おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
10月9日ロイター通信は、下村自民政調会長が「家計への再度の給付金については、一律給付も対象限定の給付もいずれも念頭にない」と述べたと報じました。特別定額給付金10万円二回目・再給付の考えがないことを与党幹部が言及したのは初めてのことではないかと思います。
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『予備費不足なら年明けに補正、家計への再給付検討せず=自民政調会長』
ロイター通信記事の該当部分を引用します。
政府は、コロナ対策として家計への一律10万円給付金を実施したが、下村氏は「考え方としては、岸田前政調会長が提案した所得制限をかけての給付という考え方が正しいと思う」と述べた。ただ「デジタル化の遅れで給付金の受け取りに3カ月も要し、スピード感に欠けていたことを考えれば、必要な時点で届かなければ意味がない」とした上で、「限定給付も一律給付も今時点では考えていない」と述べた。
(10月9日ロイター通信記事より。赤字筆者)
菅首相は公開討論会で、特別定額給付金10万円二回目・再給付を否定せず
一方、菅首相は、9月12日に開かれた自民党総裁選候補による公開討論会(日本記者クラブ主催)で、特別定額給付金10万円の二回目・再給付の可能性について否定はしていませんでした。菅氏が言及した箇所は、下記の動画の1:16:50ごろの発言と思われます。追加の経済対策について記者から質問を受けたことに関して、菅氏の発言を以下に文字起こしします。
まずですね、政府としては雇用はしっかり守っていく。それと同時に、事業が継続できるような、そうしたことに今全力で取り組んでいます。そのために給付金、あるいは融資……これ無担保、無利子の融資とかで、ここはしっかりつないでいきたいと思います。ただ、これで収まらなければ、そこは徹底して、次の手というのは打っていきます。そして雇用とその事業が継続できるように、そこはまず政府として責任をもって行っていきたい。こう思います。
(給付金の追加ということもありうるかという記者の質問に答えて)もちろん、必要であれば、政府としてはこのような状況ですから、しっかり対応していきたい。こう思っています。
(9月12日 自民党総裁選候補による公開討論会(日本記者クラブ主催)より。赤字筆者)
「給付金の追加もありうるのか」という記者のダイレクトな質問に対して、「必要であれば、対応していきたい」と、菅首相は発言しています。ただし、給付金の追加支給を絶対にやるとも、検討を進めているとも言っていません。菅氏の発言の文脈としては、あくまでも今取り組んでいる施策でつないでいくのが前提であり、それでも政府が「収まらない」「必要だ」と判断した場合には何らかの対応をするという、極めて一般論に近い発言だと感じられます。具体的に検討をしていないという点では、下村博文・自民党政務調査会長の発言とも、矛盾はないでしょう。
政府は特別定額給付金10万円二回目・再給付に積極的ではないのかもしれない
ここからは当社の推測です。政府は特別定額給付金10万円二回目・再給付に積極的ではないのかもしれません。理由は、給付金が消費にまわらず、貯蓄に回っている可能性があるためです。
9月18日、日本経済新聞で『家計の資金余剰、18.3兆円で過去最大 給付金で貯蓄増』と報じられました。記事によると、家計の貯蓄の余裕を示す「資金余剰」の金額は18.3兆円と過去最大でした。これは新型コロナウイルスの感染拡大による消費活動の低迷や政府の給付金が影響したとした上で、日経は「家計にカネが滞留し続ければ経済成長の足取りが弱まりかねない」と述べています。つまり、給付金を交付したが、貯金にまわっているので、本来の目的であった消費拡大の効果が薄い、ということでもあります。
貯蓄にまわり、消費拡大につながらないというのは、3月の時点で麻生財務相が懸念していたことでもあります。3月24日の日本テレビ報道によると、麻生財務相は、現金を給付しても貯蓄に回ってしまう可能性があり、商品券のほうが消費を促す効果が高いという見解を述べています。
すべては今後の動向次第
ただし、これはあくまでも現状です。菅首相が公開討論会の場で言及しているように、必要性が感じられる状況(たとえば緊急事態宣言の発令など)となれば検討される可能性はあるでしょう。また、今年の4月に連立離脱までほのめかして一律現金給付を主張した公明党の意向もあるでしょう。すべては今後の動向次第だと思われます。