述べています。
五年間のアベノミクスにより、日本経済は、足元で、二十八年ぶりとなる、7四半期連続プラス成長。四年連続の賃上げにより、民需主導の力強い経済成長が実現し、デフレ脱却への道筋を確実に進んでいます。本年、就職を希望する大学生の九割近くが、既に内定をもらって新年を迎えることができました。過去最高の内定率です。正社員の有効求人倍率も一倍を超え、正社員への転換が加速しています。
他方、中小・小規模事業者の皆さんは、深刻な人手不足に直面しています。キャリアアップ助成金を拡充して、人手確保を支援することと併せ、生産性向上に向けた攻めの投資を力強く支援します。
キャリアアップ助成金について触れられていますね。平成30年度(2017年度)当初予算では、キャリアアップ助成金の拡充が見込まれています。具体的には、正社員と非正規雇用の格差是正に向けて正社員化や待遇改善を進めた企業に対して、総額923億円の予算を確保(前年比1.4倍)。賃金規定や諸手当を共通化した場合の助成額も拡充される見通しですね。
IT導入補助金、先端設備等導入計画、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金について
続いて、下記4つの補助金、税制優遇措置について触れています。
三年間で百万者(原文ママ)のIT導入を支援します。自治体の判断により、固定資産税をゼロにする新たな制度をスタートします。積極的に取り組む自治体では、ものづくり補助金や持続化補助金による支援を重点的に実施します。
IT導入補助金は3年間の取り組みであることが明言されていますね。ちなみにIT導入補助金だけではなく、政府は今後3年間を生産性向上のための重点期間と位置付けており、ものづくり補助金や小規模事業者持続化補助金も3年間は継続する可能性が高いと思われます。(先端設備等導入計画も、3年間の施策であることが予算案でも明記されています)
下請法について
補助金・助成金についての情報が飛び交う中、比較的地味なトピックではあるのですが、下請法のことについても触れられています。実は下請法の運用基準の見直しも、生産性向上や働き方改革の一環と位置づけられているようです。仕事のしわ寄せを受けやすい下請業では、違法残業や過労死などがおきやすいですからね。
下請取引の適正化に向け、製造業や小売・流通などの分野で、業界毎(ごと)の自主行動計画の策定を進めます。六万社を対象に改善状況の調査を行い、厳格な運用を確保することで、取引条件の改善に努めてまいります。
中小企業庁では「下請Gメン」という組織を2017年4月に立ち上げました。これまでは書類調査が主でしたが、年間2000社以上の下請中小企業に対して訪問ヒアリング調査を行っていく予定だといわれます。下請事業者に直接聞き取り調査を行うことで、発注業者の不法行為を一層取り締まろうという方針なのでしょう。
事業承継、特許料の減免について
日本の中小企業のうち127万社が後継者不在であり、2025年には6割以上の経営者が70歳を超える「大廃業時代」になるのではないかといわれています。それに対応するために、事業承継を税制面から優遇することを検討しています。
「中小・小規模事業者の特許料の半減」というキーワードもあります。国際的にみると、日本の特許出願件数は低いレベルであり、その中でも特に中小企業の知財活用が進んでいないのだそうです。それを打開するための施策だということですが、特許料の問題ではないように思いますね。(主に人手の問題ではないかと……)
経営者の高齢化が進む中で、事業承継税制を抜本的に拡充し、相続税を全額猶予といたします。併せて、中小・小規模事業者の特許料を半減し、オンリーワンの技術やノウハウを守り、次世代に引き継いでいきます。
中小・小規模事業者の生産性向上を進めることで、賃金上昇、景気回復の波を、全国津々浦々へと広げてまいります。
平成29年度補正予算・平成30年度当初予算はいつ可決・成立
平成29年度補正予算は2月1日ごろ、平成30年度当初予算は3月ごろといわれています。補正予算案の国会審議は「素通り」に近いといわれており、最近の傾向だと予算案が提出されてから1~2週間程度で可決・成立しています。(当初予算は約2カ月かかっている)
いよいよ動き出しそうですね。