おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
中小企業庁経営支援部長が、事業再構築補助金のできた背景について動画で説明をしています。要は「新しいことをしないとジリ貧になるので、新しいことをするための後押しの制度」ということです。
公式動画「事業再構築補助金のご案内 1.背景編~本補助制度 誕生のお話し~」
中小企業庁経営支援部長の村上敬亮氏が、事業再構築補助金という制度ができた背景について動画で説明をしています。約20分の動画です。
「事業再構築補助金のご案内 1.背景編~本補助制度 誕生のお話し~」の要約
上記の動画の内容を、当社なりに要約をします。
まずOECDのデータによると、製造業やサービス業において、新製品や新サービスを投入した企業の割合は、先進国で日本が最も低いことがわかっています。
日本企業は、営業利益に対する設備投資や研究開発費もの比率も低下していっています。一方で企業は内部留保が増加しており、こうした状況が経済の停滞や、ひいては貧困率の上昇を招いているという推測。原因は「新しいことをしなくなったから」と、中小企業庁では認識しているようです。
中小企業は一般に系列の上(セットメーカー)に言われたとおりに仕事をしているが、系列取引が崩れはじめている(例えば航空機産業など)。中小企業は系列に頼らずに経営をしなければならなくなってきています。これはコロナの影響のように見えますが、実は日本の人口が減少し始めたころから始まっていた話でもあります。これがコロナの影響で、業種によってはいきなり大きな影響を受けるようになりました。
これまでは系列の上(セットメーカー)が、何を売るか、誰に売るか、どう売るかを考えてくれていました。中小企業は言われたとおりに仕事をしていればよかったのですが、系列から放り出された中小企業は、独力で戦略(何を売るか、誰に売るか、どう売るか)を考えなくてはならなくなりました。しかしそういうことを考えてこなかった企業にとって、それを考えることは難しいことでもあります。
チャレンジをするには(新しく大きな取組をするには)オーナー経営では無理があります。オーナー自身が持っている資金だけで大きな工場を作ったりすごい研究開発をすることは無理。他の人からの出資もしてもらい、融資も得られやすくするようにしないといけません。
しかし現状では、なかなかこうしたチャレンジ、新製品を売り込むのは難しいものです。(医療機器部品を作りたいと思っても、すぐには買ってもらえないし、そのための出資や融資も得にくいのが現状。補助金を使って新しい商品を売り込むきっかけにしてほしい。今回の補助金は、可能性に対する支援でもあります。
フランス料理店が、韓国料理をデリバリーしている店に転換している事例もあります。デリバリー用の食材とレシピをセットにして、業務量レシピ・食材として飲食店におろすサービスが伸びています。そういうサービスを利用してフレンチがコリアンを手掛けたら、結構売上が伸びているという事例があります。そうしたサービス(他者)の力を利用して新たな取組をやることも方法の一つ。グループの力を使って次に繋がる業態に変わっていくことができます。
こうした取組を支援するのが事業再構築補助金。小さい企業から中堅・中小企業まで、いろんな事業再構築の支援を想定しています。
この動画を見ての当社の勝手な意見(毒吐きも含めて)
1990年代以降、日本経済が低成長に甘んじてきた原因は複雑であって、経済学者やエコノミストの間でも意見は分かれています。ただ、ミクロでは企業のイノベーションが不可欠という意見はだいたい共通していると思います。(もちろんミクロとしての個々の企業によるイノベーション実現だけではなく、マクロ的政策(特に資源のシフト)との両輪でなければいけませんが)
そういう意味では、経産省や中小企業庁の政策は(僕の知るここ十数年に限ってですが)概ね一貫しており、中小企業の経営革新(イノベーション)を支援することに力を注いでいます。有名なものづくり補助金もそのための施策の一つですが、サポイン、経営革新計画や新連携といった経営革新を推進するための政策も数多くあります。事業再構築補助金も、こうした流れの中に位置づけられるものであって、つまりは経産省や中小企業庁にとっての"王道路線"の一つなのだと思います。
動画の中で中小企業庁経営支援部長の村上敬亮氏も言及していますが、ミクロレベルでのイノベーションの必要性は、コロナ以前から(日本の人口が減少し始めたころから)始まっていた話でもあります。これがコロナの影響でよりいっそう顕在化したのでしょう。コロナはあくまでもこうした構造的かつ根本的な問題を露呈したに過ぎません。経産省や中小企業庁が手を打ちたいのは、単なるコロナ対策というレベルではなく、中小企業の抜本的な経営改革をコロナを機に――しかも1兆円という中小企業庁自身の年間予算の10倍もの予算をつぎ込んで――一気呵成に促進したいということなのだと当社ではこの動画を見て思いました(でもこれってショック・ドクトリンじゃないの?という気もしますが)。
こうした背景から政策が打ち出されていますので、この背景に沿った取り組みであることが審査でも暗に求められるものだと思います(もっともこの背景が個々の審査員にまで浸透するかどうかは別問題ですが)。ただ、根本的な経営革新の促進が背景にあるのならば「今までに製造したことのない新製品・新サービスじゃないとダメ」というような要件をつけるのではなく、もっと前から必要性を感じて経営革新に取り組んでいる企業も(それでいて苦戦している企業も)あるわけですから、そういうところにも支援をしてほしいものです。
企業として気をつけないといけないのは、新しいことはイコール難しいことでもあり、経産省や中小企業が促したいような、業種・事業・業態まで根本的に変えるような経営革新には相応のリスクが伴うということです。確かに補助金は根本的な経営革新のリスクを下げるものではありますが、リスクをゼロにするものではありません。補助金をもらっていきなり大きく投資をしてスタートするのではなく、投資なく手持ちの資産でできることからはじめるスモールスタートという選択肢もあります(というかむしろスモールスタートが鉄則だと思います)。
失敗したとしても責任を取るのは、国ではなく、経営者自身です。お前が言うなと言われそうですが、「国が補助金を出すから」と踊らされることのないように気をつけたいものです。