ものづくり経営革新等支援機関

2020年実施ものづくり補助金2次締切 「データポータル」の採択状況データを読む

https://imamura-net.com

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

6月30日より、ものづくり補助金総合サイトでは「データポータル」という採択状況データをまとめています。そこに公開された各種データを読み、傾向がつかめるかどうか確かめてみます。(当記事で分析していないグラフは過去記事をご覧ください)

ものづくり補助金総合サイト「データポータル」とは

「データポータル」については、総合サイトで次のように説明されていますね。

令和元年度補正予算事業・令和2年度補正予算事業のこれまでの申請及び採択状況のデータをまとめています。幅広い業種、様々な規模、初めて申請する方等にも幅広く採択の機会があることがご覧いただけます。

申請件数の推移

まず最初のグラフは「申請件数の推移」ですね。

ちなみに、特別枠のA申請とかB申請とかC申請とかは、下記の定義です。

特別枠の類型

【A類型】サプライチェーンの毀損への対応

【B類型】非対面型ビジネスモデルへの転換

【C類型】テレワーク環境の整備 補助率

まず驚いたのが、特別枠を複数(2つ以上)適用として申請できるんだってことですよね。しかも443者もいたなんて。公募要領に書いてたっけ?
A類型とB類型とを2つ以上適用して採択された場合、補助率はどちらのものが適用されるんでしょうね……。(事務局も想定していなかったんじゃないかな……)
どうせなら類型ごとに採択数や採択率を公開してほしいですよね。そうじゃないと傾向がつかめない。
本当だね。でもこれをみていて思うのは、特別枠もB類型とC類型は少なめってことですね。やはりものづくり補助金の要件で「非対面型ビジネスモデル」とか「テレワーク」に関係付けるのは難しいですよね。

事業計画書の作成時間

次のグラフは事業計画書の作成時間です。

これも定義が難しいデータだね。「事業計画の作成時間」ってなんだろうね。構想をねっている時間も含まれるのか、それとも実際に文章に落とし込んでいる時間なのか。どちらにしても正確に計測している申請者なんてほとんどいないだろうしね。まあ参考程度のデータですよね。
「練りに練ったほうが採択率が高くなるのか?」ということを立証しようとしたのかもしれないですけどね。採択率はなんとなく右肩上がりぽくありません?
うーん。誤差の範囲って気もしますけどね。ちゃんと統計分析(検定)をすれば有意差があるかわかるんだろうけど。
最頻値と中央値が40時間とあるし、40時間の層の採択率(58.9%)が1次・2次総計の採択率(58.6%)と同等なので、まあこのくらいの時間を費やしていれば合格レベルにはなんとか仕上げるという一つの目安にはなるんでしょうね。いうまでもなく、時間を費やしたから合格レベルになるということは必ずしも言えないわけですけどね。

申請のタイミング

これ、なにか意味のあるグラフなのかな?って思いますよね。締切直前ほど申請数が多いので気をつけてねってことでしょうかね。
採択率も一緒に載せていて、7日以上前と締切日当日の採択率に有意差がありそうな感じがるするけど、有意差があったとしてもおそらく疑似相関だよね。
早すぎる提出もギリギリの提出も準備不足(申請書の作り込み不足)の恐れがあって、それが採択率の低下につながる可能性がある、と理解するほうが自然ですよね。取り組みは計画的に行いましょうね。

補助金の申請額

これはなんだか大きな差がありそうなグラフだね。申請額が大きい(≒投資額が大きい)ほど採択率が高くなると読めますよね。
全体の6割以上が750万超の申請ですね。これはどう読むべきか……。投資額が大きいほうが、生産性向上や革新性にじゅうぶんな説得力を持つ、という見方もできますかね。僅かな投資でそこまで革新性や生産性向上に資するの?って審査員に思われるかもしれないというか。
IT業界なんかは少額の投資で革新的な新サービスの開発ができたり、一攫千金が狙えたりはありうると思いますけどね。
確かにそうなんだけど、それをじゅうぶんに訴求できていないのかもしれないし、もしかしたら審査側にバイアスがあるのかもしれないしね。
業種の違いが投資金額の違いっていうのはあると思うけどね。1,000万円クラスの投資が必要なのは、やはり製造業が多いだろうし(あとは歯科医か)。そういう業種ほど審査項目を満たしやすいので、結果として大型投資案件ほど採択されやすく見えている、という疑似相関の可能性ですね。

支援者の関与

これは理解に苦しむなあ。支援ありをなぜ報酬額で分類して公開したのか……というのはちょっと分析側の意図のようなものを感じるよね。
報酬が高いほど採択率が高くなる、というふうに読めるよね。
読めますね。ある程度は支援者の存在が有効だというのはわかるんだけど、現場の実感だと、報酬が高いからといってその支援者が優秀とは限らない、って気がするんですねどね。
本当は高い報酬を払ってコンサルに手伝ってもらってるけど、「支援なし」とか「支援あり/報酬なし」で回答しているというケースもありえるし、実際の採択率を反映していない可能性はあるでしょうね。
データが少なくて極端に出ているという可能性も捨てきれないね。(採択率の折れ線グラフがきれいな右肩あがりになっているので可能性は薄いかもしれないけど)

申請までの支援期間

これは支援を受けた事業者限定の回答ですね。正規分布っぽくなっていて、現場の実感や直感とそれほど違和感のないデータですね。
えっ?このグラフの分析はもう終わり?(だんだん面倒くさくなってきてるな……)

加点項目の数

これも「まあそうなるだろうな」というグラフですね。加点項目を満たすほど採択されやすいという。
そうだね。平均採択率以上の可能性を享受したいのであれば、最低でも3つは満たしたいということですね。0個だと2割程度しか採択率がないんだなあ。
でも3つ満たすのも大変ですよ。3次締切では加点項目は下記の6項目ですからね。経営革新計画の承認を取るのも大変だし、賃上げ加点なんてめちゃめちゃハードル高くないですかね。

① 成長性加点:「有効な期間の経営革新計画の承認を取得した(取得予定の)事業者」

② 政策加点:「小規模事業者」又は「創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)」

③ 災害等加点:

③-1:「新型コロナウイルスの影響を乗り越えるために設備投資等に取り組む事業者(特別枠の申請者)※」※ 特別枠で不採択となり、通常枠で再審査される場合に加点されます。

③-2:「有効な期間の事業継続力強化計画の認定を取得した(取得予定の)事業者」

④ 賃上げ加点等:

④-1:「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均2%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+60円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」、又は、「事業計画期間において、給与支給総額を年率平均3%以上増加させ、かつ、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+90円以上の水準にする計画を有し、従業員に表明している事業者」

④-2:「被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合」

たしかにね。「事業継続力強化計画」はもうマストといってもいいだろうね。これから見ると「小規模事業者」「創業・第二創業後間もない事業者(5年以内)」の加点も影響が大きいんだろうなあと思いますね。中堅規模の企業は、経営革新計画の承認取得と、特別枠での申請を検討しないと苦しいかもしれません。
加点項目も重要ですけど、もちろん中身(審査項目の充足度合い)も重要ですからね。加点項目だけに目を奪われないように気をつけてください。

 

  • B!

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