おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
今日はISO9001:2015年版、箇条4の全体像と、箇条4.1「組織及びその状況の理解」について解説をしたいと思います。ここはISO9001に基づく品質マネジメントシステム構築を行うための準備、すなわち出発点でもあります。
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箇条4「組織の状況」の全体像
箇条の4は、4.1から4.4までありますね。
4.1では、社内外の課題を挙げなさいと言っています。そして4.2では、利害関係者、これには顧客だけではなく、仕入先や協力会社、地域などがありますが、こうした利害関係者が自社にどんなことを求めているか、期待しているかを挙げなさいと言っています。そして、この4.1や4.2で挙げたことを考慮して、マネジメントシステムの適用範囲を決めます。具体的には、自社のマネジメントシステムには何の製品、サービスを含むのか、どんな活動を含むのか、ということを決めるわけです。そして4.4では、その適用範囲において、品質マネジメントシステムという、ISO9001で定められている管理の仕組みを作って、実施、維持し、継続的に改善しなさいということを求められています。
4.1~4.3は、いわば品質マネジメントシステムを構築するための準備段階と言えます。そうした準備を経て、4.4でマネジメントシステムを作って運用することを求めている、いう関係と理解してください。
4.1「組織及びその状況の理解」については、箇条6の「リスク及び機会」のところ、そして箇条9の「監視・測定・分析及び評価」「マネジメントレビュー」と関係があります。箇条6.1で「リスク及び機会」を定めるのですが、そのときに4.1で挙げた課題を考慮しなさいと規格は言っていまし、箇条9.3マネジメントレビューでは課題に変化があったか、あればどんな変化があったのかをトップマネジメント(社長など)に報告しなさいと規格が求めています。
4.1「組織及びその状況の理解」について
まず規格にどんなことが書いているか、というかということですが、4.1では
組織は、組織の目的及び戦略的な方向性に関連し、かつ、その品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える、外部及び内部の課題を明確にしなければならない。
組織はこれらの外部及び内部の課題に関する情報を、監視し、レビューしなければならない。
とあります。
これだと難しくてよくわかりません。つまりどういうことなのかを、私の解釈としてわかりやすくお話すると、企業というのは「経営ビジョンや経営計画の達成をめざして経営をしているわけです。品質マネジメントシステムを運用してよい結果を出そうとしているのも、ひいては経営計画を達成するためにほかならないんですが、これをやり抜こうとするときに、我が社の色んな面に影響を与える課題(よく話し合われる話題やテーマ)ってなんですか?」ということを訊いています。そして課題に関する情報を、監視してレビューしてね、と言っています。
課題ってなんだ?というのをもうちょっと詳しく説明します。「課題」すなわち英語の規格本文では"issue"ですが、これについてはISO9001はもちろん、用語集であるISO9000にも定義がありません。つまり英単語の"issue"のニュアンスがそのまま使われていると考えてよいと思いますが、英単語の"issue"のニュアンスを簡単にいうと、よく話し合われたり、議論されたりするテーマや問題のことですね。日本語のニュアンスの「課題」や「問題」というと、なにか解決することを目指すものというニュアンスがあると個人的にはあると思うんですが、issueはもうちょっと幅広というか、必ずしも解決すべきものとも限らないようです。また、規格の4.1の注記1では、好ましい状態も好ましくない状態も「課題」には含まれる、と書いていますね。
課題には「課題には社内に関する課題と、社外に関する課題」があります。先程の箇条4の全体像のところでもちょっと例を挙げましたが、社内の課題とは、組織体制、技術力、雇用等などの、社内の事柄に関する話題やテーマのこと。外部の課題とは、市場環境、同業他社のサービスの技術・品質などの、社外(お客さんや競合、社会全体、技術の動向、法律の動向など)の事柄に関する話題やテーマのことです。この課題を挙げるための着眼点です。これは個人的な見解で、規格に書いていることではないのですが、課題を挙げる時は「既によく話題なっているようなことを挙げるのが基本的にはわかりやすい」と思います。もちろん、これから将来に話題になってくるだろうというのも課題なんですけど、まずはよく話題になっていることから考えてみてください。
そして最後。話題になっているテーマってたくさんあると思うんですが、挙げるときは「品質マネジメントシステムの意図した結果を達成する組織の能力に影響を与える課題」だけでOKです。品質マネジメントシステムをちゃんと運用して、よい成果を出すために、社内の能力(人とか設備とかノウハウとか)に関係してくるものだけでよい」ということですね。あまり関係のないことで、話題になっていることってあると思うんですよ。例えば「うちの会社、ワクチン休暇ってあるの?」みたいなことは話題になりやすいんですけど、これが品質管理と関係がないようであれば、そういうものは省いてもよい、ということですね。