おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
10月18日、共同通信は、今月策定予定の総合経済対策の中に、賃上げを条件として中小向け補助金を拡充することを報じました。事業再構築補助金やものづくり補助金等が、来年も継続する見込みです。
共同通信『賃上げ条件に中小向け補助金拡充 30兆円目安に積み上げ』
電気・都市ガス料金の激変緩和策を講じるほか、賃上げを条件とした中小企業向けの補助金を拡充する。輸入に頼るエネルギーや食料の価格高騰が円安で深刻さを増しており、大規模対策で家計や企業の負担を軽減する。自民党の萩生田光一政調会長は対策の規模に関し、30兆円を目安に積み上げていく考えを示した。
なお記事中の「30兆円」というのは、補正予算の規模が30兆円ということでしょう。ここで言う規模が、事業規模のことをさすのか、国による財政支出(いわゆる真水)のことを指すのかも、この記事からではわかりません。
拡充される補助金は事業再構築補助金・ものづくり補助金等とみられる
共同通信の記事には、具体的になんの補助金なのかは明記をしていませんが、おそらく事業再構築補助金やものづくり補助金等のことだと思われます。
根拠は、10月15日に首相官邸ホームページで公開された『中小企業及び商店街の視察についての会見』という記事です。この記事の中で岸田首相は、「今月中に取りまとめる総合経済対策」に盛り込まれる対策として、次のようにコメントしています。
さらには、賃上げにつながる生産性の向上などに前向きな投資を支援するものづくり補助金、あるいは事業再構築補助金、こうしたものも切れ目なく支援していきたいと思っております(後略)
(10月15日 首相官邸『中小企業及び商店街の視察についての会見』より引用。強調筆者)
また、10月4日に行われた「新しい資本主義実現会議(第10回)」でも、総合経済対策の重点事項案として、次のような記述があります。
○ 中小企業の事業再構築補助金・生産性革命4補助金について、賃上げを条件とした補助金の抜本的拡充を図る。
これらのことから、補正予算が成立すればという条件付きですが、事業再構築補助金やものづくり補助金等が、来年も継続する可能性が高まったと見てよいでしょう。
ただし事業再構築補助金・生産性革命4補助金は賃上げが条件
ただしこれらの報道や「新しい資本主義実現会議」の資料を見ても、これらの中小企業向け補助金は賃上げが条件であることが伺えます。
どのくらいの期間にわたり、どの程度の賃上げを求めるのか。そして賃上げが果たせなかった場合はペナルティがあるのかどうかというのは、報道等からはわかりませんが、参考になるのは現行のものづくり補助金の制度です。
現行のものづくり補助金では、賃上げが行われなければ補助金は一部返還することになっています。具体的には、公募要領に次のような記述があります。
- 事業計画終了時点において、給与支給総額の年率平均1.5%以上増加目標が達成できていない場合は、導入した設備等の簿価又は時価のいずれか低い方の額のうち補助金額に対応する分(残存簿価等×補助金額/実際の購入金額)の返還を求めます。
- ただし、付加価値額が目標通りに伸びなかった場合に給与支給総額の目標達成を求めることは困難なことから、給与支給総額の年率増加率平均が「付加価値額の年率増加率平均/2」を越えている場合や、天災など事業者の責めに負わない理由がある場合は、上記の補助金一部返還を求めません。
- 事業計画中の毎年3月時点において、事業場内最低賃金の増加目標が達成できていない場合は、補助金額を事業計画年数で除した額の返還を求めます。
(ものづくり補助金公募要領より引用)
来年度のこれら補助金も、現行のものづくり補助金と同じ条件になるかどうかは不明ですが、似たようなスキームになる可能性はあるでしょう。
現行のものづくり補助金と同様、給与支給総額に対して一定の割合を増加させることをが求められるのであれば、従業員規模が大きな企業は、もらえる補助金額に対して、賃上げ幅のほうが大きくなることが予想されます。補助金をもらえるからと安易に飛びつくのではなく、自社の場合はどのくらいの賃上げの必要があり、それは補助金額と比較した場合どうなのかといシミュレーションが欠かせません。
ただでさえ原油高・原材料高騰・円安で企業の収益性は悪化しています。補助金は原則後払いなので一時的にキャッシュフローを圧迫するものですが、そうした補助金に、賃上げしてまでチャレンジする価値があるかは、よく考える必要があるでしょう。