おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
EUのAI規制法案である"EU AI Act"に関して、4/30時点での最新情報を、かいつまんでお伝えします(情報源は、The EU AI Act Newsletter #51です)。
EU AI Act最終草案の文言見直し
2024年3月13日、欧州議会は第一読会(法律案の最初の審議の場)でEU AI Act(AI規制法)を採択しましたが、現在は法律の文言の見直しが進んでいるようです。この見直し作業は、法律学と言語学の専門知識を持つ専門家が、法律のテキストを精査し、曖昧な表現を修正したり、法的な用語の使い方を統一したりすることで、法律がより理解しやすく、効果的に機能するようにするプロセスのようです。
このプロセスで見直された点については、正誤表が公開されています。ただし正誤表と言っても訂正箇所は示されず、全文が差し替えられています。おそらく法律の修正が全般に及ぶために、差し替えられたのでしょう。
どこが変わったのかを調べるのは結構骨が折れる作業ですが、訂正箇所については、例えば、欧州議会のシニアポリシーオーバイザーであるローラ・カローリ氏が、LinkedINで以下のようなコメントを出しています。(オープンソースAIに関する訂正のようです)
日本語に訳してみます。
AI Actにおけるオープンソースソフトウェアの取り扱いに関する重要な明確化
以前の投稿に対するコメントで簡単に触れた通り、法律の文言見直し中に、第2条の例外に関する解釈に誤りがありました。現在のアップロードされたテキストバージョンでは、第5条と第52条(現在の第50条)を除いて、OSSが免除されていないと読めるようです。これは私たちが合意した内容とは正反対です!しかし心配無用です。これは最終的な改訂に関与した私たち全員によって以前から指摘されており、正誤表が存在する理由の一つです。これは最終版で訂正されます。唯一企業が遵守しなければならないバージョンは、1〜2ヶ月後に公式ジャーナルに公開されるものです。また、話題を維持するために:免除の対象となるOSSコンポーネントは、パラメータ、モデルのアーキテクチャ、モデルの使用に関する情報が公開されているもの(例えば、ミストラルはそうではない)+ 価格やその他の方法で収益化されていないものです(例えば、技術サポートやデータ収集を通じて)。言い換えれば、Googleは該当しません。この免除は、真の自由でオープンソースコミュニティの本質を保持することを意図しています。(第102条と第103条を参照してください)
EU AI ActにおけるオープンソースAIの扱いについては、日本経済新聞が以下のように報じていました。ローラ・カローリ氏がLinkedINでコメントしているのも、このオープンソースAIに対する規制緩和を法律の文言上明確にすることを指しているのだと思われます。
欧州連合(EU)の欧州議会は世界初となる包括的なAI(人工知能)規制法案を可決した。最終案は誰でも利用や改変ができるオープンソース技術への規制が緩くなったが、背景には同技術で米オープンAIなどと対抗するフランスのスタートアップのロビイングがあったとされる。
日系の記事中にある「フランスのスタートアップ」というのは、ミストラルAIのことを指していると思われます。ミストラルAIとは、2023年にフランスで設立されたばかりのオープンソース大規模言語モデルを開発企業です。Chat-GPTを開発したOpenAIの最有力な対抗馬だと言われています。
なお、EU AI Actは、EUの加盟国が5月に正式に承認し、その後来年(2025年)に発効、2026年から適用される予定になっています。