おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO9001:2015 各箇条解説シリーズ、今日は箇条8.5.2から8.5.6までを一気に解説したいと思います。とても常識的というか当たり前のことを規格も言っていますし、非常にイメージしやすいと思います。
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箇条8.5.2~8.5.6の位置付け
それではまず、今日説明をする箇条8.5.2~8.5.6の位置付けを見てみましょう。
箇条8「運用」は、製品やサービスの作り込みの部分で、PDCAの中でもdo(実行)の核に当たる部分です。箇条8.5は、細かく6つの箇条から成り立ちます。
今日説明する8.5.2は製品やサービスに問題が発生したときなどのために、その原材料や使用部品、もしくはその製品やサービスがどういうところに配達されて使われたのかなどを追跡できるようにしなさい、ということですね。
8.5.3は、お客さんなどから預かったモノを壊したりなくしたりしないようにしなさいと言っています。
8.5.4は、例えば中間在庫のように、一時的に作業を中断して保管しないといけない場合にはこうしなさいと言っている部分です。
8.5.5は、製品やサービス提供後、保証やメンテナンスなどの要求があればそれを守りなさいということです。
そして8.5.6は、実際に製造やサービス提供を開始したあとに、何かを変更しないといけなくなった場合の管理について述べています。
8.5.2「識別及びトレーサビリティ」
では箇条8.5.2を説明しましょう。8.5.2は「識別及びトレーサビリティ」です。
識別というのは、製品や部品、材料などを特定するためのものです。一般的にはシリアル番号やロット番号などを製品や部品に付与して、管理しています。なぜ識別をする必要があるかというと、それはトレーサビリティを確実に行うため、といってもよいでしょう。
トレーサビリティとは、これはJIS9000にも定義がありますが、その部品や製品が、いつ、どこで、誰が、どんな作業をして作られたのか、どこで使われているのか、検査の結果はどうだったのかなどを追跡できることを言います。
一例ですが、航空機に使われるひとつひとつの部品は、材料確認結果、製造、検査、出荷に至るまでの全作業を記録することになっています。これを、その飛行機が退役するまでんの長い間、保管・管理することが求められています。なぜこんなことをするかというと、事故などのトラブルがあったときに、その原因を突き止める必要があるからですね。
もし、そうしたトレーサビリティが不完全であり、「原因は調べられませんでした」みたいなことになると、もうその会社は社会的信用を一気に失ってしまいます。というわけで、製品や部品を識別し、トレーサビリティを確実にするのは、安全を守る上でも当然必要なことではありますが、自社を守る上でも大切なことなんですね。
この8.5.2は、そんな重要な「識別及びトレーサビリティ」についての要求事項です。
まず最初の点ですが、必要であれば、製品・サービスを識別できるようにしなさいと言っています。まず識別しないといけないのは、製品やサービスの状態です。製品・部品を検査して、良品と不良品の識別しましょうということですね。製造及びサービス提供の全過程において、とありますから工程内の検査であろうが、最終の出荷前検査であろうが、良品と不良品を識別し、不良品が紛れ込まないようにしなさいということですね。また良品か不良品かの識別だけではありません。検査やチェックが済んでいるのか、それとも検査前なのかという識別も必要なケースがあるでしょう。そうでないと、検査をしていないのに、次の工程に送られてしまったりしますからね。
そしてこの要求事項のもう一つの点ですが、トレーサビリティが要求事項になっている場合のことです。つまり、その部品や製品が、いつ、どこで、誰が、どんな作業をして作られたのか、どこで使われているのか、検査の結果はどうだったのかなどを追跡する必要があるときのことを指しています。そのようなときには、アウトプットについて一意の識別を管理し、とあります。これは、シリアル番号やロット番号を付与するようなことだと考えるとわかりやすいでしょう。そして、いつ、どこで、誰が、どんな作業をして作られたのかという情報を記録しなさいということですね。
箇条8.5.3「顧客又は外部提供者の所有物」
この要求事項はそれほど難しくなく、規格を読めばすんなりと理解できると思います。
お客さんから預かっているものなどがあれば、注意して扱いましょうという、ごく常識的なことを言っています。この要求事項は、お客さんから預かっている物に限らず、外部提供者の所有物も含んでいます。サプライヤーから預かっている検査用の機器や治具などがあれば、そういうのも注意して扱う必要があります。
ところで、顧客の所有物については、箇条8.2.1の「顧客とのコミュニケーション」でも触れられています。8.2.1で、どういうものを、いつまで預かり、どのように管理するか、ということをお客さんとのコミュニケーションの中で明らかにして、そしてそのとおりに8.5.3で管理をする、というイメージでしょうか。
箇条8.5.4「保存」
この要求事項も難しくありません。
現場では、良品が汚れたり破損したり、取り違えられたりしないように保存しておきなさいということですね。製品や仕掛品の仮置場や倉庫、そして運搬時において、汚れたり破損したりするリスクがあるかどうかを分析して、そのリスクに応じた処置をとる、という管理をする必要があります。注記を見ると「伝送」という言葉もありますが、これはインターネットを通じてデータなどを送るときのことを指しています。情報セキュリティにも注意を払う必要があるでしょう。
箇条8.5.5「引き渡し後の活動」
製品やサービスを提供したらそれで終わり、ということはありません。メンテナンスや不具合があった場合の補償など、製品・サービスを納めたあとで対応をしないといけないことも数多くあります。それに関する要求事項です。
まず前提としては、箇条8.2.3「製品及びサービスに関する要求事項のレビュー」で、引き渡し後の活動に関する要求事項もレビューしているはずですね。その要求事項を満たしなさいということです。
引き渡し後の活動がどのくらいの程度で行うのかを決めるには、ここにあるa)からe)までのことを考慮しなさいと言っています。考慮しなさいという言い回しですので、ここに書いているa)からe)までを全部やる必要はなく、考慮した結果、除外するということも可能です。
特に確認をしておきたいのは、a)の法令・規制要求事項ですね。車もそうなんですが、エレベーターとか作業現場のクレーンなどは、法令点検が義務付けられています。こうした法令や規制要求事項がある場合は、それも考慮して引き渡し後の活動の程度を決める必要があります。
8.5.6「変更の管理」
箇条8.5の最後の項目は、8.5.6「変更の管理」です。
実際に製造やサービス提供を開始したあとに、何かを変更しないといけなくなった場合の管理について述べています。
これは、製造業ではよく言われる「4M変更管理」のことと言っても良いでしょう。4Mというのは、Man, Machine, Method, Materialの頭文字を取っていて、それぞれ人、機械・設備、作業方法、原材料のことを指します。なお、4Mにもう一つ、Measurement(測定)を加えて、5Mと呼ぶこともあります。
こうしたものが変更になると、製品の不具合が出やすくなるので、不良がでないようにしっかり管理をしましょうというものですね。例えばですが、生産現場で急に一人病気などで止むことになったとき、、別の現場から応援を呼ぶことがありますよね。そうした場合は、作業に慣れた人から、それほどなれていない人への作業者の変更になりますので、不良が起きやすくなります。
そのように、急遽作業者の変更をしないといけなくなった場合は、作業者を変えても大丈夫かどうかのレビューをします。そして、変えてもいいと判断したならば正式に許可をします。作業者を変えるにあたってのなにかの条件、例えば30分ほど作業方法の確認のためのレクチャーをする、などという処置が必要であれば、その処置も行います。こうしたことを記録しておきなさいという文書化の要求もありますね。