ものづくり経営革新等支援機関

2022年度第2次補正予算案に見る経産省の経済安全保障事業について(2)

https://imamura-net.com

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

11月8日、2022年度第2次補正予算案が閣議決定されました。これに伴い、経産省は『経済産業省関係令和4年度第2次補正予算案のポイント』を公開しました。本資料のうち、経済安全保障に関する事業について見ていきます。(2回目)

前回の記事はこちら

2022年度第2次補正予算案に見る経産省の経済安全保障事業について(1)

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 11月8日、2022年度第2次補正予算案が閣議決定されました。これに伴い、経産省は『経済産業省関係令和4年度第2次補正予算案のポイント ...

続きを見る

経産省『経済産業省関係令和4年度第2次補正予算案のポイント』はこちら

独立行政法人石油天然ガス・金属鉱物資源機構※による鉱物資源安定供給確保のための出資事業【1,100億円】

カーボンニュートラル実現に向けて需要の増大が見込まれるバッテリーメタルやレアアース等の鉱山開発や製錬等を行う民間企業を出資により支援し、これらの鉱物のサプライチェーン強靭化を図る。

※令和4年11月14日付けで「独立行政法人エネルギー・金属鉱物資源機構」に名称変更予定。

(経産省『経済産業省関係令和4年度第2次補正予算案のポイント』P4より引用)

新しい事業だと思われます。経産省の資料にもあるように、「鉱物資源」とは、バッテリーメタルやレアアースのことです。現在日本は、レアアースの輸入の5割近くを中国に依存していますが、中国では、サプライチェーン全体でレアアース産業への統制を強めつつあります。中国では2020年に輸出管理法という法律が施行されたのですが、輸出管理対象が今後、レアアースにも及ぶ可能性があると言われています。そのようなリスクを回避するため、鉱山開発や製錬等を行う民間企業に出資をするという取組のようです。(出資ですから、補助金ではなさそうですね)

ワクチン生産体制強化のためのバイオ医薬品製造拠点等整備事業【1,100億円】

平時はバイオ医薬品製造、感染症有事にはワクチン製造に切り替えられるデュアルユース製造拠点を整備し、特にワクチン製造を行う上で不可欠な製剤化・充填拠点や部素材等の製造拠点を重点的に整備する。

(経産省『経済産業省関係令和4年度第2次補正予算案のポイント』P4より引用)

前年度(2021年度)補正予算でも実行された施策です。2021年度補正のときは2,273.8億円の予算でしたが、今回は1,100億円となりました。

ワクチンを国内で開発・生産出来る力を持つことは、国民の健康保持への寄与はもとより、外交や安全保障の観点からも極めて重要です。このため、長期継続的に取り組む国家戦略としてワクチン開発・生産体制強化戦略が令和3年6月に閣議決定されました。

事業としては、(1)ワクチン製造拠点の整備事業と(2)製剤化、部素材等の製造拠点の整備事業があります。(1)は、プラント等への補助だと思われますが、(2)はワクチン製造に不可欠な製剤化設備や、部素材等の製造設備の導入等の支援を目的としており、こちらは中小企業の部素材メーカーでもチャレンジできそうです。

国際情勢の変化を踏まえた原材料安定供給対策事業【55億円】

ウクライナ情勢等の国際情勢の変化により、供給途絶リスクが生じている原材料(パラジウム・石炭)の安定供給対策のため、国内での生産関連設備の導入等を支援する。

(経産省『経済産業省関係令和4年度第2次補正予算案のポイント』P5より引用)

新しい事業だと思われます。

パラジウムとは白金族金属であり、自動車においては、有害な排ガスを浄化・無害化する触媒の基幹材料として使われるそうです。しかしパラジウムの生産の4割近くがロシアによるものであり、ロシアによるウクライナ侵攻の影響で供給が不安定になっています(パラジウムショック)。石炭も同様で、世界的な脱ロシアの動きや脱炭素のための投資不足により、石炭の供給不足が顕在化しています。

そこで本事業では、国内での生産設備を導入するための補助をするのだと思われますが、まさかパラジウムの国内採掘や、閉鎖した炭鉱の復活をするのは考えにくいことです。おそらくパラジウムに関しては非鉄金属原料や貴金属スクラップに含まれるものを精製してリサイクルするような設備に補助を出すのだろうと思われます。石炭は……どうなんでしょうかね。閉鎖した鉱山を復活させるのは現実的ではないので、釧路コールマインへの大掛かりな補助かもしれません。

  • B!

最近の人気記事

1

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 国際標準化機構(ISO)は、現行のISO9001:2015(品質マネジメントシステム規格I)を改訂する準備を進めているようです。現在の ...

2

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 2024年2月、ISO(国際標準化機構)は、マネジメントシステム規格に「気候変動への配慮」を盛り込む形で規格の一部を改定しました。今回 ...

3

おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。 5Sの考え方がISO9001や14001の運用に役立つことがあります。その逆もあって、ISOの仕組みが5S活動に役立つこともあるんです ...