おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO9001:2015の規格解説シリーズ、今日は箇条6の最後の項目である、6.3「変更の計画」について解説します。どういうケースで品質マネジメントシステムの変更をすることになるのか、また計画的に手はずを整えるということは、具体的にどういうことを指すのかについて、説明したいと思います。
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箇条6.3「変更の計画」の位置付け
まずは箇条6.3の位置付けを見ていきましょう。箇条6は、リスク・機会の分析や品質目標を定めることを求めていますが、これらの出発点は箇条の4.1課題や、箇条の4.2利害関係者のニーズ・期待でしたね。実は今日のテーマである箇条6.3も、こうした課題や利害関係者のニーズ・期待がきっかけとなって、マネジメントシステムを変えなきゃいけないという状況が起きることがあります。
今のわかりやすい状況でいうと、コロナでいろいろ大変ですよね。例えば飲食業だと、緊急事態宣言が出て時短営業とかお酒の提供の自粛が求められていますよね。そうなると売上はさがってしまうので、テイクアウトとかデリバリーとか、そうした新しいことをして、今の乗り切ろうとしているお店はたくさんあります。このあたりは、箇条4.1と4.2と関係してくる部分です。「コロナで大変だから今のままじゃいけない。テイクアウトでもやらなきゃ」という課題が出てきますし、場合によってはお客さんから「大将のところでテイクアウトとかデリバリーもやってよ~」みたいなニーズが出てくるでしょう。会社を取り巻く環境が変わると、課題やニーズも変わってきます。そうなると、料理が液漏れしないような容器を新たに調達することも必要でしょうし、液漏れしないような梱包の仕方も考えないといけないですよね。もしかしたら食中毒のリスクは、店内飲食よりも高くかもしれませんし、その対策も講じないといけません。
こうした経営環境の変化、ニーズの変化というものがきっかけとなって、品質マネジメントシステムの変更の必要性が生まれてくるので、4.1や4.2が出発点となっていると考えることもできそうですね。品質マネジメントシステムの変更の必要性が生まれてくるのは、他にもきっかけがあります。例えば箇条9で求められているマネジメントビューがきっかけになることもあります。
この箇条6.3は、ISO9001が2015年版になってから、かなり詳しく記述されました。品質方針のところでも説明しましたが、この品質マネジメントシステムというのは、企業の目的・戦略・ビジョン、そうしたものを実現するためのツールという位置付けなんですよね。企業の目的や戦略というのは、今回のコロナのようなことが起きると大きく変化する可能性があるので、そうした企業の目的や戦略の変化に応じて、品質マネジメントシステムもちゃんと計画的に変えなさいと言う意味で、こうした具体的な要求事項になったと言われています。すべては企業の目的や戦略の実現のために、こうしことをするんだ、ということですね。
箇条6.3「変更の計画」の要求事項
では、箇条6.3の要求事項を見てみましょう。品質マネジメントシステムを変えなきゃいけないとなったときには、a)からd)のことを考慮して、計画的に手はずを整えなさいと言っていますね。a)からd)は、変更に対する計画の着眼点と言えます。つまりa)からd)に書かれていることを明確にして、変更に取り組んでねということですね。
a)は変更の目的とそれによって起こりうる結果を考えなさいと言っていますが、先程のテイクアウトの例だと、目的は「コロナで飲食店が大変だからデリバリーをやって売上を確保する」ということになるでしょうし、その結果はいろいろありますけど、「テイクアウトのニーズがあるので売上が回復する」ということもあるでしょうし、「お持ち帰りの時に食べ物が液漏れしてクレームになるかも」ということもあるでしょうし、「持って帰ったものをお客さんが冷蔵庫に入れず、放ったらかしにして後で食べてしまったので食中毒になるかも?」というのもあるでしょう。こういったことを考えてねと言っているわけですね。
b)は品質マネジメントシステムの完全性をちゃんと保ちなさいということですから、テイクアウトを始めるにあたって、一つの例で言うとチェックリストみたいなものも用意したほうがいいかもしれませんし、チェックリストがちゃんと記入されているかどうかを確認することも欠かさずにやるんですよ、みたいなことを言っているわけですね。
c)資源の利用可能性は、変更にともなういろんな作業に必要な資源を投入しなさいと言っていますので、テイクアウトの事業を始める準備をする人を確保することなんかが該当しますね。
d)は責任・権限の割当なので、テイクアウトの事業を始める準備をする人が、どんなことをするのか、また上司のお伺いなしに自分の判断でどこまでやっていいのかを決めてあげなさいよ、と言っています。こうしたことをちゃんと考えた上で変更作業をやってね、いきあたりばったりでやらないでねと言っているわけですね。