おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
8月21日、中小機構は「令和5年度 経営力再構築伴走支援研修」(オンライン)の申し込み受付を開始しました。これは、中小企業の支援者向けのオンライン研修なのですが、どうして中小企業の支援者向けの研修などを開催しているのでしょうか。中小企業の支援者は、試験に合格した士業であったり、資格要件を満たして登録や認定をされている人たちのはずなのに、どうしてまた研修を受けることが期待されているのでしょう。この疑問の発端となった「伴走支援の在り方検討会」の討議内容などをもとに、解説をします。
中小機構「令和5年度 経営力再構築伴走支援研修」(オンライン)に関するプレスリリースはこちら
一般的な中小企業支援者の態度にダメ出しをしている
この「経営力再構築伴走支援研修」というのは、何を教えてくれる研修なのでしょうか。プレスリリースにはこう書いています。
課題設定型の「経営力再構築伴走支援」の概念や姿勢の浸透と、伴走支援のために必要な要素である「対話と傾聴スキル」などの修得を目的とした研修です。
お役所の言葉は難解なので、ちょっとわかりにくいでしょうかね。端的に言うと、中小企業支援者(士業や認定支援機関など)が、中小企業経営者と向き合う姿勢や、話の聴き方について学ぶ研修なんです。こうした研修を役所が主催するということは、要は、一般的な中小企業支援者に対して「お前たちの支援の態度は全然なってない!」とダメ出しをしているわけですね。だって中小企業経営者と向き合う姿勢や、話の聴き方がちゃんとしていれば、こんな研修を催す必要なんてないわけですからね。
「伴走支援の在り方検討会」ではどういう議論が行われたか
こうしたダメ出しの発端となったのは、「伴走支援の在り方検討会」という中小企業庁主導の研究会での議論でした。「伴走支援の在り方検討会」は、2021年10月20日から12月23日まで、5回にわたり、中小機構や中小企業支援者数名によって行われました。その議論の結論としては、伴走支援の在り方検討会報告書や2022年版中小企業白書に書かれています。ぼくなりにかいつまんで説明をします。
昔の中小企業支援スタイルは、中小企業にどうすればいいかを教える形での支援が主流でした。しかし、今は不確実な時代なので、「こうしなさい」とただ教えるだけの支援は効果がありません。今は、支援する企業の環境に合わせて、問題をしっかり見て、行動を促すような支援が必要なんですね。ただ、実際の支援者の動きを見ていると、そういう支援ができているとは限りません。多くの支援者は、企業の抱える目先の課題を支援することに終始しています(例えば、融資を受けたいとか、設備投資に向けて補助金がほしいとか)。それも支援としては必要ですが、十分ではありません。目先のことだけではなく、将来の成長を見据えて、現在から近い未来にかけて何をしなければならないのかを、経営者と一緒に考える(これが経営力再構築伴走)ことが重要だ、というのが、「伴走支援の在り方検討会」の結論と言って良いでしょう。
そうした経営力再構築伴走のために、支援者自らが意識を変えること、そしてその中でも重視されている「傾聴」のトレーニングを、この度の研修で学んでもらおう、というところに繋がっているわけです。
「伴走支援の在り方検討会」の結論にケチをつけるつもりはありませんが、昔も押し付けの一方的な支援が有効だったわけではないと思いますよ。もしそうなら、60年代ごろから組織開発(OD)が流行するはずはないですし、エドガー・シャインも「プロセスコンサルテーション」なんて唱えなかったと思いますよ。昔も一方的な目先だけの支援は問題があったけども、世の中が右肩上がりに成長していたので、その問題点が顕在化しなかったのだと思います。(他にも言いたいことはありますが、明日まとめて言います)
ところでこの研修は、行政の狙いどおり、中小企業支援のあり方を変えることができるのでしょうか。それについては明日考察をしたいと思います。