おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。
5月27日、「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」が改正されました。結論としては、物価が高騰しても支払い金額が据え置かれた場合も「買いたたき」とみなされる可能性が生じました。変更点をわかりやすく解説します。
「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」の2024/5/27改正点
下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準のうち、以下の文の赤字部分が新たに改正されました。
5 買いたたき
(1) 法第4条第1項第5号で禁止されている買いたたきとは,「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」である。
「通常支払われる対価」とは,当該給付と同種又は類似の給付について当該下請事業者の属する取引地域において一般に支払われる対価(以下「通常の対価」という。)をいう。ただし,通常の対価を把握することができないか又は困難である給付については,例えば,当該給付が従前の給付と同種又は類似のものである場合には,次の額を「通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額」として取り扱う。
ア 従前の給付に係る単価で計算された対価に比し著しく低い下請代金の額
イ 当該給付に係る主なコスト(労務費、原材料価格、エネルギーコスト等)の著しい上昇を,例えば,最低賃金の上昇率,春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの経済の実態が反映されていると考えられる公表資料から把握することができる場合において,据え置かれた下請代金の額
買いたたきに該当するか否かは,下請代金の額の決定に当たり下請事業者と十分な協議が行われたかどうか等対価の決定方法,差別的であるかどうか等の決定内容,通常の対価と当該給付に支払われる対価との乖離状況及び当該給付に必要な原材料等の価格動向等を勘案して総合的に判断する。
そもそも下請法の「買いたたき」とはどういうことか
下請法では、親事業者が発注に際して下請代金の額を決定するとき、その仕事の内容に対して、その地域で普通に払われているお金(相場)を払わないとダメだよ、と言っています。
例えば、大手自動車メーカーが、ある町工場に、自動車用部品の加工をお願いしているとします。自動車メーカーは、その町工場がある地域で一般的に払われている部品加工の費用を払う必要があります。通常その地域では、部品加工に1つ1000円が払われているとすると、その「相場」のあたりの費用を払わないといけません。
もしその地域の相場がわからない場合は、過去の似たような仕事の費用を参考にします。例えば、同じ町工場で過去に似たような部品加工をしてもらった時に1つ900円払っていたなら、それを参考にして費用を決めます。そうした「相場」を大きく下回る値段で仕事をお願いしようとすることを「買いたたき」といいます。
今回の改正内容はどういうことなのか
普通のお金(相場)がわからないときに、以下の2つの点を考えることとなりました。
ア 似たような仕事と比べてすごく低いお金でないか
イ 主な費用(人件費や材料費、エネルギーコストなど)が大きく上がっているのに、値段が変わっていないか(←これが今回追加)
つまり冒頭で述べたとおり、物価が高騰しているにもかかわらず、支払い金額が据え置かれた場合も「買いたたき」とみなされる可能性が生じました。
この改正にともなって公開された資料(別紙1)によると、今回の改正は、「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」を踏まえて、下請法上の買いたたきの対価要件、つまり、『通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額』に係る下請法運用基準の記載を改正すること」と書いています。下請け企業(主に中小企業)の賃上げを促進したいという政府の思惑があっての改正だ、ということですね。
次回は、この運用基準の改正点について、パブリックコメントの内容を参照しながら、もう少し詳しく解説をしてみたいと思います。