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政府が2023年の経済対策を閣議決定。経産省系の中小企業施策を概覧

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

11月2日、政府は2023年の新しい経済対策を閣議決定しました。経済対策における中小企業施策について、経産省系のものを中心に、ざっと紹介します。

デフレ完全脱却のための総合経済対策~日本経済の新たなステージに向けて~(内閣府)

経済対策本文および資料

経済対策本文

"第2の柱" 地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する(概要)

「地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する」は、この度の経済対策の「第2の柱」に位置づけられています。「2.経済対策の基本的考え方」では、この「第2の柱」についての要点が書かれています。以下に端的にまとめました。

  • 賃上げ促進税制の減税措置を強化、価格転嫁対策の強化、省人化・省力化投資への支援を行う。
  • 地方の中堅・中小企業が新たな工場や設備投資を行い、賃上げが広がるよう支援する。
  • 非正規雇用労働者の所得向上のための「年収の壁・支援強化パッケージ」を実行し、年収の壁を乗り越える取組を行う。
  • コロナ対応予備費の余りを「原油価格・物価高騰対策及び賃上げ促進環境整備対応予備費」へ変更する。
  • 円安を活かしたインバウンド拡大や農林水産事業者、中小企業の輸出拡大支援等を通じて、経済回復を地方にも波及させる観光立国の取組を推進する。

では、以下に、経済対策における中小企業施策について、経産省系のものを中心に、ざっと見ていきます。

第1章 物価高から国民生活を守る

企業や家庭における省エネを更に促進する。企業に対しては、工場等における省エネ設備の導入を複数年度にわたり支援するとともに、中小企業向けの省エネ診断を推進する。(p12)

施策例

  • エネルギー消費効率の高い設備への更新を促進する「省エネルギー投資促進支援事業費補助金」(経済産業省)
  • 「省エネルギー投資促進・需要構造転換支援事業費補助金」(経済産業省)
  • 中小企業等エネルギー利用最適化推進事業費(経済産業省)

上記3施策は、いずれも既存の施策の延長だと思われます。

第2章 地方・中堅・中小企業を含めた持続的賃上げ、所得向上と地方の成長を実現する

(1)中堅・中小企業の賃上げの環境整備(p14)

賃上げ促進税制について、物価高に負けない賃上げを実現できるよう強化する。その際、中小企業等について、赤字法人においても賃上げを促進するための繰越控除制度を創設するとともに、措置の期限の在り方等を検討する14。併せて、マルチステークホルダーとの適切な関係の構築に向けた方策を講じる。(p14)

 

また、最低賃金の継続的な引上げに対応して、事業再構築や業務改善等の支援措置を充実する。(p14)

事業再構築補助金は、この経済対策を見る限り、賃上げ目的の意味合いが濃厚になった印象です。より一層、賃上げの必須要件化が進むかもしれません。

(1)の施策例

  • 賃上げ促進税制の強化(経済産業省)【税制】
  • 中小企業等事業再構築促進事業(経済産業省)
  • 最低賃金の引上げに向けた環境整備を支援する業務改善助成金(厚生労働省)
  • 地域の経済と雇用の基盤を支えるための「中小企業活性化・事業承継総合支援事業」(経済産業省) など(その他多数)

その他、下請取引改善、価格転嫁、インボイス制度、経営者保証の見直しなど、各施策があります。

(2)人手不足対応、生産性向上を通じた賃上げ継続の支援

人手不足に悩む中小企業・小規模事業者のため、省人化・省力化投資に関して、カタログから選ぶような汎用製品の導入への簡易で即効性がある支援措置を新たに実施するとともに、事業の実情に合わせた生産プロセスの効率化・高度化を支援する。地方においても賃上げが可能となるよう、中堅・中小企業が工場等の拠点を新設する場合や大規模な設備投資を行う場合について、支援措置を新たに実施する。(p16)

簡易で即効性あるものについては「簡易で即効性がある省人化・省力化支援に向けた中小企業等事業再構築促進事業の再編(経済産業省)」という施策で対応するようです。10月16日の日経新聞報道によると、既存制度の見直しで対応するかどうかを経産省と財務省とで協議をしていたようですが、結論としては事業再構築補助金の見直しで対応することになったようですね。

しかし、中堅・中小企業が工場等の拠点を新設する場合や大規模な設備投資を行う場合についての支援措置は、新しい施策「中堅・中小企業の持続的賃上げに向けた省人化等の大規模成長投資の促進」で対応をするようです。これも目的が賃上げなので、賃上げが必須要件となりそうです。

中小企業等の生産性向上のため、設備投資、販路開拓、情報通信機器・ソフトウェアの導入(インボイス制度への対応支援を含む)、海外展開について、支援を行う。(p16)

これは「中小企業生産性革命推進事業」(ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金・IT導入補助金・事業承継補助金)のことでしょう。なお「中小企業生産性革命推進事業」はp32で「中小企業等におけるAIの導入を促す」という文脈でも挙げられていますので、AI導入に関する申請類型ができるのかもしれません(根拠の薄い推測です)。

(2)の施策例

  • 簡易で即効性がある省人化・省力化支援に向けた中小企業等事業再構築促進事業の再編(経済産業省)
  • 物流効率化に向けた先進的な実証事業(経済産業省)
  • 家事負担軽減による人手不足解消に向けた「ライフステージを支えるサービス導入実証等事業」(経済産業省)
  • 中堅・中小企業の持続的賃上げに向けた省人化等の大規模成長投資の促進(経済産業省)
  • 生産性向上に向けた設備投資等の費用を助成する「業務改善助成金」(厚生労働省)<再掲>
  • 中小企業等の生産プロセス効率化・高度化等を支援する「中小企業生産性革命推進事業」(経済産業省)<再掲>
  • 対内直接投資促進及び中堅・中小企業の海外展開の支援事業(経済産業省) その他多数

「対内直接投資促進及び中堅・中小企業の海外展開の支援事業」というのは、主にはものづくり補助金のグローバル市場開拓枠のことだと思われます。

第4節 人口減少を乗り越え、変化を力にする社会変革を起動・推進する

4.DXの推進に関連するその他の取組(p50)

中小企業等のサイバーセキュリティ対策を促進する。(p50)

4の施策例

  • 産業サイバーセキュリティ対策の強化に向けた環境整備事業(経済産業省)

自動車のサプライチェーンでは課題として顕在化されつつありますが、系列間取引では、セキュリティの脆弱な中小企業がターゲットにされ、そこから親会社のシステムを攻撃する事例があります。そうした事案に対処するための取り組みが行われるのでしょう。設備投資系の補助金もいいですが、こうした守りの対策も非常に重要だと思います。

6.包摂社会の実現(p57)

育児休業を支える体制整備を行う中小企業において、業務を代替する周囲の社員への応援手当の支給への助成を行うなど、支援を強化する。(p58)

6の施策例

  • 両立支援等助成金の拡充(育休中等業務代替支援コース(仮称)の新設)(厚生労働省)

これも10月25日の読売新聞で報じられていたものですね。

 

  • B!

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