おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
10月12日、自民党は衆院選に向けた公約を発表しました。中小事業者の支援として「事業再構築補助金等大幅拡充」「グリーン・デジタルトランスフォーメーション補助金(仮称)創設」を公約に掲げました。
公明党の衆院選公約はこちらから
自民党政策パンフレット
政策BANK
事業再構築補助金の拡充と運用改善
政策BANK8ページ目に中小企業に対する政策がまとめられていますが、その筆頭に事業再構築補助金の拡充と運用改善に触れています。
コロナ禍の影響を受ける中小企業・小規模事業者の事業継続の支援に万全を期すとともに、積極的に事業再構築に取り組む中小企業を支援し、足腰の強い中小企業の構築を推進します。中小企業・小規模事業者の新分野展開や業態転換を支援するため、事業再構築補助金を拡充し運用を改善します。
事業再構築補助金は令和2年度補正予算で執行されており、今のところは2022年1月頃に実施予定の5次公募が最終公募となる見込みです。ここからは推測ですが、衆院選後の経済対策として補正予算を編成し、そこに事業再構築補助金を来年度にも実施するための予算を組むことを拡充と呼んでいるのではないかと考えられそうです。また「運用の改善」というのは、現行の要件の見直しなどのことを指している可能性がありそうです。「改善」ですから、素直に読めば、要件が緩和されると解釈ができそうですが、実際にはどうなるでしょうか。
事業承継税制や中小企業M&A税制、事業承継・引継ぎ補助金
続いて、政策BANKの8ページには下記の記述があります。
中小企業の円滑な事業承継やM&Aを後押しするため、事業承継・引継ぎ支援センターによる相談対応、事業承継税制や中小企業M&A税制、事業承継・引継ぎ補助金等による支援を推進します。
これらも現行制度ですが、税制措置の延長・拡大や、事業承継・引継ぎ補助金(補正予算に基づくほうの施策)の延長等のことを指しているのではないかと考えられます。なお中小企業M&A税制というのは、経営資源集約化税制のことを指しているのではないかと思います。
生産性革命補助金(ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金)の拡充
中小企業・小規模事業者の成長・海外展開を促進するため、生産性革命補助金を拡充し、設備投資、販路開拓、IT導入を推進するとともに、新商品・サービスの開発・販路開拓の支援等を実施します。
生産性革命補助金とは、ものづくり補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金の3補助金の総称です。一般型は令和元年度補正予算で執行中であり、当社の計算が正しければ来年までは予算が確保されているはずです。したがってここで言う「生産性革命補助金の拡充」とは、低感染リスク型ビジネス枠の拡充のことではないかと推察されます。
DX税制やIT導入補助金
DX推進を通じた中小企業・小規模事業者の新たなビジネスモデル構築のため、商工会・商工会議所等を通じて、DX税制やIT導入補助金、「ミラサポplus」等を活用し、伴走型支援を進めます。
これも既存施策ですが、拡充を図るということなのかもしれません。
下請取引の適正化
最低賃金の引上げに対し、業況が厳しい業種やパート多雇用企業への配慮と支援を強化するとともに、賃金上昇分を価格転嫁できるよう下請取引の適正化等に取り組みます。○下請業者への取引価格のしわ寄せを防ぐため、監督体制を強化し、下請取引の適正化を進めるとともに、業界による自主行動計画の策定を加速させます。また、大企業と中小企業の連携強化を目指す「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業増加に向け、働きかけを強化します。
これも従来からの政府の路線と変わりがありません。2020年12月の成長戦略会議で、当時の菅首相が「中小企業の足腰を強くするための支援を強化します。さらに大企業と中小企業のパートナーシップを強化します。」と発言しています。中小企業の生産性は2000年以降向上しているものの、生産性の伸びを販売価格に転嫁できていないので、利益につながっていないというデータがあります。これでは中小企業の健全な成長が促せないので、大企業や発注先による中小企業に対する下請法違反取引を監視するというのは、従来からの流れです。
なお『「パートナーシップ構築宣言」の宣言企業増加に向け、働きかけを強化します』とありますが、パートナーシップ構築宣言をしていることが補助金申請の要件、または加点幅の大きな加点項目となる可能性が感じられます。
約束手形の廃止
中小企業・小規模事業者が受け取る約束手形については、5年後の利用廃止に向けて、まずは約束手形の支払い期間を60日以内へ短縮化し、更に小切手の全面的な電子化も行います。
約束手形を2026年までに廃止をするのは、今年3月に行われた「約束手形をはじめとする支払条件の改善に向けた検討会」で話し合われたように、既定路線となっています。約束手形は支払いサイトが長く、中小企業の資金繰りに大きな影響を与えていることから、中小企業を取り巻く取引条件の改善のために、経産省・中小企業が廃止に向けてこれまでも動いてきました。
私的整理等の利便性の拡大のための法制面の検討
私的整理による事業再構築を円滑化するため、債権者保護に配慮しつつ、私的整理の利便性の拡大に向けた法制面の検討を図ります。
これも今年6月に公表された政府の新成長戦略に盛り込まれたものであり、政府の既定路線です。手続きが重く複雑な法的な破産処理ではなく、金融機関同士の協議等で簡便かつ低コストに事業の再生に取り組める私的整理を行いやすくするための法整備のことを指しています。企業と取引金融機関の話し合いに基づく私的整理は、法的整理に比べて事業の継続をしやすかったり、企業価値の毀損が少なかったりする特徴があります。
フリーランスとの契約の法制面の整備等
“人”への投資を強化します。フリーランスとして安心して働ける環境を整備するため、事業者とフリーランスの取引について法制面の整備を早期に行います。また、コロナ禍で影響が生じている非正規雇用の方々を中心に、失業なく労働移動できる支援策を検討します。
今年3月に経産省が「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」(案)を取りまとめましたましたが、フリーランスとの契約の法制面の整備等もこれの延長線上にあるものでしょう。
中小企業政策に関しては、安倍・菅政権を忠実に引き継いでいる
以上、自民党の中小企業政策についての公約を見てきましたが、全て政府がこれまで実施・検討していたことの延長線にあるものばかりです。報道されている持続化給付金と家賃支援給付金の再受付についても、政策パンフレット、政策BANKのどちらにおいても触れられていません。したがって新政権になったとは言えども、中小企業政策に関しては、安倍・菅政権を忠実に引き継ぐものだと言えるでしょう。(持続化給付金と家賃支援給付金の再受付は、公明党に花を持たせるつもりなのかもしれませんが)
また、先日公表された公明党の衆院選公約とも同じような内容になっています(特に事業再構築補助金の拡充に関しては)。与党が政権を維持した場合、来年度も事業再構築補助金が実施される可能性が高まったと言えそうです。