ものづくり経営革新等支援機関

【内部監査レベルアップ講座】"目標"を内部監査する(2)

https://imamura-net.com

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

内部監査レベルアップ講座として、ISO9001やISO14001の内部監査を効果的にやるためのポイントを解説したいと思います。今回は"目標"の内部監査について、3回にわけて解説します。(第2回目)

動画でも解説しています(無料・登録不要)

着眼点2-2:コントロールできることとコントロールできないことのバランス

つづいてのポイントですが、目標のことを考えるときに、コントロールできることとコントロールできないことがあるはずです。

例えば、営業の目標としてありがちなのは、売上を増やすという目標です。売上高 対前年比20%増なんていう目標を営業さんはよく立てると思います。しかしこの目標は、達成するのに自分の努力以外の要因があります。

例えば大震災やパンデミックのような社会を揺るがす大事件があれば達成は困難になります。そんなオオゴトでなくても、お客さんの懐事情がよくなかったり、お客さんの優先度の問題で、ほしいけれども今は買わない、みたいなことは営業の現場では日々起きていることです。

そういうコントロールできないものをダイレクトに目標にしてしまうのはあんまりよくないと個人的には思っています。努力しても外的要因で達成ができないとなると、これはやる気もあまり起きません。

反対に、たまたま運が良くて達成してしまうこともあるでしょう。そういう場合、目標達成したからいいじゃないかというと必ずしもそうではなく、自分の努力と別の要因で達成をしたので、自分の実力や成長につながるようなものが残らなかったりします。なので、コントロールできないことを目標にするのは注意が必要です。

しかし何もコントロールできないことを全否定しているわけではありません。コントロールできないことを目標にしたとしても、そこにたどり着くには、具体的にどんなことをしないといけないのかということと徹底的に向き合い、導き出すことが必要なんですよね。

売上高 対前年比20%増を目指すのであれば、そこに至るために、例えば、毎週5件訪問しようとか、提案書を改良しようとか、部署内で営業のロープレを月1回実施しようとか、そうした小さい目標というか、具体的な手段をとらないといけませんよね。

そしてこうしたものは、自分の努力だけで達成ができる、コントロールできる行動のはずです。このようなコントロールできることに焦点を当てる必要があります。

売上高 対前年比20%増!とにかく頑張る!では精神論ですよね。売上をあげている人はどんな行動をとっているのか、どんなツールを使っているのか、お客さんのどういう困りごとにフォーカスしているのかということを分析して、「こうすれば受注の確率が上がる」という法則を見つけるようなことは、自分でコントロールできる目標といえるでしょう。

こういうことを目標にすれば、たまたま運が良くて成功することもないし、失敗もありません。分析して知り得たことは確実に自分の実力につながりますよね。

同じように、廃棄物排出量 対前年比5%減少という目標があったとしますが、これもコントロールができないことです。一般的には廃棄物量は売上とか生産量と連動するはずです。今年はたまたまよく自社製品が売れたので、廃棄物量は減りませんでした、みたいなことになると、目標があんまり意味を持たないんですよね。

それよりも、治具改良による歩留まり向上とか、廃棄物分別方法の見直しといった、自分の努力だけで達成できることにフォーカスしたほうが、目標としては健全です。

ではこの点について内部監査でどうすべきかというと、コントロールできないことを品質目標や環境目標にあげている場合は、それを達成するための具体的な取組としてコントロールができることが計画されているかというのを確認したいところです。

そしてそのコントロールできる具体的な取組に過不足がないかという点も、内部監査で確認をしたいところです。

ISOを始めたばかりという会社や部署があれば、いきなりコントロールできないところを目標にあげるより、まず最初はコントロールできることを目標にする、というのも良いんじゃないかと思います。そういう推奨事項を出すこともできそうですよね。

着眼点2-3:長期的な視点で指標を確認

つづいてのポイントです。これは、先程のコントロールできないこと、できることとも関連があります。

先程お話したように、コントロールできないことに焦点を当てるのはよいことですが、それが達成すべき成果を生んでいるかどうかを長期的な視点からも確認する必要があります。

例えば、毎年、品質目標を達成している部署があったとします。目標を達成するのはよいことなので、これはこれでいいんですが、他の指標との関係にも注目したいところです。

例えば品質のISOでは、不良率や顧客満足度を監視・測定項目にあげることがあります。そうした指標の推移のようなものと、品質目標の達成状況を照らし合わせてみるんですね。

このグラフだと、毎年品質目標は達成しているにもかかわらず、顧客満足度は下がり続けていますし、不良率も減っていません。ということは、品質目標が、本来達成すべきパフォーマンスの実現につながっていないということがわかるわけですね。

うがったみかたをすると、自分たちが達成しやすいことを目標化しているおそれがみてとれます。目標管理のための目標、ISOのための目標になっている、ということでもありますかね。こうしたことがないかどうかも、内部監査で確認したいところですね。

もしこうした傾向が見受けられるのであれば、目標の見直しを推奨することもできそうです。

  • B!

最近の人気記事

1

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 国際標準化機構(ISO)は、現行のISO9001:2015(品質マネジメントシステム規格I)を改訂する準備を進めているようです。現在の ...

2

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 2024年2月、ISO(国際標準化機構)は、マネジメントシステム規格に「気候変動への配慮」を盛り込む形で規格の一部を改定しました。今回 ...

3

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 5Sの考え方がISO9001や14001の運用に役立つことがあります。その逆もあって、ISOの仕組みが5S活動に役立つこともあるんです ...