おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
2020年実施ものづくり補助金では、これまでの審査項目と比べ、事業化面②にも変更が見られます。変更の意図は何か?審査対策上気をつけることはあるのか?について推察しました。
そもそも「事業化面」という審査項目は何か?
「事業化」という用語は、「ものづくり補助金」でよく使われる用語です。「ものづくり補助金」は革新的な開発を行う企業のための補助金ですが、開発したものが販売され、市場に流通し、その企業の一つの柱にまでなることが期待されています。審査項目の「事業化面」では、企業が行う革新的な開発が、販売に繋がり、収益を上げることが期待できるかという点について評価をします。まあ、有り体に言うと「マーケティング的にどうか」という評価項目と言えるでしょう。
事業化面②における、過去の公募要領の記述の違い
R1年補正(2020年実施)の事業化面②
事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。クラウドファンディング等を活用し、市場ニーズの有無を検証できているか。
H30補正(2019年実施)2次公募の技術面①
事業化に向けて、市場ニーズを考慮するとともに、補助事業の成果の事業化が寄与するユーザー、マーケット及び市場規模が明確か。
おわかりになるでしょうか。「クラウドファンディング等を活用し、市場ニーズの有無を検証できているか」という一文が、R1年補正(2020年実施)の事業化面①で追加になりました。
「クラウドファンディングの利用」は、過去のものづくり補助金における加点項目であった
「クラウドファンディングの利用」は、H30(2019)年補正ものづくり補助金における加点項目でした。以下にH30(2019)年補正ものづくり補助金2次公募の公募要領を見てみましょう。
どうして2019年からクラウドファンディングが加点になったのか?ということについては、2019年の6月に閣議決定された「成長戦略実行計画」の影響があるのだと思われます。2019年の6月に決定された「成長戦略実行計画」では、「6.中小企業・小規模事業者の生産性向上 」の具体策として「デジタル化」が挙げられています。そこに下記のような記述があります。
①デジタル実装支援
デジタル化による生産性向上の取組が普遍的に広がるよう、ものづくり補助金やIT導入補助金等による支援を引き続き推進するとともに、創業時等におけるクラウド会計をはじめとするデジタル化の普及促進やクラウド・ファンディングなどのデジタルツールの活用を採択時の加点要素とする補助金の範囲の拡大を検討する。また、個社単位のデジタル化のみならず、データレンディング、補助金交付決定の電子記録債権化によるつなぎ融資サービス、EDI関連サービス、支援機関によるデジタル化促進などの普及支援策を検討する。
(赤字筆者)
事業化面②では、クラウドファンディングをしないと評価されないの?
気になるのは「クラウドファンディングをしないと評価されないのか?」という点ですね。確かに国の戦略(成長戦略実行計画)を読むと、クラウドファンディングが必須のようでもあります。
しかし、公募要領には「クラウドファンディング等」とあるように、クラウドファンディング以外の手段も含まれているように読めます。肝心な部分は「クラウドファンディングか否か」ではなく、そのあとに続く一文だと当社では見ています。そのあとの一文とは「市場ニーズの有無を検証できているか」ということですね。
「市場ニーズの有無を検証できているか」
確かにクラウドファンディングで資金を集めると、その集まった程度でニーズの有無を確認ができます。これと同様のイメージで「やろうとしている新しい事業に対するニーズがあると、確実に言える」ことを立証できる何かを記述することが求められていると言えるでしょう。
従来の審査項目でも、当然にニーズの有無は問われていたわけですが、R1年補正(2020年実施)からは「検証できているか」ということが新たに審査項目として評価されるということです。「ニーズはあるんじゃないかな?」という漠然とした記述ではなく、数字やユーザーの具体的な声などを用いて、より具体的に市場ニーズがたしかに存在することを立証していかなければならないのでしょう。その点で、ニーズに対する記述は、従来よりもシビアになったと、当社では見ています。