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ビジョンが会社を良くするという幻想 =「ビジョナリー・カンパニー」を批判する(1)

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おはようございます!マネジメントオフィスいまむらの今村敦剛です。

多くの人は、ビジョンがしっかりしている会社ほど安定し、成長すると考えがちですが、それは本当に正しいのでしょうか?「ビジョンが会社を良くする」という一般的な考え方に潜む誤解について、3回にわたって掘り下げてみましょう。

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なぜビジョンが重要だと言われるようになったのか

まず、なぜビジョンが重要だと言われるようになったのか、その背景を振り返ってみましょう。

1970年代後半、アメリカの産業界は大きな転換点に直面していました。日本との国際競争に次々と敗れ、自信を喪失した米国企業は、どうすれば再び立ち直れるのかを真剣に模索していたのです。そんな中、1982年にトム・ピーターズとロバート・ウォーターマンが「エクセレント・カンパニー」という本を出版しました。この本は、「優れた企業は、企業文化がしっかりしている」という視点を打ち出し、注目を集めました。つまり、企業の成功は、その企業の文化や基本的な価値観に大きく依存しているのではないか、という考え方です。

その後、1994年には、ジェームズ・C・コリンズとジェリー・I・ポラスが「ビジョナリー・カンパニー」を発表しました。この本は、50年、100年、さらには150年と持ちこたえ、だれもが認める名声を獲得している企業には、しっかりとしたビジョンがあると述べています。この考え方が、多くの経営者に「ビジョンこそが企業の成功に不可欠だ」という認識を広めていったのです。

これらはアメリカで打ち出された考え方ですが、日本でも比較的すんなりと受け入れられました。その背景には、日本の著名な経営者も、ビジョンを重視していたという一般認識が有るからだと思います。例えば松下電器(今のパナソニック)の創業者である松下幸之助は、独自の経営哲学を持っていたことで有名ですね(松下幸之助の考え方が広く知られるようになったのは、PHP研究所という会社の役割が大きいと個人的には思っています)。PHP研究所は、もともと松下幸之助の研究を手伝っていたのですが、やがて本を出版したり、研修を行ったりして、松下幸之助の考え方を多くの人に伝えるようになりました。

PHP研究所は、松下幸之助が亡くなった後も、彼の考えを広めるために資料を整理したり、新しい本を作ったり、経営教育用のゲームを作ったりしています。こうした下地があり、日本の経営者も「ビジョンが経営では重要だ」という考え方をすんなりと受け入れたのではないかと推察します。

ビジョンは経営にどのような影響を与えるのか

ビジョンは、経営にどう影響を与えると一般的には思われているのでしょうか。

例えば、あるお菓子会社が「お客様に安心でおいしいお菓子を提供する」というビジョンを持っているとしましょう。このビジョンは、この会社の経営にどう影響を与えるのでしょうか?

このお菓子会社が新しいお菓子を作ろうとする時、「安心でおいしい」というビジョンを基準にして、材料や製造方法を決めます。

そうしてビジョンにそって作られたお菓子が市場に出回ると、消費者は、この会社のお菓子がいつも安心して食べられるものだと信頼するようになります。

そして、この信頼があることで、会社の売上は安定し、将来の計画も立てやすくなります。安定した売上をもとに、会社は新しい方向性や手法、さらには新しい戦略を取り入れる余裕が生まれます。

このようにビジョンは、会社の安定性と、新しい取り組みを支える重要な役割を果たす、と言われています。

何から何までいいことばかりに思えるビジョンですが、本当にビジョンは経営に役に立つのでしょうか?(つづく)

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