おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
11月20日、経産省は2023年度補正予算のPR資料を公開しました。その中で、補助上限額最大1,500万円の『中小企業省力化投資補助事業』について、資料から読み取れることを考察します。
『令和5年度補正予算案の事業概要(PR資料)』はこちら
『中小企業省力化投資補助事業』資料
『中小企業省力化投資補助事業』の事業目的
中小企業等の売上拡大や生産性向上を後押しするために、人手不足に悩む中小企業等に対して、省力化投資を支援する。これにより、中小企業等の付加価値額や生産性向上を図り、賃上げにつなげることを目的とする。
最終の目的が「賃上げ」となっていることに注目です。後述しますが、賃上げ要件を達成した場合は、補助上限額が1.5倍に増額されるようです。反対に言うと、賃上げ要件は必須要件ではない、と解釈することも可能です。(賃上げをコミットしない場合は、採択されづらい等の措置があるかもしれませんが)
また、省力化投資(内容は後述)によって、付加価値額や生産性向上が期待されています。後述する成果目標でも「付加価値額の増加」「従業員一人当たり付加価値額の増加等」を目指すようですので、このあたりの指標の向上を申請企業にも求めるのではないかと思います。
『中小企業省力化投資補助事業』の事業概要
IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品を「カタログ」に掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにすることで、簡易で即効性がある省力化投資を促進する。
『「カタログ」に掲載し、中小企業等が選択して導入できるようにする』というのは、当社の以前の記事でも推測しているように、現行のIT導入補助金のような申請方法になるのだと推察しています。「簡易で即効性がある省力化投資を促進」と書いていることからも、ものづくり補助金や事業再構築補助金のように、10ページ以上もの事業計画書を作成する必要もなく、申請ができるような仕組みになると想像できます。
なお、対象となる機器は「IoT、ロボット等の人手不足解消に効果がある汎用製品」とあります。特注品は対象外であることがわかります。IT導入補助金と同じ仕組みになるとすれば、メーカーや商社等が、人手不足解消に効果がある汎用製品を登録するというプロセスが、申請に先立って行われるのではないでしょうか。
なお、人手不足解消に効果がある汎用製品にはどういうものがあるか、ぼくが想像できる範囲で列記してみます(ただし製造業の現場で使う設備に限定します)。これらが実際に補助の対象製品となるかどうかはわかりませんので、鵜呑みにしないでください。
- 協働ロボット
- パレタイジングロボット
- ピックアンドプレースロボと
- 溶接ロボット
- 包装・梱包装置
- 検査装置(外観検査、三次元測定等)
- AGV(自動誘導車)
- 自動塗装機
工作機械が対象になるかどうかは微妙だと思います。複合旋盤とかレーザータレパン複合機のような複合機だと、たしかに工程短縮効果があって、省力化にかろうじてつながると思いますが、普通のマシニングとか旋盤とかレーザー加工機とか曲げ機のようなものは、単なる設備更新に使われる可能性があるので、対象にはなりづらいのではないかと思います。(設備更新は、たしかに加工スピードは多少は早くなるでしょうけど、省力化につながるとまでは言えないのではないかと思います)
『中小企業省力化投資補助事業』の補助上限額・補助率
以下のとおりです。賃上げ要件を達成した場合は、補助上限額が1.5倍に増額されるようですが、どの程度の賃上げが求められるのかは、この資料だけではわかりません。なお、補助率は1/2ですが、何かしらの要件を満たした場合は2/3などにアップする可能性もあるかもしれません。
中小企業等事業再構築促進事業を再編とはどういうことか
なおこの資料には「中小企業等事業再構築促進事業を再編」と書いています。これだけではよくわかりませんが、PR資料の「事業スキーム」を読むと基金形式を採用し、基金が設置された中小機構が(おそらくパソナ等の民間事業者を事務局にして)中小企業へ補助金を交付するという図が書かれています。このスキームは、※に書かれているように、事業再構築補助金のスキームなのですが、これと同じスキームで実施するのでしょう。
なお、事業再構築補助金の基金は額が余っていることが報じられていますが、その基金を流用するのではなく、1,000億円を補正予算で新たに積むのだろうと思われます。(行政事業レビューでは、有識者が、事業再構築補助金の基金を一部廃止や、場合によっては国庫に返納することを提案しています)
また、以下の文もなぜだかこの『中小企業省力化投資補助事業』のPR資料に書かれています。
※なお、中小企業等事業再構築促進基金を用いて、これまで実施してきた、ポストコロナ・ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するための新市場進出、事業・業種転換、事業再編、国内回帰又はこれらの取組を通じた規模の拡大等、企業の思い切った事業再構築の支援については、必要な見直しを行う。
どうしてこれを『中小企業省力化投資補助事業』のPR資料に書いているのか理解に苦しみますが、要は行政事業レビューで批判を浴びた事業再構築補助金の看板をすげ替えて、この補助金を執り行う、ということが言いたいのではないかと勘ぐりたくなります。