おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
ISO45001:2018各箇条解説シリーズとして、箇条6.1.2.2を解説します。ここは、労働安全衛生マネジメントシステムでも超重要部分であるリスク評価に関する箇条です。どのようにしてリスクを特定、評価するべきなのかをわかりやすく解説します。
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箇条6.1.2.2の位置づけ
まずは箇条6.1.2.2の位置づけを見てみましょう。
箇条4では、会社が置かれている状況を考えて、労働安全衛生マネジメントシステムを作って運用することを求めていました。
箇条5では、そのマネジメントシステムを円滑に回していくために、会社のトップがやるべきことを定めていました。
箇条6では、会社を安全で健康的な場所にするために問題になりそうなことをあらかじめ洗い出して対策をしたり、目標を作ったりすることを求めています。箇条6.1.2は、さらに細かく3つに分かれていますが、今回はそのうち、箇条6.1.2.2についてお話をします。
「リスク」とはそもそもなにか?
まずは「リスクとはなにか」をしっかりと理解したいと思います。リスクの定義というのは色々あるんですが、ISO的には「不確かさの影響」と定義されています。ただ、これだけだとよくわからないですよね。ちょっと例を使って説明をします。
皆さん、サッカーをやっているところを想像してください。あなたはボールをキープして単独でゴールを目指しています。キーパーと1対1のシチュエーション。あなたは是が非でもゴールを決めたいと思っています。これがあなたの期待ですが、期待通りにいかないこともありえますよね。
真っ先に思いつくのは、ゴールを外すことです。それ以外にも、シュートを空振りしてしまって、転んで怪我をするかもしれませんし、1対1になったと思っていたけれども、実はオフサイドだったということも、ないとは言い切れません。ただゴールを外すだけならまだしも、近くを散歩していた犬にボールを当ててしまい、吠えられたり治療費を請求されることも全くないとは言えません。
一方で、ゴールを決めた場合でも、期待を超える何かが起こるかもしれません。例えばたまたまプロのスカウトが試合を見ていて、プロのクラブのアカデミーに推薦してくれるかもしれません。もっと現実的にはあなたが決めたゴールに触発され、チームの士気が一気に高まり、試合の終盤を一方的に支配できるようになるかもしれません。
もちろん、今挙げたこと以外にも、何かが起こるかもしれません。このように、ゴールかもしれないし、外すかもしれないし、犬に当たるかもしれないし、とにかく何が起きるかわからないという状況を、不確かな状況といいます。そして今挙げたことは全て、期待すること……つまりゴールを決めることから何らかの形で逸脱をしています。それにはスカウトに声をかけられるという「よい逸脱」もあるし、犬に当たって吠えられるという「悪い逸脱」もあります。こうした逸脱はすべて「リスク」です。
「よい逸脱もリスクなの?」と思うかもしれませんが、そのとおりです。ISO的な定義でも、ネガティブなものもポジティブなものもどちらもリスクだというのが正式な定義です。一般的にはリスクというと、「悪い逸脱」のことを指すのが普通です。ただ、実務上は「悪い逸脱」がリスク、「よい逸脱」は「機会」だと思ってもらっても、そんなに問題はないと思います。
ISO45001求められるリスクを管理
ISO45001では、このような流れでリスクを管理することを求めています。
今日解説をする箇条6.1.2.2は、この前半部分(リスクの特定・リスクの算定・リスクの評価)に該当します。
ところで、ISO45001で取り組むべきリスクには2種類あると規格はいっています。一つは労働安全衛生リスクで、もう一つは労働安全衛生マネジメントシステムに対するその他のリスクです。
この違いについては次回説明をします。