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ISO9001:2015 10.3「継続的改善」とはなにか

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

ISO9001:2015各箇条解説シリーズ、今回はいよいよ最後の箇条10.3「継続的改善」です。今回は継続的改善とはなにか、そして何を継続的に改善し続けなければいけないのかということを、わかりやすく説明します。

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箇条10.3の位置付け

まずは箇条10.3の位置付けを見てみましょう。箇条10「改善」は、箇条4以降で起きた不適合や目標の未達に対して、改善をしなさいと定めている項目です。

まず箇条10.1では、改善一般に対する全体的な要求をしています。そして箇条10.2では、要求事項に適合しない製品・サービスが見つかった場合、処置・再発防止をどうするか?という具体的なことについて定めています。そして今日のテーマである箇条10.3では、品質マネジメントシステム(つまり管理の仕組み)を継続的に改善することで、その適切性、妥当性、有効性を高めていきましょう、と言っています。

「継続的改善」とはなにか

規格要求事項を説明する前に、「継続的改善」とはなにかについて話をしておきましょう。ISO9001の原文は英文なので、英文を正しく解釈することで、「継続的改善」の正しい意味がわかります。

「継続的改善」という言葉は、ISO9001の英語の原文ではContinual Improvementと書かれています。これがISO的には正式な言葉ですね。これを日本語で「継続的改善」と訳をあてたわけです。

ところで日本語でいう「継続的」を示す英単語としては、Continualという英単語のほかに、Continuousという英単語もあります。日本語ではどちらも「継続的」と訳されるので、ContinuousであろうがContinualであろうが、どっちも似たような意味だろうと思いがちですが、実はニュアンスが違うんですね。
Continuousという言葉は、中断することなく一定期間にわたって発生することを指すんだそうです。したがって、Continuousなimprovementという言葉だと、このグラフのように、右肩上がりに、一直線に、改善が進んでいく、というニュアンスになります。一方、ISO9001の原文で使われている英単語Continualは、ある事柄が一定の頻度で起こることをいうんだそうです。これもグラフで示すと、あがったり、停滞したり、時には下がったりもするけれども、一定の周期で徐々に上がっていく、みたいなニュアンスがあります。

つまりどういうことかというと、ISO9001のいう「継続的改善」は、右肩上がりに一直線に何かを良くしていくというのではなく、毎日毎日コンスタントに改善を積み重ねて、徐々に効果(パフォーマンス)をあげていくということを意味しています。長い目で見たときに効果(パフォーマンス)が向上していればよしとしていて、非直線的であっても構わない、ということですね。

ですので、ISO9001が求めている効果は、短期的な視点ではなく、長期的な視点で評価する必要があります。例えば5年とか10年スパンで、毎年きちんとデータを取って、そのデータがどんな形になってきているか、傾向はどうかみたいなことを把握する感じでしょうかね。短期的に目覚ましい効果が出ていなくても、長年をかけて徐々にでも改善の効果があがっているならば、それはよい傾向だと判断できるでしょう。

箇条10.3の規格要求事項

それでは箇条10.3の規格要求事項を解説します。箇条10.3は分量も少なくてシンプルですね。

組織は、品質マネジメントシステムの適切性、妥当性及び有効性を継続的に改善しなければならない。

組織は、継続的改善の一環として取り組まなければならない必要性又は機会があるかどうかを明確にするために、分析及び評価の結果並びにマネジメントレビューからのアウトプットを検討しなければならない。

まず最初の文章は、何を継続的に改善しないといけないのか、ということを述べています。それは、品質マネジメントシステムの適切性、妥当性、有効性の3つですね。といっても、なんだかあいまいな言葉で、具体的に何を指しているのかがわかりにくいですね。

わかりやすくいうと、適切性というのは、組織の規模や目的、事業の内容に応じたマネジメントシステムになっているということと言えます。過度に重たい仕組みを作っているような場合は、適切とはいえません。また妥当性というのは、意図した成果(パフォーマンスの向上や目標の達成)のために、十分な取組ができていることです。まだやれることはあるのにやっていない・何かが足りない、という状態だと妥当性があるとはいえません。そして最後、有効性というのは、意図した成果(パフォーマンス向上や目標の達成)を実現できていることですね。やってはいるけれども成果が上がっていない、というケースは有効性がない、ということです。

このような懸念がある場合は、継続的に改善をしなさい、と言っているわけですね。

そして次の一文です。この文章では、どういうことをきっかけにして継続的改善の必要性が明確になるかということを述べています。それは2つあって、まずは分析や評価の結果とあります。つまりデータをとって分析などをして、そこから改善の必要性を見出しなさいということです。もう一つはマネジメントレビューのアウトプットです。これは、私の独自の勝手な解釈ですが、トップが打ち出した改善の方向性を現場で展開しなさい、というようなことだと考えるとわかりやすいでしょう。

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